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吉田羊が今最もホットな女優である理由 『中学聖日記』『母僕』で演技の力量示す

2018年11月27日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 2018年下半期、最もホットな女優だと言っても過言ではない吉田羊。現在も、ドラマ『中学聖日記』(TBS系)の放送に、映画『母さんがどんなに僕を嫌いでも』の公開と、彼女の女優としての凄みを体感できる日々が続いている。


 参考:<a href=”http://www.realsound.jp/movie/2018/11/post-283655.html”>その他画像はこちら</a>


 2017年は意外にも出演映画の公開がなかったこともあり、より彼女の今年の活躍は目立つこととなった。厳密に言えば2018年上半期の終盤から始まった、吉田の快進撃について、ざっくりと振り返ってみたい。


 この快進撃のスタートは、放送作家である鈴木おさむの初監督作品『ラブ×ドック』だ。吉田鋼太郎、玉木宏、野村周平という3タイプの俳優を相手に大人の恋模様を演じた本作は、吉田の記念すべき映画単独初主演作ともなった。“踏んだり蹴ったりの恋愛事情を、遺伝子から抽出した薬によって軌道修正させる”という、あまりに突飛な物語にもコミカルな演技で適応してみせ、主演女優としての安定感の高さも証明している。


 続く映画『恋は雨上がりのように』では、あくまで、ヒロイン・橘あきら(小松菜奈)の母親というポジションに静かに収まっていた。溌剌とした印象の強い吉田なだけに、あっさりとした役どころは少々物足りない気もしたが、それでも、ヒロインである娘を支える姿は好演と呼べるものである。さらに、“4回泣ける”とうたった『コーヒーが冷めないうちに』では気丈に振る舞う女性の、思わず溢れ出る感情的な一面を力強く演じ、キャリアに裏打ちされた女優としての力量を納得させるものとなった。まさに作品の“泣ける”の一端を担ったと言えるだろう。


 そんなベテラン女優の領域を着々と歩む吉田が出演中のドラマ『中学聖日記』。男子中学生(現在は高校生パートに突入)と主人公の女教師の恋愛が描かれるのと並行して、吉田が演じる“バリキャリ女子”と町田啓太演じる部下との恋模様も展開されている。奔放で掴みどころのない性格、淡々とした口調、ときおり見せる愛らしい一面もあり、主人公とは対照的な、ドラマをかき回す第2のヒロイン像を確立。艷やかな佇まいも印象深い。回を重ねるごとにセンセーショナルな展開が大きな反響を呼んでいるが、彼女もまたその反響を生み出した一つの要因だ。


 そして公開中の『母さんがどんなに僕を嫌いでも』で吉田が演じるのは、打って変わって母親役。といっても、子どもたちに笑顔を見せたり、優しい言葉をかけたりするような人物ではなく、彼女が体現するのはその正反対の母親像だ。精神が不安定な激情型であるこの母親は、息子を相手に凄惨な虐待と罵詈雑言を浴びせる。見るに堪えないその姿は、脳裏に焼き付いて離れない。しかしタイトルから察することができるように、本作はそれでも、息子が母に歩み寄ろうとする物語だ。激昂する吉田も見ものだが、やはり、やがては息子の想いに応えるようになっていく、その吉田の変化こそ本作において見逃せないものだろう。


 吉田の母親役と言えば、先に公開された『ハナレイ・ベイ』でも見ることができる。しかもこちらも、息子と不仲な母親であり、劇中のセリフには「息子のことが嫌いでした」というものまである。しかし、先述した作品の母親のイメージが“動”だとするならば、本作の母親は“静”といった印象だ。口数は少なく、表情や仕草だけで、息子への薄っすら募る嫌悪感を示している。そんな彼女の奥に隠された愛情が、徐々に表出していく様も見事だ。吉田のトレードマークとも言える溌剌とした姿はたしかにいいし、そのイメージはすでに根強く定着しているが、こういった、より繊細さを要するのであろうキャラクターも、もっと見たいものである。奇しくも公開タイミングが重なった“母モノ映画”の両作によって、これまた吉田の力量を再認識させられることとなった。


 また今期はWOWOWにて、主演作『コールドケース2 ~真実の扉~』(WOWOWプライム)も放送中。彼女がいま最もホットな女優である所以は、これら一連の作品に隠されている。その引き出しは、まだまだ多くありそうだ。 (文=折田侑駿)