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“準”Wタイトルのキャシディが今だから明かす胸中。2018年は「キャリアで最高の年」も「精神的に疲弊した」

2018年11月28日 18:31  AUTOSPORT web

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スーパーGTとスーパーフォーミュラでシリーズチャンピオン争いを演じたニック・キャシディ
2018年、スーパーGTと全日本スーパーフォーミュラ選手権に参戦し、最終戦までチャンピオン争いを繰り広げながら、二冠に手が届かず、両シリーズともランキング2位に終わったニック・キャシディ。2018年シーズンは「レースキャリアで最高の1年」としながらも、シーズン終盤は「精神的にかなり疲弊」していたことを明かした。

 キャシディは2018年、スーパーGTではディフェンディングチャンピオンとして平川亮とともにKeePer TOM’S LC500を、スーパーフォーミュラではKONDO Racingの3号車をドライブした。

 10月末にシーズンが終了したスーパーフォーミュラでは第4戦富士スピードウェイでポール・トゥ・ウィンを飾ると、ランキングトップで最終戦鈴鹿サーキットへ。

 この決勝レースでは、チャンピオンを争っていた山本尚貴(TEAM MUGEN)とレース終盤に直接の優勝争いを展開。勝ったほうがチャンピオンとなる状況に持ち込んだが、わずか0.6秒届かず、山本に逆転でタイトルを奪われてしまう。

 そして11月11日にシリーズ最終戦が行われたスーパーGTでも、山本とジェンソン・バトン操るRAYBRIG NSX-GTとランキング同一首位で最終戦もてぎに臨むと、決勝でRAYBRIG NSXと直接の3位争いを演じたが追い抜きは叶わず。3点差でシリーズ連覇を逃した。

 わずか3週間の間に同じホンダ&山本に両シリーズのタイトルを奪われたキャシディ。GT最終戦終了後は、ふだんは気兼ねなく応じるメディアインタビューもシャットアウトするなど、ふだんとは異なる様子がうかがえた。

 そんなキャシディは11月25日に富士スピードウェイで行われた『TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL 2018』に参加。2018年シーズンをともに戦ったKeePer TOM’S LC500やSF14をドライブしたほか、イベントに訪れたファンと笑顔で交流。「ファンからエールをたくさんもらえるし、直接感謝を伝えられる」と自身もイベントを満喫していた。

 イベント終了後、あらためて2018年シーズンの感想を聞くと「僕のレースキャリアとしては最高の1年だった」とキャシディ。

「僕自身のパフォーマンスは高く強力だったし、ミスもしなかった。表彰台にも何度も上がることができたから、シーズンとしては(スーパーGTもスーパーフォーミュラも)ハッピーなものだった」

「それに両方の選手権でランキング2位に入ったことは喜ぶべきことだよね」

「ただ、両シリーズでチャンピオンに挑まなくてはいけなかったから、(10月から11月までの)2カ月間は精神的にかなり疲弊した期間でもあった。かなり強いストレスがかかる時間を過ごしたんだ」

「だから、ここから2カ月はレースのことを忘れて、しっかりリラックスしたい。2019年にもう一度アタックするためにも、リフレッシュしないとね」

■キャシディが語る夢。「いつかトヨタとル・マンに」
 そんなキャシディが参加したTGRF2018における最大のトピックスはル・マン24時間耐久レースを制した8号車トヨタTS050ハイブリッドとWRC世界ラリー選手権でトヨタをマニュファクチャラーズチャンピオンに導いたトヨタ・ヤリスWRCが母国凱旋を果たしたこと。

 ヤリスWRCはメインコースや場内各所を舞台に行われたデモランでその走りを披露したほか、8号車TS050はル・マン24時間でついた汚れなどもそのままの状態で富士に持ち込まれ、パレードランを行っている。

 この走りを見ていたキャシディは「(どちらか1台を運転できるなら)ラリーカーよりもLMP1マシンのほうがドライブしたい。トヨタと一緒にル・マンを戦いたいと心の底から思っているんだ。いつか、そういったチャンスが巡ってきたらうれしいんだけどね」と胸の内を明かした。

 2018年、スーパーGTとスーパーフォーミュラの二冠には手が届かなかったが、この経験がキャシディを強くしたことは間違いなく、山本やバトンなどベテランとの戦いぶりでレース界での評価も急上昇している。日本のモータースポーツ界で花開いたキャシディが、日の丸とニュージランド国旗を背負ってル・マンを戦うのも、そう遠い未来ではないかもしれない。