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30号車TOYOTA PRIUS apr GT 2018スーパーGT第8戦もてぎ レースレポート

2018年11月21日 17:41  AUTOSPORT web

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30号車TOYOTA PRIUS apr GT
2018 AUTOBACS SUPER GT ROUND 8
ツインリンクもてぎ

開催地:ツインリンクもてぎ(栃木県)/4.801km
11月10日(予選)天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:21,000人
11月11日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:37,000人

ミッドシッププリウス、RV8Kエンジンのラストレース
最初から最後までマシンにトラブルなく、しっかり完走し有終の美を飾る

 全8戦で争われるスーパーGTシリーズは、ツインリンクもてぎを舞台に、今シーズン最後のレースとなる『MOTEGI GT 250km RACE GRANDFINAL』を11月10日~11日に開催した。今シーズンもaprは2台のトヨタ・プリウスZVW51を走らせ、#30 TOYOTA PRIUS apr GTを第6戦から永井宏明選手、そして織戸学選手のふたりに託している。
 
 前回のオートポリスでは予選こそ19番手に留まったものの、決勝レース前のウォームアップでは好タイムを連発。コンディションとマシン、タイヤのマッチングも完璧だっただけに、激しい追い上げが期待されていたが、いきなり不運に見舞われる。バトル中のホイール同士の接触により、バルブが飛んでしまったため、予定外のピットストップを強いられたのだ。その後もコースアウトを喫しはしたが、マシンそのものにはトラブルは一切生じず、完走を果たして得られたデータは極めて多かった。
 
 今回のレースはほぼ全車がノーハンデとあって、これまでのレースのように軽さが活かされるわけではないが、真の実力が試される一戦とあって、それぞれリスク承知の勝負に討って出るはずだ。まして普段より50km短い、250kmで争われるだけに。その流れについて行かぬわけにはいくまい。また、レギュレーションの変更により、現在のマシン、エンジンにとって、これがラストランにもなる。とにかく悔いの残さぬレースをして、最後をしっかり締める。これが何よりもの目標となった。
 
公式練習 11月10日(土)8:50~10:25
 前日に降った雨が路面を濡らしたまま始まった公式練習。しかし、すでにやんでいただけでなく、やがて陽も差すようになったことから、最初のうちこそウエットタイヤでの走行だったが、やがてドライタイヤでも走れる状況に転じ、最後は予選さながらのスピードで走っていた車両もあった。
 
 この後、もう雨が降らないことは天気予報でも明らかになっていただけに、路面が濡れたままの前半はピットで待機という手もあったが、今後に向けたスキルの向上、そしてマイレージ獲得のため、永井選手にはウエットコンディションでも積極的に走ってもらうこととなった。これが大きな収穫となり、コンディションの向上に合わせて永井選手はタイムを短縮し続けていき、やがてドライタイヤを入れられるようになってからも、走りのアジャストに優れるようになっていったからだ。最終的に永井選手は1分50秒475を記すこととなった。
 
 そして開始から1時間20分を経過したところから、いよいよ織戸選手の走行が開始。GT300専有走行に移ってから、一度だけピットに戻ってセットを詰めた後、最後の計測で1分49秒479をマークする。その後に行われたサーキットサファリでも織戸選手は周回を重ね、バスが離れた後のタイミングで1分49秒台を連発。公式練習を上回る、1分49秒439で本番前のセッションを締めくくることとなった。

公式予選Q1 11月10日(土)14:00~14:15
 公式練習の終了から、わずか4時間足らずですっかり路面は乾いて、公式予選はまったくアタックに支障のない状態となっていた。気温は22度、路面温度は26度と、公式練習とほとんど変わりのない温度とあって、タイヤに対してはセットの微調整だけで臨むこととなった。今回もQ1担当は織戸選手。
 
 計測開始と同時にピットを離れ、アウトラップにもう2周をウォームアップに充てたところで、いよいよアタックを開始する。まずは1分48秒560でスタートし、次の周には1分47秒697にまで短縮を果たす。
 
 さらに短縮を狙った織戸選手ではあったが、その最中に行く手を阻まれたこともあって、途中でペースを落とすことに。タイヤの温存も兼ねて、チェッカーを待たずにピットに戻ってきた。惜しくもあとコンマ04秒(!)が足りず、Q1突破できずに18番手となってしまったが、織戸選手が伝える#30TOYOTA PRIUS apr GTのフィーリングは決して悪くない。決勝での追い上げに期待がかかることとなった。
 
