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高杉真宙、粗暴なアウトロー役でさらなる飛躍 『ギャングース』は2018年の集大成に

2018年12月03日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 高杉真宙は2018年もすごかった。2017年は映画『ReLIFE リライフ』や『トリガール!』、ドラマ『セトウツミ』(テレビ東京系)などでティーン層の観客からの支持を集める一方、『散歩する侵略者』などでコアな映画ファンたちからの注目も浴びるようになったが、今年はその活躍をさらに拡張させた印象だ。そんな彼の2018年の集大成的な作品として、主演の一人を務めた『ギャングース』が公開されたばかりである。


【写真】“クズ”なヒモ男を演じた高杉真宙


 本作で高杉が演じるのは、少年院あがりの青年・サイケ。彼は仲間のカズキ(加藤諒)、タケオ(渡辺大知)とともに、犯罪者をターゲットにした“タタキ”を生業としている。つまりはアウトローだ。ロングヘアーも特徴的だが、やはりその粗暴なキャラクター像が強く印象に残る。ダークサイドを歩まざるを得ない若者の怒りを、その声音やセリフの端々に滲ませている。たびたび上げる彼の叫びに、立場は違えど、何か共感めいたものを感じた方もいるのではないか。そうそう縁のある世界のお話ではないのだが、高杉は非現実的な存在ではなく、あくまで“等身大の若者のひとり”として演じていたように思えた。


 高杉はこれまでにも、不良やチンピラなど、粗暴なアウトローたちを演じてきている。2014年公開の『渇き。』で扮した不良グループのリーダー格の極悪っぷりも、いまだ鮮明に覚えているが、今年は『君が君で君だ』で、端的に表して“クズ”なヒモ男を肩肘張らぬ演技で見事に体現しているのだ。


 しかし、友情モノとしての側面も持っている今作『ギャングース』では、そんな粗暴な姿だけでなく、ときおり若者らしい繊細さも垣間見せている。そちらの高杉の一面については、今年の活躍を振り返ってみれば見えてくるものも多いだろう。


 少女マンガを原作とした『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』、『虹色デイズ』では、仲間たちと青春を謳歌する男子高生を好演。長く続いたテレビCM・P&G「ファブリーズ」で、爽やか男子像を世に広く浸透させていた彼らしく、やはりこの手のキャラクターには抜群にハマる。高杉の知的で品のある佇まいと愛嬌ある笑顔は、これらの系譜に連なる作品に一人は必要とされるであろうし、彼はそのポジションを昨年に続き担ったのだ。


 単独主演作『世界でいちばん長い写真』では、特殊なパノラマカメラとの出会いによって、それまでの消極的な人生から解き放たれていく少年を演じた。派手な喧嘩も恋愛もない本作での等身大の高校生姿は、高杉の最も得意とするところなのではないだろうか。自然体で素朴な姿が実に好もしいものであった。


 そして、小説から実写映画やマンガなど、メディアミックス展開が成される『君の膵臓をたべたい』の劇場アニメでは、主人公の少年に声優として息吹を与えた。これまた高校生役と、高杉の得意とする役どころに思えるが、全身を使って役を表現することが本業の彼にとって、声だけで役を演じることは、やはり難しかったのではないだろうか。しかし実際にその声を聞くと、大切な人との出会いで変わりゆく心情や、そこで沸き起こる喜怒哀楽の表現が、非常に繊細で豊かなものであることに気がつくはずだ。この作品は、“声だけで役を演じる”、彼の表現力の高さの証明ともなっている。


 こう振り返ってみると高杉の多才さが際立つが、その中でも『ギャングース』のサイケという人物は最も多面的であり、そういった意味で、集大成と言えるのではないだろうか。現在は、出演する舞台「新感線☆RS『メタルマクベス』disc3」の上演真っ只中。大舞台を経ての彼のさらなる進化が楽しみなところである。


(折田侑駿)