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Apple幹部『iPhone XR』がいちばん人気と発言 株価下落への懸念を払拭か

2018年11月30日 10:42  リアルサウンド

リアルサウンド

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 今年発表された新型iPhoneが高額であることから、Appleは例年通りの販売台数を確保できるか疑問視する声が少なくなかったのだが、こうしたなか同社幹部がiPhoneの売れ行きについて発言した。いちばん売れているのは、相対的に安価なあの機種のようだ。


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■ユーザは安さを好んだ?
 CNETは、28日、Appleのプロダクトマーケティング部門のヴァイス・プレジデントであるGreg Joswiak氏に対して行ったインタビューに関する記事を公開した。インタビューのなかで同氏は、iPhone XSとiPhone XS Maxより約1ヶ月遅れて販売を開始したiPhone XRは、販売開始してから毎日のように最新3機種のなかでもっとも人気のあるものである、と発言した。iPhone XRはほかの2機種に比べて安価で、64GBストレージモデルでは84,800円であり同じストレージサイズのiPhone XS Maxより40,000円安い。


 iPhoneの販売台数に関しては、今月初めにあった同社の直近四半期の業績発表において、今後は発表しないことを明らかにしていた。また、ウォール・ストリート・ジャーナルをはじめとした一部のメディアが最新iPhoneを減産していると報道したこともあって、同社の株価は業績発表時から約20%下落し、一時は時価総額がMicrosoftに抜かれる事態になっていた。しかし、iPhone XRに関するコメントが報じられた直後、同社の株価は2.9%上昇した。


■iPhone販売台数発表を止めた理由
 iPhoneの販売台数発表を終了した理由に関しては、多数の海外メディアが独自の見解を報じている。テック系メディア『The Verge』は、AppleはiPhoneの価格を上げることで1台当たりから得られる利益を増やす戦略にシフトした、と評している。こうした利益率を上げる戦略では、販売台数は絶対的に重要な指標とはならないだろう。


 大手ニュースメディアCNBCは、今月初めの同社の業績発表においてApp StoreやiTunes Storeといったサービス部門からの利益が好調であることを強調していたことをうけて、同社はiPhone本体の売上といったハードウェア部門からサービス部門にビジネスの軸を移すのではないか、との見方を示している。


 Appleニュース専門メディア『appleinsider』は、iPhone販売台数の発表を終了したのはiPhoneが売れなくなってきたことを隠ぺいするためだと報じた一部のメディアに対して、その見解は短絡的過ぎると批判している。同メディアは販売台数が発表されていないApple製品としてApple WatchやAirPodsがあることを指摘し、販売台数が不明であることはiPhoneに始まったことでないと述べている。そして、もしiPhoneの販売が本当に不振に陥れば、同社の業績全体が悪化するだろうから件のスマホの不調はおのずとわかるだろう、と論じている。


■イノベーションの種をまき続けるApple
 以上のようなメディアの批評など意に介していないと言わんばかりに、Appleは次のイノベーションに向けて特許の出願を続けている。Appleの特許情報を報じ続けるメディア『Patently Apple』は、25日、ボタンをクリックする感覚を再現できるスマホカバーに関する特許を報じた(下の画像参照)。スマホをユーザが好みのカバーで覆うことはもはやスマホ文化の一部となって久しいが、カバーによってはボタンを押す感覚が変わってしまうこともある。今回出願した特許を活用すれば、iPhoneの操作感を損なうことのないApple純正カバーを製造できるようになるかも知れない。


 またappleinsiderは、23日、ユーザの睡眠をトラッキングするハードウェアに関する特許が出願されたことを報じた。Appleは昨年に睡眠トラッキング技術を保有するBedditを買収しており、すでに同社の製品「Beddit 3 Sleep Monitor」をiPhoneアクセサリーとして販売していた(現在は購入不可)。細長いバンドのような同製品をベットに仕込めば、ユーザの睡眠中のヘルスケアデータが計測されて専用アプリに記録されるのだが、件の特許はこの仕組みをさらに発展させたもののようだ。具体的にはベット自体に多数のセンサーを実装して、より正確にユーザの睡眠状況をトラッキングする、というのである。


 近年の新型iPhoneの発表はサプライズが少なくなったと言われて久しいが、水面下ではサプライズの種を育て続けているのだ。こうした企業努力が、iPhoneブランドの名声を支えているのだろう。


(吉本幸記)