神戸市は11月26日、大卒なのに高卒であると偽って勤務していた経済観光局の事務職員の男性(63)を懲戒免職処分にしたと発表した。
男性は1978年に大学を卒業したが、そのことを伏せて「高卒」までが受験資格になっている採用試験を受け、1980年に採用された。2016年3月末に60歳で定年退職したが、同年4月に再雇用されて引き続き同市で働いていた。学歴詐称は匿名の通報で発覚したという。
卒業していないのに卒業したと偽るのは明らかにおかしいが、男性はあくまでも高校は卒業している。ネットでは、「高校も卒業してるから良いだろ」「懲戒免職は厳しすぎるのでは」と疑問を持つ人も多い。
落合弁護士「問題がないということにはならず、処分自体はやむを得ない」
落合洋司弁護士は、たとえ低く偽ったとしても、学歴の詐称は問題だと指摘する。
「採用では、その人の資質や能力、経歴を正確に申告してもらった上で判断します。大学を卒業している以上、そのことを言わなければ、偽りには変わりありません。大卒を高卒と偽ったからといって問題がないということにはなりません」
経歴を偽っていたとはいえ、職員は定年まで何の問題もなく勤め上げた。勤務態度や能力には問題がなかったはずだ。懲戒免職という処分は重いのではないか。
「どの程度の処分が妥当なのかは議論が分かれるところだと思います。やったことに対して、バランスが取れていなければ、解雇権の乱用ということになる。例えば、たった1回の酒気帯び運転で懲戒解雇になったとしても、裁判所がその処分を取り消すというケースもありました。今回のケースでも、処分自体はやむを得ませんが、懲戒免職は重いのではないかと考える人もいると思います」
一方で、懲戒免職が妥当だと考えることも十分にできるという。
「この職員は、経歴を偽っていたわけですから、本来は再雇用される対象ではなかったとも考えられるわけです。どこかで経歴詐称が明らかになっていれば、定年後の再雇用はなかったはず。それならば懲戒免職も妥当だと考えられます」
ただ、刑法に抵触するわけではない。
「私文書偽造は、あくまでも他人の名義を使って文書を作成した時に問われる罪です。自分の名前で嘘の書類を作っても私文書偽造には当たりません。履歴書に嘘を書いても、刑法に抵触するわけではないのです」
高校までしか行けなかった人のための「高卒限定」枠?
またネットでは、「採用条件に『高卒まで』ってあえて付ける意味がよくわからない」という疑問の声が多数上がっていた。それに対しては、「高校までしか行けなかった人を救うための『高卒限定』枠なのだろう」という意見が多い。大卒の人が高卒枠で受験してしまうと、高校しか卒業できなかった人の雇用の機会を奪ってしまうから問題だということだ。
大卒なのに高卒と偽るケースは定期的に起きている。神戸市は2016年8月、男性職員(当時42)を懲戒免職処分にしている。この男性は1998年に高卒までの人を対象にした技能労務職の試験に学歴を偽って合格。同市で約18年間働いていたが、2016年に匿名の通報があって発覚した。