2019年5月の改元を前に、平成を振り返る特番の作成が進んでいる。NHKのEテレでは1月2日と3日に「平成ネット史(仮)」という番組を放映する。テキストサイトや2ちゃんねるからフェイクニュースまで、平成日本のネット史を振り返るという内容だ。
同番組のツイッターアカウントでは、番組出演者を紹介したり、PHSの思い出を募ったりしている。そのアカウントが11月24日、
「期待されてる方もおられるようですが、#平成ネット史とは言っても、さすがに地上波で鮫島事件を扱うことは出来ません。ご容赦ください」
と投稿し、「やっぱりNHKでも扱えないよね」「口にするのも恐ろしい」と話題になっている。
「自分はこのネタが分かっている」とネットの先輩風を吹かせて煽る人が後を絶たない
鮫島事件とは、2ちゃんねる発祥の架空の事件のことを指す。2001年5月に「伝説の『鮫島スレ』について語ろう」というスレッドが立てられたのが発端となった。
スレ主は、「(『鮫島スレ』を)見たときのショックは今でも覚えています。誰かあのスレ保存してる人いますか?」と呼びかけ。それに対し、「あのスレの事はタブー。よって終了」「あのスレの事を思いださせるな、今でも気分悪くなる。氏ね」といった書き込みが相次いだ。「鮫島事件」も「鮫島スレ」も架空のものであるのに、それがあたかも実在し、しかも触れてはいけない"タブー"であるかのような書き込みをする人が相次いだのだ。
話はどんどんエスカレートし、「お願いですから、もう封印されたものを持ちだすのは、、。公安を敵にまわして勝てた人がいなかったのは前スレで、、もうやめた。恐いよ」と公安警察の関与を仄めかす書き込みまで現れた。
ITジャーナリストの井上トシユキさんは、「鮫島事件」について、
「スレッドの中で事件の現場の様子を中継したり、書き込みをしていた人がトラブルに巻き込まれたことを匂わせてスレッドからいなくなったりと、実況中継のような形で繰り広げられた初めての"ネタ"だと思います」
と評した。最初にスレッドが立てられてからすでに20年近くが経つが、なぜいまだに"ネタ"として楽しまれているのだろうか。
「2001年はまだダイヤルアップ回線でインターネットに接続していた時代。ネットを使っているのはごく一部の限られたユーザーでした。鮫島事件をリアルタイムで知っている人は非常に限られているため、『俺はこのネタを知っている』という先輩風を吹かせたくて、このネタを持ち出すのかもしれません。後から知った人も『私はこのネタを分かっている』という気持ちから、ふざけて『この事件に触れてはいけない』なんて書き込んでいるのかも」
このネタを知っている人が「このネタについて触れてはいけない」と煽るため、何も知らない人が興味を持ち、いつまでも語り継がれているという。
鮫島事件ツイートのおよそ10分後に「おや、誰か来たようだ」
「NHK平成ネット史(仮)」のアカウントも、この"ネタ"に便乗し、「地上波で扱うことはできない」と投稿したわけだ。さらにその後「おや、誰か来たようだ」ともツイート。事件に触れたことで、何者かが来たかのように演出した。
このツイートには、「例えツイートでも鮫島事件を触れたらダメでしょ…」「あの事件を扱うことのリスクをよく知ってるみたいで良かったです」といったリプライが多数寄せられていた。
中には、「鮫島事件ってどんな事件なんですか?」という質問も寄せられていたが、「調べてはいけないし関わってもいけないよ…見なかったことにして忘れましょう」などの返信が付いていた。