2018年はスーパーフォーミュラに参戦していた松下信治が2019年シーズンからFIA F2選手権に再び参戦することが、先日正式に発表された。ヨーロッパのレースで3年間戦い、そこで十分な結果が出せずに日本に戻ってきたドライバーが、欧州再挑戦にこぎつけるのは、きわめて異例なことだ。
まして松下はホンダからずっと全面的なバックアップを受けてきた。ヨーロッパでの3年間でF1へのステップアップに必要なスーパーライセンスポイントが十分に取れなかった時点で、ホンダは松下をひとまず『上がり』のドライバーと見なした。F1に送り込む若手候補のリストから、実質的に落としたのである。
それでも2018年のスーパーフォーミュラで結果を出せば、まだ再浮上の可能性はあった。しかし松下は予選では時に光る速さを見せてはいたが、レースは4位入賞が最上位。初年度は選手権10位に終わっていた。
「このままスーパーフォーミュラを続けたら、F1への道はますます遠のいてしまう」
松下は今年の早い段階からF2再挑戦を決意し、ホンダに「もう一度やらせてほしい」と何度も直訴を続けてきた。しかし日本でダメだからヨーロッパにまた行きたいと言っても、説得力はない。「まずはスーパーフォーミュラで勝て」と、要求は却下され続けた。
すると松下は、自力でF2参戦に必要な資金集めを始めた。さらに8月にはベルギーGPを訪れ、F2主要チームの首脳に片っ端からアポなしで会いまくった。そこで某チームから得た前向きな返答と、そこまでに調達した資金実績を持って、再度ホンダの山本雅史モータースポーツ部長を訪れた。
山本部長はかねがね、本当にサポートする意味のあるドライバーかどうかを『総合的な人間力』で考慮してきたという。そして松下に対する異例の再支援の決め手は、「もはや開くことはないと思われた扉を、自分の力でこじ開けたことだった」と、山本部長は言う。
「自分の進もうとする目標に対して、強い意志を持ってる子じゃないと、この世界では絶対にやっていけない。今の松下が、まさにそうです。2年前までの、完全に煮詰まっていたドライバーとはまったく別人です。必ずやってくれると、期待しています」
松下選手の再挑戦までの軌跡の詳細は、今週発売のオートスポーツをぜひ読んでほしい。