2018年11月27日 12:02 弁護士ドットコム
法科大学院在学中に司法試験を受けられるよう、法務省が制度変更を検討していると報じられる中、法科大学院に関係する学者や弁護士らでつくる3団体が、相次いで制度変更に反対する意見書を出した。11月26日に会見した関係者らは、法学部3年、大学院2年の「法曹コース」の導入を前提に、「ロースクール教育の中身を崩壊させる本末転倒な案」(宮澤節生神戸大学名誉教授)と危機感を示した。その上で、現在の案の拙速な導入を避け、予備試験の受験資格の制限などを検討するように求めた。
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司法試験受験は、現在、法科大学院修了者と予備試験合格者に限定されている。予備試験受験者は、一般的に、法曹資格が得られるまでの経済的、時間的な負担を懸念しているとされ、受験者、合格者も増加傾向にある。その中で、中教審は10月、法曹コースの創設を柱とした法科大学院制度の見直しについて大筋で了承。同時期に、法務省が、法科大学院在学中に司法試験が受験可能な変更を検討していることが報じられた。
今回の制度変更に対して、反対の意見書を出したのは「ロースクールと法曹の未来を作る会」(代表理事:久保利英明弁護士)、「臨床法学教育学会」(理事長:須網隆夫早稲田大学教授)、「法科大学院を中核とする法曹養成制度の発展をめざす研究者・弁護士の会」(発起人:内山宙弁護士、宮澤氏ら)。宮澤氏は、「関係者や弁護士で反対がないような印象の報道だったが、3つの会は拙速導入に反対で、慎重な検討求める」とした。
反対の理由については、既習者コースの場合、現在の法科大学院1年生と同じ時期から司法試験受験が可能になる点について、宮澤氏は「既習者コースの1年目から、予備試験や司法試験準備に追われ、多くの人が落ちて、翌年の予備試験や司法試験準備に追われることになる。ロースクール教育の内容がスカスカになる」とした。その上で、今後、法曹コース導入者が司法試験を受験して、結果が出るまで待つように求めた。須網氏は「どういう法曹を育てるかということ考えず、司法試験合格で法律家になれるという歪んだ考え方ではじまっている」とした。
ロー未来の会の副代表理事の岡田和樹弁護士は、今回の案が出た経緯についても、「法科大学院協会と弁護士会と少し話して『反対しませんね』みたいな同意をとるのはふざけた話。密室で決めていいのか」と話した。
また、会見出席者らは、現行の予備試験のあり方についても批判。予備試験導入の意義として、経済的に法科大学院にいけない人や実務経験のある人のための制度としたにも関わらず、現状の合格者の職業は大学生や法科大学院生によって、多くが占められていることを批判。会見の出席者は「(法科大学院のない)居住地のみ受験を認める」「法科大学院卒業程度の年齢までの受験制限」「法科大学院生の受験禁止」などのアイデアを示しながら、予備試験のあり方を優先的に検討するように求めた。
さらに、司法試験の合格率への指摘もあった。岡田弁護士は、「問題の根幹は3年かけても3割しか受からない司法試験のありかた。受験を早く認めるのは対策になっていない」と指摘。三澤英嗣弁護士は、「(在学中の受験は)法曹コースすら骨抜きにする、司法制度改革自体やめるという制度。ひっくり返すならひっくり返す仕組みにしないといけない」と指摘した上で、最低限、現在の法曹養成制度の問題点などを議論する場を設けるようにもとめた。
【訂正 11月28日午後2時】既習者コースの司法試験受験が可能となるタイミングの記述に誤りがありました。お詫びして訂正します。
(弁護士ドットコムニュース)