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上司にも部下にも読ませたい『アンガーマネジメント・管理職の教科書』 怒りを上手にコントロールするには?

2018年11月25日 09:51  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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最近、日本人は怒りやすくなっているように感じます。救急隊員が飲み物を買っているといって怒り、園児の声がうるさいと怒り、上司が無能だから部下が苦労するとか、店員のサービスが悪すぎると言って怒ります。

今回紹介する『アンガーマネジメント・管理職の教科書』(総合科学出版)では、怒りをコントロールしてビジネスを成功に導く「アンガーマネジメント」 の基本的な考え方が分かります。管理職のみならず、怒りが収まらない人々があふれている今だからこそ、おすすめしたい一冊です。(文:篠原みつき)

ダイバーシティ化が進んでいるのに「これまで同様察することが求められる」職場


著者の川嵜昌子(かわさきまさこ)さんは、一部上場の出版・経営コンサルティング会社で経営者向け雑誌やウェブマガジンの編集長などを26年間勤め、現在は日本アンガーマネジメント協会認定のコンサルタントとして独立、研修や講演会を行っています。

アンガーマネジメントは、アメリカで生まれた、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングです。 「怒ってはいけない」のではなく、その目的は「上手に怒る、怒る必要のないことには怒らないようになる」ことだとしています。本書には

「『上手に怒る』というのは、人を傷つけず、自分を責めず、物を壊さず、怒っていることを表現することです」

とありますが、最近は行き過ぎたクレームやパワハラなどが問題となり、日本人が上手に怒れていないようです。

そもそも日本人は、同じ言語・共通の知識や体験・価値観や習慣のもと「空気を読む」ことをよしとする文化があります。これは、アメリカの文化人類学者エドワード・T・ホールが唱える「ハイ・コンテクスト文化」だといいます。

しかし、現在は職場ひとつとっても正社員と非正規、中高年と若者の意識差や外国人材の流入も著しく、「普通はこう」などと一つの価値観の押し付けはできない時代です。

それにも関わらず、「これまでと同様察することが求められ、とくに上の立場の人は下の立場の人に、何も言わなくても汲み取って動くことを求める傾向があります」と書かれた箇所に、とても納得しました。時代とともに、「空気を読む」日本人特有のイライラが募っているようです。

あなたの「べき」は、他人にとっては「べき」じゃない

そうした中、覚えておきたいことは、「『べき』が守られないと腹が立つ」という怒りの構造です。

人は、自分が大切にしている「こうあるべき」「こうすべき」という価値観を、誰かが「やらない、守らない、無視した」と思ったとき、ネガティブな感情が沸き上がり怒りにつながると、解説しています。そもそも「べき」は、人によって違うので、そこで対立しても意味がありません。

本書が薦める「イラッとしたときの3つのポイント」は、以下の3つです。

1 衝動のコントロール→カッとなった時に最悪の事態になることを防ぎます。
2 思考のコントロール→少し落ち着いたら、許容可能かどうか問います。
3 行動のコントロール→2で、許容できない範囲の場合行動を決めます。

簡単に言うと、カッとなったら6秒待つ、 許容範囲を三重丸(三段階)で考え、許容出来ない場合は、「重要か、重要でないか」と「変えられるか、変えられないか」によって行動を決めるのです。

例えば、上司に怒りを感じたとき、重要でないことなら考えないようにして、思考から切り離す。重要なことなら、相手と自分の「べき」が違うことを念頭に、上司に必要なことを伝えてすり合わせする必要があります。上司に限らず、相手と話し合うときは、「お前が悪い」ではなく「私はこう思った」と伝えることが大切だといいます。

ここでは、精神科医で心理学者のエリック・バーンの、

「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」

という言葉が紹介されていました。つまり自分が直接コントロールできることに集中した方が、自分のエネルギーと時間を有効的に使うことができるというわけです。

また、本書は5000社以上の経営者を取材・コンサルティングした著者の豊富な経験から、職場でありがちな悩みをQ&Aで数多く示しています。「思いつきで仕事を振ってくる役員」「経験もないのに偉そうにしている社長の息子」、「部下が指示待ち、受け身で腹が立つ」など、怒りの数々に共感することも多いでしょう。

日本はこれから、外国人材を受け入れ、格差社会へ進むと言われています。自分の「普通」は他の人にとって「普通じゃない」ことを考え直し、感情をコントロール必要があります。

本書は、これまで何かにつけて怒りを感じていた人に、新たな気づきと心の落ち着きをもたらしてくれるはず。いわば入門編に近いため、ビジネスパーソンのみならず、学生や主婦、定年を迎えて地域活動に参加する方にも、おすすめしたい一冊です。