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アブダビGP緊急訪問の山本尚貴を直撃(後編):「状況を考えると簡単ではないが、F1に挑戦してみたい」

2018年11月26日 06:11  AUTOSPORT web

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2018年F1第21戦アブダビGPの現地を訪れた山本尚貴。次期日本人F1ドライバーへの期待が高まる
スーパーフォーミュラ、スーパーGTの国内二冠を獲得した山本尚貴が、F1最終戦アブダビGPを観戦するため緊急訪問。スーパーライセンス獲得のチャンスが巡ってきた山本がF1への熱い思いを語る。

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──昨年チームメイトの(ピエール・)ガスリーとは今回、会いましたか?
山本尚貴:まだ会っていないです。もちろん、彼と会ってあいさつもしたいですが、彼も最終戦でレースをしているので、集中力を切らすようなこともしたくない。しかも、今週末はうまく行っていないところもあって、タイミングがありませんでした。

──F1を生で見て、ここでやれるという自信は?
山本尚貴:やれるかやれないかは、やってみないとわからない。今ここで『自信がありません』と言ったら、それで話は終わってしまう。やれるかやれないかというより、そこに立つか、チャンスを掴みにいくのかどうかということのほうが大事だと思っています。

 今回、ここにいるということはF1への思いがあるからです。もちろん、自分の思いだけでは乗れるステージではないことはわかっています。F1ドライバーになるには、速いだけではなく、体制をしっかりと整えていないと立てないステージだと思っています。

 ですから、ホンダさんのバックアップがなければ、ここには立てなかったし、これからもサポートをお願いしたいと思っています。ただ、最終的にF1への扉をこじ開けるのは自分だと思っています。

■山本尚貴の家族はF1への挑戦を全面的に応援

──山本選手は結婚されており、生まれたばかりのお子さんもいます。家族はどのような反応ですか。
山本尚貴:全面的に応援すると言ってくれました。『夢を追いかけて頑張る自分を応援する』と。それに対しては、とても感謝しているし、だからこそ、その家族のためにも頑張りたい。

 ここに来るまでは年齢の問題とか、家族の問題とかがあって、自分の夢を追いかけるだけでいいのかと自問自答していたときもありましたが、自分からチャンスを遠ざけることだけはしたくなかった。

 そういった問題を乗り越えてでも挑戦する魅力がF1にあるのか、あるいはF1でやっていけるかどうかは、実際にここに来て、自分の目で見てみないとわからないと思って、来ました。

 まだ1日半しか(インタビューはフリー走行3回目後)見ていないので、残りの1日半で自分に問いかけて答えを見つけたいと思っていますが、今のところは挑戦してみたいという気持ちです。

■山本尚貴、スーパーライセンス獲得に意欲


──具体的にF1で何をやりたい?
山本尚貴:レーシングドライバーなので、レースドライバーになることですが、自分が置かれている状況を考えるとそれは簡単ではないことはわかっています。

 でも、僕はこれまで自分からF1に乗りたいというアクションを起こしてこなかった。それによって、チャンスは減ってしまった。でも、今はまだ1席空いている。可能性は高くはないかもしれないが、もしかしたら、つかめるかもしれない。だったら、その可能性に賭けてみたい。

──30歳という年齢とヨーロッパでのレースが未経験という点に関しては、どう考えていますか?
山本尚貴:やってみないとわからないというのが正直な気持ちです。やる前からできないと言えるわけがない。まったく英語ができなかったら、JB(ジェンソン・バトン)とチームメイトで一緒に仕事なんかできないですよね。

 ただ、もっと語学力を高めなければならないことも自覚しています。もちろん、30歳だとか、海外の経験がないとか、ピレリタイヤの経験がないとか、いろいろ不安な要素がないとは言いませんが、逆に30歳になったからできることもある。

 30歳になって失ったもの、衰えたものがあるかもしれないけど、その年齢と経験があるからこそ、若いドライバーが持っていないものを手に入れたのも事実。

 今回F1に来たら、スーパーGT時代に一緒に仕事したエンジニアさんが何人かいました。(日本人が海外でレースするときは)言葉の壁というネガティブな面もありますが、逆に日本人のエンジニアへ日本語で細かいニュアンスでやりとりできるというポジティブな面もある。

 そうやって考えると今の僕にしかできないこともある。だから、できないことを考えるより、できることを前向きに考えていきたい。

──スーパーライセンスはこれから申請するのですか?
尚貴:まだ細かいところを詰めなければなりませんが、取れる権利があるのであれば、取りたいと思います。