11月19日に金融商品取引法違反の疑いで逮捕され、現在、東京拘置所に勾留されているカルロス・ゴーン容疑者。すでに日産自動車は11月22日に臨時取締役会を開き、逮捕されたゴーン会長の会長職および代表取締役の職を解くことを全会一致で決議した。
ゴーン容疑者は、フランスのルノーの最高経営責任者(CEO)も務めており、ルノーの大株主であるフランス政府がゴーン容疑者の留任を決断し、『体制継続』を掲げている。しかし、企業のトップであるゴーン容疑者の逮捕は、F1に参戦しているルノーにとって、他人事ではない。
アブダビGPでこの件を尋ねられたルノーのシリル・アビテブール(マネジングディレクター)は「現時点で、F1活動に影響が出るという情報はもらっていない」と、ゴーン容疑者の逮捕がルノーのF1活動に直接の影響はないと語り、こう続けた。
「ルノーがワークスとしてF1に復帰するにあたってはゴーンの存在があったことは否定しないが、F1復帰は単に彼の独断で決定したものではなく、取締役会で討論されたうえで会社として決定した。またルノーはエンジン供給も含め、40年以上にわたりF1に参戦している。私たちは2021年までの6年計画の途中にあり、その計画に沿って、粛々と実行していくだけだ」
とはいえ、あるレース関係者は「ゴーン逮捕の影響が出るのは、これからだろう」と語り、こう続ける。
■2015年の『フォルクスワーゲン・グループによる排ガス規制逃れ事件』ではアウディが世界耐久を撤退
「ルノーが恐れていることは、ゴーンの逮捕そのものではなく、ゴーンによって築いて来た日産との関係になんらかの変化が起きることだ。なぜなら、日産からの配当はルノーの重要な資金源だからだ。だから、いまは問題がなくても、今後両者の関係に変化が起きた場合、いままで同じようにF1活動が続けられるかどうかは疑問だ」
近年の自動車業界の不祥事としては、2015年9月に発覚した『フォルクスワーゲン・グループによる排ガス規制逃れ事件』がある。
フォルクスワーゲン・グループに属するアウディはこの事件の翌年も世界耐久選手権に参戦し続けたが、2016年シーズンの終盤、突然LMP1プロジェクトからの撤退を発表した。20年に渡って耐久レースを戦い続けてきたアウディの撤退は、チーム関係者にとっても寝耳に水の決定だった。
もちろん、今回の事件はまだ捜査中であり、ゴーン容疑者にかけられた嫌疑の真偽はこれから明らかになる。ただし、たとえゴーン容疑者が無実となったとしても、今回の逮捕劇が日本側(日産)主導で起きたことを考えると、日産とルノーの関係がこれまでと同様に続くとは考えにくい。
2021年までの6カ年計画は今年で前半の3年間が終了した。残る3年、ルノーの計画が予定通り目標を達成できるかどうか。しかし、それを決めるのは、ルノーF1のスタッフではない。