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鈴木伸之が映画『jam』で見つけた“海外アクション俳優”の夢 「性に合うので徹底的にやりたい」

2018年11月25日 12:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 劇団EXILEのメンバーが総出演し、スタイリッシュな映像とエキセントリックなキャラクターが特徴的なSABU監督が手掛けた映画『jam』。「因果応報」をテーマに、場末のアイドル演歌歌手ヒロシ、瀕死の重傷を追い意識不明になった恋人の回復を祈り続けるタケル、自分を刑務所送りにしたヤクザへの復讐を行うテツオという3人の男たちの物語が交差し、絡み合っていく。


 そんな本作でテツオを演じているのが、連続ドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS系)や映画『東京喰種トーキョーグール』、『リベンジgirl』などの話題作への出演が続いている鈴木伸之だ。劇中、一切セリフがないという鈴木にとって初めてのチャレンジとなった本作への思いや、20代後半へ向けての目標について聞いた。


【写真】鈴木伸之撮り下ろしカット


■「自分史上、最高のアクション」


ーーテツオという役について、台本を読んでどんな印象を受けましたか。


鈴木伸之(以下、鈴木):セリフが一言もない役というのは今回が初めてでした。逆にそれだけアクションに集中できるというのは、新しい挑戦でもありましたね。


ーー最初からセリフがまったくなかったのですか?


鈴木:準備稿の段階では「ウォー」みたいな言葉は2~3ぐらいあったのですが、途中でSABU監督と「どうせならなくしちゃおうか」という話になったんです。僕もシンプルに考えるタイプなので、それならそれでいいなと思って、思い切りアクションに挑みました。


ーーセリフがないということで意識したことは?


鈴木:そのぶん、思い切り“動”の部分に意識を集中させることができました。これまでもアクションは何度も経験していましたが、一番メチャクチャにやらせてもらいました。自分史上、最高のアクションに仕上がったと思います。


ーー言葉がないぶん、役柄を掘り下げていくのは難しかったのでは?


鈴木:テツオの奥底にあるのは復讐心だと思うのですが、細かいバックボーンはあまり考えず、とにかく大きな動きで躍動感を意識しました。イメージ的にはアクションというより喧嘩に近いような生っぽさを出せればと思って演じました。


ーー出来上がった作品を観ての自己評価は?


鈴木:大満足しています。アクションは間が大切なので、現場では何度もリハーサルしたのですが、本番はほぼ一発OKでした。アクションも2~3回やってしまうと、段取りに慣れてきてしまい、生っぽさが消えてしまうことがあるので、一発で決められてすごくよかったです。あとは、北九州で撮影したのですが、都心から離れて作品に没頭できる環境もよかったです。


■「『こいつウルセー奴だな』と思ったんでしょうね」


ーー劇団EXILEのメンバー総出演というのも作品に彩りを添えているのでは。


鈴木:メンバー全員が共演するというのは初めての経験で、どんな感じになるのか想像できなかったのですが、出来上がった作品を観て、それぞれの個性がすごく出ているなと感じました。青柳(翔/ヒロシ役)さんの演歌歌手もよかったし、町田(啓太/タケル役)くんも彼らしい清潔感のある役柄でしたね。


ーーでも、物語のなかではあまり3人が交わることはなかったですよね?


鈴木:そうなんです。でも逆に僕はこういう関係性は好きです。ずっと対峙するような役もやってみたいですけれど、この作品のような関わり方もいいですよね。


ーー皆さんの個性が役柄に反映されているということでしたが、配役は最初から決まっていたのですか?


鈴木:SABU監督と台本が出来上がる前に、30分ぐらいディスカッションさせていただく機会がありました。そのとき僕は「『海猿』みたいなエンターテインメント色の強い作品をやりたい」とか「明るく元気な作品がいい」みたいなことを話したんです。30分のうち25~6分は僕がしゃべっていたのですが、多分SABU監督は「こいつウルセー奴だな」と思ったんでしょうね。それでセリフをなくし、暗い役にしたのかもしれません(笑)。


ーー印象とは真逆の役をやらせてみたいと思ったのかもしれませんね。


鈴木:どうなんでしょうね。そういう勝負的な意味合いもあったのかもしれませんが……。でも台本を読んだときは、これまで全く経験したことがない役だったので嬉しかったんです。すごく良いチャレンジになったと思います。


ーーSABU監督からはどんな演出があったのですか?


鈴木:監督からは「アクションをするたびに、どんどん悲しくなっていって欲しい」と言われました。そこは意識しました。


■「最近はヤンキーとか不良ばっかり(笑)」


ーー今回、こうした役を演じてみて、どんな欲が出ましたか? SABU監督にも話していたようですが、以前は『海猿』のような“正義のヒーロー”的な役をやりたいと話していましたが。


鈴木:最近は見事にヤンキーとか不良ばっかりですよね(笑)。『今日から俺は!!』(日本テレビ系)も『PRINCE OF LEGEND』も『HiGH&LOW』も……。そもそもデビュー作も『ろくでなしBLUES』(日本テレビ系)ですからね(笑)。でもどの作品も楽しいですし、あまりこだわらずに、いろいろな役をやっていきたいです。


ーーヤンキー役が多いということですが『あなたのことはそれほど』や『今からあなたを脅迫します』(日本テレビ系)など、幅広い役柄にも挑戦されていますよね。


鈴木:あまり役柄の幅については、自分では意識していないのですが、まだまだだなと思うことは多いです。撮影して、作品が出来上がって、PRして……の繰り返しですが、まだ自分の出演している作品を観ると「ああすればよかった」という反省点が多いです。


ーー成長したなと感じる部分はないのですか?


鈴木:どうなんだろう。でもアクションに関しては、たくさんやらせてもらって、今回が一番よかったなという思いはあります。体を動かすことが好きなので、この分野は突き詰めていきたいです。


■「割と思い切った性格です」


ーーここ1~2年の充実ぶりはすごいですね? 映画の舞台挨拶などでもファンの歓声がすごく大きいです。


鈴木:多くの人に観ていただけるのは嬉しいですが、あまり実感はないです。もともと周囲の反響はあまり気にしていないんです。でも以前『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS系)に出演させていただいたとき、結構嫌な奴を演じたのですが、あるときバスに乗っていたら、外からおじさんがやってきて「『ルーズヴェルト・ゲーム』で嫌な奴やっているよね。来週超楽しみしているからな」って声を掛けてくれたんです。年上の男性が、わざわざバスにまで乗ってくるなんてすごいなと思いました。


ーー街中で声を掛けられるのは平気ですか?


鈴木:まったく大丈夫です。特に嫌な役柄をやっているときって、普通にしているだけでいい人に見られるのはありがたいですね(笑)。


ーー今年26歳になりましたが、20代後半に向けてなにか野望はありますか?


鈴木:割と思い切った性格なので、やらないならやらない、やるならとことんやるというタイプなんです。例えばアクションは、性に合うので徹底的にやりたいです。


ーーSABU監督は海外でも非常に高い評価を受けている監督ですが、鈴木さんは海外進出に興味はありますか?


鈴木:以前ロサンゼルスに行ったとき、海外の人ってもっと大きいと思ったら、僕も結構デカイことに気づいて(笑)。体格では負けていないと思うので、海外のアクション作品には出演してみたいです。今回のようにセリフなしで、メチャクチャ暴れるような作品はやってみたいです!


(磯部正和)