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夫の不倫発覚、「慰謝料請求」までの妻の闘い…「時効」は「何を」知った時から?

2018年11月25日 10:12  弁護士ドットコム

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慰謝料請求には、時効があります。夫の不倫相手に慰謝料請求するけれど、時効は「不倫していることを知った時」「加害者(不倫相手)を知った時」どっちなの? そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。


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相談者によれば、ボイスレコーダーに残された音声から夫の不倫の事実を知ります。しかし相手の名前はわかりません。そこで、夫と不倫相手を追跡。ところが「ホテルから出た所に居合わせたのですが、旦那が相手を逃して」しまいました。その後も手を尽くし、半月後にようやく相手の名前と職場を知ることができたそうです。


法律では、慰謝料の原因となる事実を「知ったとき」から時効は進行するとされています。では、この女性の場合、時効の起算点は「ボイスレコーダーで不倫の事実を知ったとき」「ホテルから出てくるところに居合わせたとき」「不倫相手の名前と職場を知ったとき」、どの時点になるのでしょうか。染川智子弁護士に聞きました。


●連絡先と名前がわかって初めて、慰謝料請求ができる

ーー最初に女性は、ボイスレコーダーで不倫の事実を知ったそうです


「この時点では、不倫相手の顔も名前も分からない状況です。誰に、どのような請求をしていいのか分かりません。このような場合にまで時効が進行するとすれば、不倫をした人は得をしますし、不倫された人は損をします。これでは、理不尽ですね。そのため、まだ時効は進行していないと言えます」


ーーその次の段階で、ホテルから出たところに居合わせています。ここではどうでしょうか


「不倫相手の顔も分かりますし、名前や住所を確認することができたかもしれません。ただ、実際は逃げられ、わからないままです。この時点で『知った』となってしまうと、法律はどちらの味方をしているのかわかりませんので、時効は進行しないでしょう」


ーーでは、最終的に「不倫相手の名前と職場を知ったとき」が「知ったとき」。つまり、この時点から、時効は進行すると考えられますか


「そう考えることができます。不倫相手の名前と職場を知ったことで、不倫相手の職場宛に郵便物を送付して、慰謝料を請求することができるようになりました。この場合は、もはや時効の進行を認めることができるように思えます(裁判所も自宅住所がわからないなど一定の条件の下に勤務先への書類の送達を認めています)。


ただ、職場に慰謝料請求の郵便物を送付することはプライバシー(名誉毀損)の問題もありますので、親展扱いにするなど十分な配慮が必要です」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
染川 智子(そめかわ・さとこ)弁護士
あわざ総合法律事務所(大阪弁護士会)弁護士。
家族にかかわる問題(離婚・相続・少年事件など)を多く取扱う。わかりやすい気さくな説明を心がけ、より満足感の高い解決に重点を置く。駅徒歩0分・カフェスタイルで、男女問わず気軽に利用できる雰囲気を大切にしている。
事務所名:あわざ総合法律事務所
事務所URL:http://awaza-law.jp/