2018年11月28日 10:02 弁護士ドットコム
ツイッターで「ママ活」を呼びかけたとして、福岡県内の高2男子が補導されたーー。そんな驚きのニュースが11月5日、報じられた。
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読売新聞によると、男子高校生は9月下旬、ツイッターに「福岡 17さい ままかつしたい#ママ活募集」と投稿。署員がメッセージを送ると「2時間カフェでまったり会うので7000円」と条件を示したという。
「#ママ活募集」のハッシュタグを見てみると、「ママさん募集しております!DMください」などと書き込み、詳しい条件を添付の画像で説明したり、DM(ダイレクトメール)で説明すると呼びかける書き込みが多数あった。
年上の女性や男性と食事をして金銭をもらう「ママ活」や「パパ活」。法的な問題はないのか。神林美樹弁護士に聞きました。
ーー肉体関係がなく、お小遣いを渡したりプレゼントを渡したりするだけの関係だった場合、「ママ活」「パパ活」は違法ではないのでしょうか
「『違法』という言葉には、刑事上の違法と民事上の違法の2つの意味が含まれています。肉体関係が一切ない場合には、刑事で違法とされることはないと思われます」
ーー民事では違法となるのですか
「民事の場合、『パパ』や『ママ』にそれぞれ配偶者がいるのであれば、お小遣いやプレゼントを渡す頻度や金額、その他の事情から、社会的妥当性の範囲を逸脱するような場合には、夫婦生活の平穏を害し精神的苦痛を与えたとして、損害賠償責任を負う可能性があります。
『パパ活』『ママ活』の事案ではないですが、証拠上肉体関係までは認められないものの、そのほかの交際状況から損害賠償請求を認めたという裁判例があります。肉体関係がなくても『不法行為』になりえます」
ーー金銭をもらう側が、18歳未満だとどうでしょうか
「18歳以上であろうが18歳未満であろうが、いずれも結論は変わらないものと考えられます。民事上は、行為時に、おおむね12~13歳以上であれば、責任能力が認められて、損害賠償責任が認められます」
ーー肉体関係があった場合、売春になりますか
「売春防止法は『売春』の定義を『対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう』(2条)としたうえで、『何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない』(3条)と規定し、売春をすること及び売春の相手方となることが違法になることを明らかにしています。
したがって、肉体関係、すなわち性交があった場合には、それが売春であると評価できるような実態があれば、刑事上は違法となります。
売春防止法では『性交』が売春の要件とされています。性交はなく、性交類似行為(手淫や口淫をする行為などが該当すると解されています)をしたに留まる場合には、売春には該当しません」
ーー「対償」というのはお金ですか
「『対償』とは、売春することに対して対価の意味をもつ給付で、経済的利益のことをいうとされています。これは現金を渡す行為に限られません。アクセサリーやハンドバッグなどのプレゼントをする行為も含まれます。
ただし、売春防止法3条違反については処罰規定がないため、売春した人や売春の相手方となった人は、同条違反を理由に処罰されることはありません。パパ活・ママ活をした人が18歳以上であれば刑事罰を受けることはないでしょう。
他方で、18歳未満である場合には、児童買春が成立しいわゆる児童ポルノ法違反として処罰の対象になります。児童ポルノ法は、性交のみならず、性交類似行為も禁止の対象としています(2条2項)。これに違反すれば『5年以下の懲役又は300万円以下の罰金』(4条)という重い処罰が用意されていることに注意が必要です。
さらに、上でも説明しましたが、民事上では、18歳以上であろうが18歳未満であろうが、『パパ』や『ママ』に配偶者がいるのであれば、『不貞行為』があったとして、配偶者に対して損害賠償責任を負う可能性があります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
神林 美樹(かんばやし・みき)弁護士
第一東京弁護士会所属。日弁連刑事弁護センター幹事。刑事事件・少年事件に注力しており、主として、捜査弁護(身体拘束からの早期釈放・接見・示談交渉)、裁判員裁判、依存症患者の更生支援などに携わっている。
事務所名:弁護士法人ルミナス東京事務所
事務所URL:https://luminous-law.com/