2018年11月29日 08:52 弁護士ドットコム
夫が愛人に渡していたお手当、しめて1800万円を取り戻したいーー。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
【関連記事:無理やり起こされ、泣いても「夫婦の営み」強要…完全にDV、犯罪になる可能性も】
相談者によると、夫は毎月50万円ずつ、愛人に渡していたそうです。総額で1800万円にもなっているとのこと。その金額にも驚きますが、実はそのお金は「子どもの教育費の為に定期預金に預け入れているはずだった」といい、なんとかして取り返したいと考えています。
相談者は、愛人に対して不貞行為があったとして慰謝料請求をする際、この1800万円も「慰謝料に乗せて請求し、支払ってもらう」ことで、1円でも多く取り戻したいと考えているそうです。このような請求は認められるのでしょうか。坂尾陽弁護士に聞きました。
ーー愛人への「お手当」。慰謝料とは別に、返還は認められるのでしょうか
「まず前提として、夫から愛人に対する愛人手当の返還は認められないと言われています。愛人契約は公序良俗に反するためです。公序良俗に反する契約に基づいて支払ったお金の返還については、法の保護を与えないという考え方があり(民法708条:不法原因給付)、返還は認められないでしょう。
ただ、詐術的手段を用いたような場合は返還が認められることもあります。愛人側が愛人手当を貰うときに嘘をついたり、騙したりした等の詐術的手段を用いたような事情がある場合は、愛人手当の一部の返還が認められる可能性もあると思います(大阪地裁平成24年4月24日判決参照)」
ーーでは、今回の相談者から愛人への請求も、認められる可能性は低いのでしょうか
「夫から愛人に対する返還請求と相談者から愛人に対する返還請求、2つのやりとりが考えられます。しかし、前述のとおり前者については認められないと言われており、後者についても同様に愛人手当の返還請求が直接的に認められる可能性は低いように思われます」
ーー毎月50万円。合計で1800万円とのことですから、不倫関係は少なくとも3年に及びます。慰謝料に加え、愛人手当についても実質上乗せし、通常より多くの慰謝料をもらうことはできないでしょうか
「相談者から愛人に対する慰謝料請求で、多額の愛人手当は、増額の根拠として多少なりとも考慮されると思います。弁護士間の交渉実務においては、愛人(不倫相手)が多額の収入を得ており、資産を有している場合、慰謝料は増額される傾向にあります。
今回のケースも、愛人は通常の事案と比べて高額な慰謝料を支払うことになる可能性は高いでしょう。全額の返金には遠く及びませんが、相談者にとってはこの点を多少の救いとせざるを得ないのではないでしょうか」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
坂尾 陽(さかお・あきら)弁護士
第二東京弁護士会所属。同志社中高出身、京都大学・京都大学法科大学院修了。2012年から2016年まで四大法律事務所においてM&A、相続・事業承継等を取り扱い、2016年に銀座において独立。テレビ番組にも多数出演する等の活躍を果たしている。
事務所名:アイシア法律事務所
事務所URL:http://a-lawoffice.jp/