2018年11月22日 09:32 弁護士ドットコム
市の名前を変えると、どれくらいの税金が使われるのかーー。市の名称はさまざまな標識や看板などに記され、企業も市名を登記しており、市名変更は手間だけでなく費用負担も大きそうだ。近畿地方の人口約4万2000人の市を舞台に今年、こうした議論が沸き起こった。市側は「ふるさと納税がありがたかった」という。いったい、どういうことなのか。
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この自治体は兵庫県篠山(ささやま)市。「丹波篠山黒豆」や「丹波栗」などを特産品とし、兵庫県中東部に位置する。11月18日の住民投票を経て、2019年5月にも「丹波篠山(たんばささやま)市」へと市名変更することになった。必要な議会手続きはこれからだ。
もともと、地域は「丹波篠山」として親しまれてきたが、旧篠山町など周辺4町の合併で「篠山市」が1999年に誕生。2004年には、隣に6町合併で「丹波市」が新たに生まれた。このため、「丹波篠山がどこを指すのか曖昧」「観光客が間違えて丹波市を訪問している」などの不満が出るようになったという。
そこで、酒井隆明・篠山市長が丹波市長に直接、丹波市の特産品や観光などの紹介をする際には誤解を与えないよう「丹波」ではなく「丹波市」と表示してほしいと依頼し、報道機関に対しても同様の依頼をすることもあった。(2013年11月11日の篠山市長日記による)
篠山市創造都市課によると、2017年度に市名変更に伴う経済波及効果を調べるための調査委託費で400万円を計上。今回の住民投票は、概算で2600万円の費用になった。また、今後の住所表示変更や看板などの回収費用で6550万円の支出を見込んでいるという。
これらを単純に合算すれば、9550万円となる。さらに、市内の事業者が登記情報変更などをする際に、一定の割合で市が負担することを検討しているという。不確定な部分はあるものの、約1億円前後の税金による負担が発生すると言えそうだ。
一方、篠山市に対しては2017年、「市の名前を丹波篠山市に変更してほしい」という依頼とともに、匿名で1億円の寄付がふるさと納税の制度を使って寄せられている。市では今後、市名変更に伴う費用にあてる方針だ。
このため、追加で多額の費用が見込まれない限り、税金からの実質的な負担はほとんどないものとみられる。創造都市課の担当者は「ふるさと納税による1億円の寄付が本当にありがたかった」と取材に話している。
(弁護士ドットコムニュース)