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2018年いちばん注目されたインディーゲーム『Celeste』はどこがスゴいのか?

2018年11月28日 08:42  リアルサウンド

リアルサウンド

 先日、数あるゲームアワードの中でも権威あるThe Game Awards 2018のノミネート作品が発表された。今年のGOTY(Game of the Year)は、『レッド・デッド・リデンプション2』や『Marvel’s Spider-Man』のような大作が肩を並べるなか、インディーゲーム『Celeste』も候補としてノミネートされている。


 2018年初頭に配信され、海外のゲームメディアで大絶賛を受けた『Celeste』。本作の一体どこがここまでの高評価を生んだのか。考えてみよう。


参考:今年のベストゲームはどれ? 『The Game Awards 2018』受賞作を大予想


無駄をそぎ落としたシンプルな2Dアクション


 『Celeste』はピクセルアートを用いた、スタンダードな2Dアクションゲームだ。ドット画+2Dアクション+高難易度の取り合わせは、インディーゲームではもはや定番となりつつある。だが、それでも『Celeste』は我々に新鮮なゲームプレイを体験させてくれる。


 移動、ジャンプ、空中ジャンプ、しがみつき、アクションはたったこれだけ。プレイヤーは限られた行動を上手く組み合わせて、トゲだらけのセレストマウンテンを登っていかなければならない。


 特徴的なのはジャンプ中に一度だけ急速に軌道を変えられる空中ジャンプで、これが本作のアクションの核になっている。空中ジャンプを使いこなさなければ、ほとんどの場面を突破できない。


 『Celeste』にはクリボーもメットールも出てこない。このゲームには主人公に危害を加えてくるエネミーがほとんど登場しないのだ。そのため、当然ながらマデレンは攻撃手段を持っていない。ステージによってはエネミーいる場合もあるが、そのときマデレンにできるのは逃げることだ。


 自分以外誰もいないステージを空中ジャンプやしがみつきを駆使して進む『Celeste』は、まさしく自分との戦いだ。このゲームにおける最大の敵は、“ハイクソー、二度とやらんわこんなクソゲー”とコントローラーを投げ出す自分自身だろう。


『マリオ』×『ゼルダ』=『Celeste』


 『Celeste』は『スーパーマリオブラザーズ』的なアクションゲームであると同時に、『ゼルダの伝説』のような謎解きアドベンチャーの側面も持ち合わせている。


 ジャンプ後に1度だけできる空中ジャンプと、制限時間のあるしがみつきをどのタイミングで使うのか?どの方向に空中ジャンプするのか?どの順番でステージギミックを起動するのか?考えることは山ほどあるうえ、その判断は即座にこなさなければならない(そうしなければトゲに串刺しにされる)。


 特にやりこみ要素としてステージのあちこちに用意されているコレクトアイテム“イチゴ”は、かなり頭を捻らないと辿り着き方がわからないものも多い。しかもイチゴは触れて即入手できるのでなく、触れてから安全な場所まで行ってはじめて手に入れた扱いになるので、イチゴに触れてからの帰り道も計算して動き方を考えることになる。


BEST SCORE/MUSIC(作曲賞)ノミネートも納得の音楽


 The Game Awards 2018では、GOTYのほかBEST SCORE/MUSICにもノミネートされた『Celeste』だが、たしかに本作の音楽はこだわり抜かれている。


 ステージのどこかに隠された“カセットテープ”を手に入れるとプレイ可能になる“B面”用に、わざわざ専用BGMまで作成しているのには感服するしかない。筆者はノーマルモードでさえなんとかクリアできた程度の腕前だったので、B面は敬遠していたのだが、試しにB面に入ってみたところ音楽が素晴らしいあまり、うっかり1時間近くプレイしてしまった。


 『Celeste』の音楽は、凍えるようなセレストマウンテンの空気をイメージさせるものであり、心に病を抱えるマデレンの精神状態を表現したものでもあるだろう。


難易度は高いが人を選ぶゲームではない


 『Celeste』はほんとうに難しい。クリアまでの死亡回数はゆうに1000回を超えてもおかしくないし、コンマ1秒が生死を分けるようなシビアな操作も求められる。だが、それでも『Celeste』はコアなゲーマーだけでなく多くの層が楽しめる作品に仕上がっている。


 無制限コンティニューと大量にあるチェックポイントのおかげで何度死んでもストレスはなく、どうしてもクリアできない人のためにアシストモードまで用意されている。


 ファミコン時代のアクションゲームが準備なしで登る富士山だとすれば、『Celeste』は最新の登山用具をフルで揃えて登るエベレストのようなものだ。求められる操作自体は『ロックマン』や『マリオ』よりも遙かに複雑だが、遊んでいて快適なのでいくらゲームオーバーになっても飽きることがない。


 高難易度でストイックなゲーム性を保ちながらも万人が楽しめるゲームに仕上げられたことが、『Celeste』の高評価の大きな要因ではないだろうか(また、この記事では触れていないがストーリーも海外のメディアでは非常に評価されている)。


 欠点があるとすれば、8方向入力を正確に入力できるコントローラーでなければ空中ジャンプの軌道を制御しづらく、ややストレスが貯まることぐらいだろうか。もし持っているなら、アーケードコントローラーでのプレイをオススメしたい(必須というわけではないが、アケコンを使えばより思い通りに操作できるはずだし、なによりレトロな名作アーケードゲームをプレイしている感覚に浸れる)。


 The Game Awards 2018で本作がどこまで躍進するかは、12月7日の午前10:30からの受賞発表で明らかになる。インディーゲーム期待の星の行く末を見届けよう。


(脳間 寺院)