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【『Fallout 76』プレイレポ】減点法ではなく加点法で評価したいRPG

2018年11月26日 07:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 〈Almost heaven, West Virginia〉(まるで天国のような場所、ウェストバージニア)


 2076年、かつてジョン・デンバーが名曲「カントリー・ロード」で歌ったウェストバージニアは、すっかり死体とガラクタと放射能だらけの地獄になっていた。川は汚染され、山はミュータントの巣となり、主人を失ったロボットたちはみんなHAL9000よろしく発狂している。このウェストバージニア州アパラチアの地上には、もはや1人の人間も残されていない。ただし、ついこの間、開放されたVault76からやってきた青いスーツのお友達を除いて……。
(参考;人間のいない新たなウェイストランドで始まる『Fallout 76』流マルチプレイの魅力とは


 この記事では核戦争後の世界を生き抜くオープンワールドRPG『Fallout 76』のプレイレポートをお届けする。


・核戦争後の世界を生き抜け ポストアポカリプスを生き抜くアクションRPG


 本作『Fallout 76』の基本的なゲームシステムは、2015年に発売された『Fallout 4』をベースとしている。銃、バット、釘バット、あるいはノコギリ刃付きバット、プレイヤーは好きな武器を携えて荒廃しきったアメリカの大地を彷徨い、生き延びるためにあちこちの建物を物色する。


 アパラチアは広大だが、そのどこへ行っても放射能で変異した凶暴なミュータントや発狂したロボットが襲いかかってくる。そんな時は自分の力だけで立ち向かうのもいいが、自動で照準を定めてくれるV.A.T.S.を駆使してミュータントの頭を吹き飛ばしてやろう。


 プレイヤーは一応の目的として“アパラチア再建”を任されているが、どうせ生存者もいないので自由に生きて問題ない。


・PERKシステムについて


 『Fallout』シリーズでは、S.P.E.C.I.A.Lと呼ばれる7つの基本ステータスのほかに、PERKというスキルが存在する(たとえば“Iron Stomach”というPERKを取得すると、汚染された食料を食べても病気になりにくくなる)。過酷な世界でサバイブするには、PERKの助けは必要不可欠だ。


 『Fallout 76』ではPERKをカード形式で管理するようになった。PERKカードはレベルアップ時と、定期的にもらえるPERKカードパックの開封で手に入れられる。こんな紙ぺら1枚でも生死に関わってくるのだから、舐めてはいけない。


・グロテスクな『どうぶつの森』=『fallout76』


 巨大ゴキブリや巨大サソリ、ゾンビのような化け物にスーパーミュータントその他諸々の怪物と戦う点以外は、『Fallout 76』は生活を楽しむゲームだ。腹が減ったら食事をし、喉が渇けば水を飲む。どんな場所でも拠点にできるC.A.M.P.で、自分好みの家を作るのも悪くない。見た目が物騒すぎる点を加味しなければ、本作は『どうぶつの森』と似ていなくもない。


 手に入れた食料を食べると、ライフを回復したりステータスに良い影響を与えられる。ただし、生肉をそのまま食べたり川の水を直接飲んだりすれば、あっという間に放射能でオダブツだ(そうでなくても突然変異で腕が3本になったりするだろう)。汚い水は煮沸消毒してから飲もう、肉は焼いてから食べよう。蛮族はこの世界では生き残れない。


・マルチプレイに対応
「ソロでは厳しい難易度」


 本作はオンライン専用ゲームであり、プレイヤーは毎ゲームごとに最大24人が入れるサーバーに放り込まれる。この24人までという人数設定が絶妙で、普通にプレイしているとなかなか他人とすれ違わない。


 ただ、他プレイヤーはマップ上で白い点として表示されるので、チームを組んで遊びたいときはプレイヤーが集中している地点にファストトラベルで近づける。


 オンライン専用タイトルだけあって、ソロでの進行はなかなか難易度が高い(不可能ではないが)。過去作と違ってV.A.T.S.の使用中や、アイテム選択中も時間が止まらないため、1人での戦闘はほんとうに辛くなっている。できることなら頼れる仲間を見つけたい。


「オンラインだからこそ生まれる偶然性」


 筆者がこの記事を書くために『Fallout 76』にログインした直後、ワールド内に“核攻撃が行われます。近くの人は避難してください”といったアナウンスが流れた。


 本作では難易度は高いものの、決められたアイテムを揃えて所定のイベントをこなすことで核攻撃を行えるのだ。そのときに核攻撃を行ったのは、ワールド内にいた高レベルの外国人グループだった。


・男の子の夢パワーアーマーに身を包んでいる


 そして興味本位で、核攻撃を行ったグループに近づいてみたところ、彼らは大声で核爆発のカウントダウンをしていた。


 3,2,1、ィィイイイヤッッフゥゥゥゥー!!! という彼らのボイスチャットと共に、手元のデュアルショックが震え、爆音が響く。


 こうして私は、“核攻撃を目撃した一般人”になった。こんな風にして、1人プレイのゲームではありえない、巻きこまれる体験を味わえるのが『Fallout 76』の大きな魅力だ。


・見過ごせないいくつかの欠陥
「いくらなんでも不具合が多すぎる」


 ベセスダのゲームにはよくある話だが、『Fallout 76』はとにかく不具合が多い。死んだはずの巨大な蚊が地面で永遠に羽ばたき続けていたり、地面に埋まったスーパーミュータントが地中から銃撃してきたりするのは、まだ笑って許せる。だが、クエスト進行不可バグや、かなりの頻度で発生するカクつきにはさすがにストレスを感じてしまった。PC版ならハードのスペックの問題で片付けられるが、コンシューマー機でこの遊びにくさはいただけない(プリケッツ砦のクエスト進行不可バグは11/19に修正)。


「時間停止がないのがストレス」


 オンラインゲームという都合上、仕方のないことかもしれないが、いわゆるポーズにあたる操作が一切ないのは存外に不便だ。ちょっとトイレに立ちたいときにゲーム内で時間を止められず、スッキリしてトイレから帰ってきたら自キャラがボコボコにされているのは目も当てられない。


 また、クラフト中やフォトモードのときでさえ、モンスターは動き回っていて、文字通り“容赦なく”プレイヤーを襲ってくる。メニュー画面で無敵にならないのはゲームバランス上の都合かもしれないが、さすがにフォトモード中ぐらいは無敵にしてほしい。自分のキャラがなぶり殺しにされる瞬間を撮るのは、あまり楽しくない。


・粗こそあれど唯一無二の体験ができるゲーム


 『Fallout 76』は減点法ではなく加点法で評価したいゲームだ。本作にはかなり深刻な不具合やバグが存在し、ローカライズも行き届いていない部分(クエスト名は英語のままで、翻訳されたテキスト類も読みにくい)が多い。


 とはいえ、世紀末世界で自給自足の生活を送るロールプレイをするのに『Fallout 76』ほどうってつけのゲームはない。空腹・水分ゲージの追加や、拠点のクラフト機能のおかげて本作はシリーズかつてないほど、“暮らしている”実感が強いゲームになった。


 友達と一緒に、あるいは孤独に、広大ならアパラチアに飛び出そう。たくさんのミュータントと放射性物質があなたを待っている。(脳間寺院)