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「これ、放送できないなぁ」グルメ番組、意外なNGポイント…ロケハン同行してみた

2018年11月26日 10:12  弁護士ドットコム

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半年ほど前の話だ。自宅でのんびりしていたところ、テレビ制作会社に勤める友人からLINEが届いた。「今日、休みだったりしないかな。今、ロケハン(撮影場所探し)してるんだけど、手伝ってくれない?」


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友人が担当しているのは、ある番組のグルメコーナー。記者が住む街は、近年メディア露出が増えており、彼の番組でも特集を組むという。


せっかくなので、街案内しながら、テレビの制作過程を見学させてもらうことにした。すると、意外な法律問題を気にしていることがわかった。


●外観を見て一言「すごく良いんだけど、ちょっと…」

この日は、1回目のロケハン。事前調査はいつもネットの検索がほとんどだという。


「なるべく他の番組や雑誌と被らないようにね。有名どころばかりを扱っても仕方がないでしょ。もちろんロケハンでは、リサーチした店の確認だけじゃなくて、実際に街を歩き回って、面白そうな店も探しているよ」


記者のような「住民」に聞くというのも基本動作のようだ。印象的だったのは、「ロケハン」という割に、彼が一切店に入らないということ。店内の様子と外観を丹念に眺めている。


「取材は次回のロケハンだね。まずは候補のリストアップ。繁盛していることが前提だから、客層や混み具合は、特に注目して見ているね」


そして意外な法律問題も。「この店、すごく良いんだけど、テレビだと扱いづらいなあ」。そう言って彼が指差したのは、店の「立て看板」だった。



●「看板が公道に出てないか」は絶対にチェックする

「道交法だよ、道交法」ーー。道路交通法には「何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない」(76条3項)という規定がある。


「看板が公道に出てないか、は絶対にチェックするポイント」


警視庁によると、「立て看板等が道路上にはみ出ていた場合には、所有者などに対して、敷地内におさめるよう指導するとともに、危険性や悪質性等を勘案し、取り締まりを行うこともあります」。


なお、根拠法令には、道路法もあげられるそうだ。この法律では、「みだりに道路に土石、竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞のある行為をすること」(43条2号)が禁じられている。


道路上の立て看板を目にすることは珍しくない。実際に「問題あり」と判断されるケースは少ないのだろう。とはいえ、「コンプライアンス」の観点から、テレビがおおっぴらに取り上げるわけにもいかないようだ。


●さらにロケハンを重ねて放送へ

数カ月後に放送された番組では、記者が教えた店もいくつか紹介された。彼によると、あの後、2回のロケハンを重ねたうえで撮影に入ったという。


「普段のロケハンは全2回が多いんだけど、今回は特集だったからね。1回目で目星をつけたら、2回目以降はアポをとって取材。オープンの経緯とか、料理のこだわりとかを聞く。


たとえば、仕入れに特徴があるのなら、密着させてもらうことで、お店だけの画から変化が出るし、一般の人が入れないところも撮れるから、面白くなるでしょ」


自分が教えた店ながら、放送で初めて知った事実もあった。番組内のコーナーのひとつなので、尺は数分しかない。それでも、多くの人の協力とこだわり、時間が詰まっていることを改めて思い知らされた。


(弁護士ドットコムニュース)