2018年12月02日 09:42 弁護士ドットコム
「日をまたいで10時間以上働いているのに残業代が出ないんです」――。コンビニ店長から弁護士ドットコムに悲痛な相談が寄せられました。
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相談者によると、ある日のシフトは次のような感じだったそうです。
(1)11~15時の4時間
(2)同日19時~翌朝6時の11時間(うち休憩2時間)
(3)一旦自宅で寝たあと、17~20時の3時間
しかし、お店のオーナーは、労働時間は24時(日付変更)でリセットされるとして、(2)を(a)19時~24時、(b)0時~6時に2分割(各休憩1時間)。労働時間は1日目も2日目も合計8時間となるので、残業代は払わなくて良いと主張しています。
相談者は、「11時間も連続で働いているのに、なんかおかしいと思ってしまいます」。こんな労働時間のカウントは問題ないのでしょうか。佐藤正知弁護士に聞きました。
ーー日をまたいだ労働時間はどうカウントするのでしょうか?
「『継続勤務』が2日にわたる場合には、一勤務とされ、勤務を開始した日の労働と取り扱われます。
このため、初日の労働時間は、(1)昼の4時間と(2)19時以降の9時間の、計13時間となります。労働基準法が定める1日の上限8時間を超える5時間が時間外労働です」
ーーオーナーの説明は間違っているわけですね。相談者は残業代をもらっていませんが、本当はいくらもらえるのでしょう?
「仮に時給1000円で考えると、1時間あたり25%の割増賃金250円の5時間分、計1250円が支払われなければなりません。
これに加え、深夜業手当(22~翌5時)の25%の割増賃金も別途支払われなければなりません。さすがにこれは支払われていると思いたいですが…。
2日目の勤務は、夕方からなので、前日からの『継続勤務』ではないでしょう。2日目の労働時間は、3時間だけということになり、時間外労働はありません」
ーー店長だから残業代が発生しないという理屈はありえるでしょうか?
「確かに、管理監督者であれば、労働基準法の労働時間規制の適用が除外され、時間外労働手当も発生しません。
しかし、(1)職務内容が、経営者と一体的な地位にあるといえるほどの権限と責任を伴っていない、(2)出退勤について裁量がない、(3)権限と責任にふさわしい待遇を受けていない、等の場合には、管理監督者とは認められません。
店長であっても、通常は権限や責任が店舗内の事項に限られていて、経営者であるオーナーと一体的な地位にあるとはいえないでしょうし、アルバイトとあまり変わらない時給制であれば、権限と責任にふさわしい待遇を受けているとはいえず、管理監督者とは認められないでしょう」
――8時間に限らず、日によって柔軟な労働時間を設定できる「変形労働時間制」という仕組みもあるそうですが…。
「変形労働時間制が導入されている場合には、所定労働時間が平均して週40時間を超えなければ、その所定労働時間が1日8時間を超えていても、時間外労働になりません。
しかし、労働基準法が定める変形労働時間制は、いくつか種類がありますが、いずれも条件が厳格に定められていて、職場に導入されていても、違法・無効であることも多いのです。
管理監督者に該当するかどうか、あるいは変形労働時間制が有効か、といった点は、専門家に相談することをおすすめします」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
佐藤 正知(さとう・まさとも)弁護士
神奈川県弁護士会所属。2017年度神奈川県弁護士会副会長。労働者側の労働事件を中心に取り扱う。日本労働弁護団常任幹事。神奈川過労死対策弁護団幹事長。過労死等防止対策推進全国センター幹事。著書「会社で起きている事の7割は法律違反」(共著・朝日新聞出版)等。
事務所名:横浜法律事務所
事務所URL:https://yokohamalawoffice.com/