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欅坂46、“21人の絆”という呪縛から解放? けやき坂とのコラボから見えたグループの未来図

2018年11月22日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 欅坂46(以下、漢字欅)とけやき坂46(以下、ひらがなけやき)が、11月15日に生放送された『ベストヒット歌謡祭2018』(読売テレビ・日本テレビ系)でテレビ初コラボを果たした。直前まで情報がシークレットにされていた今回のコラボでは、漢字欅4人の穴をひらがなけやき4人が埋めるという構図で「アンビバレント」を披露。見事なパフォーマンスを見せ、漢字欅とひらがなけやきの未来図や、本来ならこうなっていたかも? といった、様々な可能性を感じさせる実験的で貴重なコラボとなった印象だ。


(関連:欅坂46×けやき坂46、『ベストヒット歌謡祭』コラボへの期待 これまでの関係性を改めておさらい


 『ベストヒット歌謡祭2018』当日、初の坂道合同の舞台である『ザンビ』のゲネプロが東京にて行われていたため、漢字欅のキャプテン・菅井友香、副キャプテン・守屋茜、「アンビバレント」のフロントを務める小林由依と土生瑞穂といった要となる4名が欠席せざるを得ない状況になっていた。そのため、代役としてひらがなけやきから佐々木久美、高本彩花、東村芽依、渡邉美穂の4人が出演。


 本番では、平手友梨奈をセンターに『ザンビ』組の空いたポジションに同じ衣装のひらがなけやきの4人が入り、「アンビバレント」をパフォーマンス。“禁断のコラボ”と称されながらも、やはりひらがなけやきはヘルプ的な役割だったが、4人は気合いの入ったキレのあるダンスで、ひらがなけやき代表としてのプライドを見せつつ、フロントという目立つポジションでも漢字欅が築き上げてきた世界観を壊さない活躍ぶりを見せた。あくまでコラボという同等を意味する言葉が使われたことで、ひらがなけやきが築いてきたブランドも保たれたように思う。


 同番組の裏配信番組『ベストヒット歌謡祭 トレンディエンジェルの裏配信だぞ!』で、佐々木久美は「(練習を)めちゃめちゃしました。私たちひらがなけやきと漢字さんは全然テイストが違って、すごく難しくて速くて細かいダンスをやられているので。それを一から振り入れをしてやったんですけど、難しかったです」とコメント。後日『ゆうがたパラダイス』(NHK-FM)で舞台裏を語った石森虹花と小池美波は、一緒に合わせたのは2時間ぐらいだけだったと振り返り、ひらがなけやきが難しい「アンビバレント」を短い時間で完成させてきたことに驚いたと明かしている。石森虹花はひらがなけやきが「1日ちょっとでクオリティをボーンって持ってきて」と語り、小池美波と共に「私たちもいい刺激もらって、パフォーマンスは断トツによかったと思います」とひらがなけやきをベタ褒めしていた。


 以前放送された『開幕直前Bリーグ!けやき坂46のプロバスケ大研究』(NHK BS1)で、佐々木久美と東村芽依と松田好花はチアリーダーと短期間でパフォーマンスを完成させる企画に挑戦し、見事にキレのあるチアダンスを披露。彼女たちのポテンシャルの高さに周囲を驚かせていたが、欠員が出たから誰もが代替できるわけではなく、このレベルだからこそできるのだ。そこが重要である。


 また、デビューの頃から漢字欅好きを公言している高本彩花は、今回のコラボについてブログで「ずっと傍で漢字さんの色んな活躍を見ていて だから、ひらがながそう簡単に入っちゃいけないっていうのはずっと思っていたので」と漢字欅に対するリスペクトを込めた思いを綴った。一方で2期生から唯一抜擢された渡邉美穂は「表現力はもちろん、ダンスのフリを徹底的に揃える意識など尊敬するところばかりでした」と漢字欅のメンバーが裏で努力していることを体感。「今回学んだことをしっかりひらがなけやきに持って帰って共有したい」(引用:渡邉美穂オフィシャルブログ)と続けた。改めて漢字欅のダンスのクオリティの高さを実感しただけでなく、舞台裏での交流がお互いを刺激し合うなど、見えないところでも大変意義のあるコラボだったことがわかる。


 今の漢字欅に対するひらがなけやきは、アンダーではなく妹的な別のグループとして確立しているが、本来なら今回のコラボのように、漢字欅の空いたポジションにヘルプとして穴を埋めながら昇格していくというのが、従来の理想系であった。ただ、漢字欅は21人の絆を大事にしたことで、選抜制アイドルグループにはないエキセントリックな個性が出来上がり、ひらがなけやきもまたアンダーではなく別グループの道を選んだことで、今の人気を確立した事実がある。


 今回のコラボで見えてきたのは、漢字欅から3人が卒業となったことで、必然的に21人の絆という呪縛から解放され、1期生の鎖国状態を終えようとしていることと、漢字欅メンバーの誰かが止むを得ず別の仕事が入ったとしても、パフォーマンスが可能だということ。今回のコラボは、彼女たちが今まで守り通してきたアイデンティティを崩すことでもあった。視聴者が思っている以上に“禁断のコラボ”だったのではないだろうか。ただその中から生まれた、平手友梨奈が後輩を引き連れて歌うという今までにない構図は実にかっこよく、その横でキレキレに踊る鈴本美愉の職人ぶりもいつも以上に逞しく見えた。パフォーマーとしての存在感の大きさを改めて知らしめ、これから後輩が入ってくるであろう漢字欅の未来図が見えたように思う。


 3年連続で『NHK紅白歌合戦』への出場が決定し、「アンビバレント」が『第60回 輝く!日本レコード大賞』(TBS系)で優秀作品賞を受賞するなど、平成最後の年末も大いなる活躍が期待される漢字欅。卒業続きで漂う、寂しい雰囲気を払拭する意味でも、年末の音楽特番のスタートとも言える『ベストヒット歌謡祭』でのコラボは、グループにとって良いリフレッシュになったのではないだろうか。(文=本 手)