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【検証してみた】『アサシン クリード オデッセイ』の世界はどこまで忠実に作り込まれているのか?

2018年11月29日 08:22  リアルサウンド

リアルサウンド

 『アサシン クリード オデッセイ』の魅力はなんと言っても、精確な時代考証によって再現された古代ギリシャ世界を旅できることだ。


 しかし、古代ギリシャについて専門的に学んでいない限りは、『アサシン クリード オデッセイ』の時代考証がどこまで精確かは判断することはできない。


 そこで、この記事では『アサシン クリード オデッセイ』の時代考証がどこまで徹底されているかを調査するため古代ギリシャ関係の書籍を参照し、どこまで古代ギリシャが再現されているのか検証したい。


参考:【太ってみた】『レッド・デッド・リデンプション2』で限界まで太ったら戦闘力5のおっさんになった


パルテノン神殿の正面はどちら側?


 古代ギリシャの象徴とも言える建造物パルテノン神殿。テレビや観光ガイドブックでも頻繁に見られる建造物だが、我々が普段目にするパルテノン神殿の姿は「裏側」にあたる。


 藤村シシン『古代ギリシャのリアル』によれば、ギリシャの神殿の多くは入り口が東側を向いており、パルテノン神殿も例外ではないとのこと。しかしパルテノン神殿は西側以外の3方が険しい崖になっているため、参道を登って正面に見えるのが神殿の裏側(西側)なのである。


検証結果:史実通り! 前門は東側にあった


 さっそく検証のため、主人公カサンドラにアテナイにあるパルテノン神殿へと飛んでもらった。ゲーム内での調査なら飛行機代や宿代を含めた取材費も必要なく、実にリーズナブルだ。


 石畳の綺麗に引かれた参道を登るとパルテノン神殿が見えてきた。調査によれば参道から見えるのは、神殿の裏側(西側)らしいが……。外から見ただけでは判別がつかない。中に入ってみる。すると、西側から入ることのできる部屋はかなり狭く、宝物庫のような空間になっていた。


 そこで東側の部屋に入ってみたところ、こちらにはアテナの像があり、いかにも神殿らしい内装になっている。つまり、東側が神殿の前門なのだ。つまり、史実と同じである。


古代ギリシャの男性名はだいたいSで終わる?


 古代ギリシャ語の文法上、男性の名前は基本的に「s」か「n」か「r」で終わるようになっている。確かに有名な古代ギリシャ人を何人か挙げただけでも、レオニダス、ソクラテス、ヘロドトスと名前は全て「s」で終わっている。


 ではゲーム内でも、モブキャラクターも含めてこのルールに従って命名されているのであろうか?


検証結果:「s」で終わる名前が圧倒的に多い


 検証にあたって傭兵、コスモスの門徒、男性神、砦にいるモブ兵士の名前を60名分チェックした結果、男性キャラクターの語尾の割合は以下のようになった。


・古代ギリシャの男性60名(神含む)の名前の語尾調査
名前が「s」で終わる男性:46名 ペリクレス、アレクシオス、ゼウスなど
名前が「n」で終わる男性:10名 クレオン、アポロン、ポセイドンなど
名前が「r」で終わる男性:3名 エルペノール、ステントールなど
その他の音で終わる男性:1名 メリテ
※日本語版の字幕を参照し「ス」の場合は「s」、「ン」なら「n」、「ル」は「r」という風に割り振った。


 60名中46名の名前が「ス」で終わっているという驚くほどの偏りを見せた。本編プレイ中、「ギリシャ人って似たような名前が多いな」と感じた方がいたとしたら、その発見は気のせいではない。


胸毛が一部分だけハゲている怪物がいる?


 狩猟の神アルテミスには、幼い頃自らを抱き上げたサイクロプスのブロンテスに怒り、ブロンテスの胸毛をひとつかみ引き抜いたという神話がある。その後ブロンテスは抜かれた場所の胸毛が死ぬまで生えてこなかった、と言い伝えられている。


 そして『アサシン クリード オデッセイ』にも、一つ目の巨人ブロンテスが登場する。言い伝え通り胸毛が一部分だけハゲているのか、調査してみよう。


検証結果:そもそも胸毛は生えていない……しかし?


 ブロンテスに会うため、わざわざセーブデータまで巻き戻してブロンテスの待つ島へと向かった。レベルが低いせいで海賊船に襲われた挙げ句、海に投げ出されサメの餌食になるトラブルにも見舞われたが、なんとかブロンテスと相まみえられた。さあブロンテス、おまえの一部分だけハゲている胸毛を見せてくれ。


 あれ? 生えていない。一部分どころか胸毛が一本も生えていない。


 しかし、よく見れば右胸のあたりに血の色が混じった茶色のアザのようなものがある。もしやこのアザの部分がアルテミスに胸毛を抜かれた部位なのかもしれない。そして胸毛が一部分だけないのを恥ずかしく思ったブロンテスは、慣れない手つきで胸毛を処理した、というのは考えすぎであろうか。だとすればまたしても『アサシン クリード オデッセイ』の時代考証が精確だったことになる。


間違い探しのように楽しむ『アサシン クリード オデッセイ』


 今回この記事のために、古代ギリシャにまつわる書籍を片手に『アサシン クリード オデッセイ』をプレイしたが、史実や神話の内容がゲーム内の要素とリンクしたとき、細部まで行き届いたこだわりにニヤりとさせられた。


 本作は普通にプレイしても十分楽しめる作品だが、古代ギリシャの知識をつけてから、あるいはつけながら遊べばより楽しめるゲームになっている。


 攻略本の代わりに歴史書を開いてゲームを遊ぶのも一興だ。


・参考文献
藤村シシン『古代ギリシャのリアル』実業之日本社
『地球の歩き方’13~’14 ギリシアとエーゲ海の島々&キプロス』ダイヤモンド社


(脳間 寺院)