永井宏明選手
「0.04秒でQ1に届かなかったが、マシンの速さは完全に戻ってきた。後半戦になって、ヨコハマタイヤとPRIUSのマッチングが非常に良くなり、乗りやすくもなりました。決勝のペースには自信があるので明日が楽しみです」

織戸学選手
「悔しいですね、14番手まで0.04秒とすごい僅差でした。今のパッケージは、まだまだ上を狙えたはずなので、明日は悔いなきレースをして応援くださるみなさまの為にも、シングルフィニッシュを果たしたいです」

金曽裕人監督
「もう少しでQ1を通過できただけに、残念と言えば残念ですが、今のGT300はそれだけ実力伯仲。BoPの関係で、一発を出せるクルマではないから、まぁこんなところといったら、こんなところでしょうか。でも、クルマのバランスはすごくいいので、決勝は乞うご期待といったところです」

決勝レース(53周)11月11日(日)13:50~
 決勝レースのスタート進行の開始と同時に行われた、20分間のウォームアップには、今回もスタートを担当する永井選手が最初に、#30TOYOTA PRIUS apr GTに乗り込むこととなった。今回はオーバルコース上に仮設スタンドが設けられ、いつになく観客が近い。まるで興奮が直に伝わってくるようで、それがドライバーのテンションを大いに高めることともなった。
 
 永井選手は公式練習のように、チェック走行を行ってすぐピットに戻り、微調整を行ってから本格的な走行を開始した。これから挑む決勝の感触を確かめるかのように、徐々にタイムを上げていって、1分51秒455にまで達したところでピットイン。ドライバー交代の練習も行って、そこからは織戸選手の走行となる。
 
 織戸選手もまた1分50秒427にまで短縮を果たしたところで、チェッカーが振られることとなった。#30 TOYOTA PRIUS apr GTがグリッドに並べられた時の気温は19度とやや低めながら、日差しが強めであったことから路面温度は30度にまで高まっていた。とはいえ、タイヤに対しては想定の温度域だ。

 スタートはまずまず。しかし、このストップ&ゴーの繰り返されるレイアウトでは、エンジンパフォーマンスに優れるFIA-GT3勢に有利なのは間違いない。スタートからしばらく集団がばらけることなく、まさに団子状態になっていたことが災いし、2周目までに6ポジション落としてしまったのは致し方なかろう。

 だが、展開が落ち着いてくると、永井選手は前後との間隔をしっかり保つようになり、コンスタントに周回を重ねるようになっていく。5周目には先行する車両の脱落でひとつ、そして6周目と9周目には自力で1台ずつかわして順位を上げる。
 
 しかしながら、そこから先は前が詰まるようになり、ペースを上げたくても上げらない状態がしばらく続いたことから、永井選手を予定より早めにピットに戻すよう作戦を変更。そして、17周目に織戸選手にスイッチする。だが、その際にひやりとする光景が……。
 
 タイヤは無交換ではあったが、コースに戻ってからの織戸選手のペースも良く、また先ほどまで行く手を阻まれていた車両の前に出られたことから作戦は成功だと言えた。また、28周目にはオーバーテイクにも成功と、そこまでの流れはむしろいいぐらいだった。
 
 だが、31周目に黒旗がD30のボードを添えられ、提示されてしまう。先のピットストップで、織戸選手へのサインミスが原因で、まだ給油中だったにも関わらず、クルマが動いたことに対するドライビングスルーペナルティの指示だった……。やむなく32周目にピットに戻ったものの、織戸選手は未だ戦闘モード。39周目には1台を抜いて、さらに前を行く車両を追いかけ続けたものの、あと一歩のところでチェッカーが。
 
 結果としては21位だったものの、トップからは1周遅れに留めたことで、貴重なチームランキングポイント3点を獲得することにも成功した。もちろんランキング25位といっても納得のいくものではない。だが、今回はマシントラブルもなく速さを見せながら完走を果たせたことの意義は大きい。
 
 マシンやエンジンのラストランを飾れなかったのは残念だが、チーム全体が納得のエンディングとなったことを最後にお伝えしたい。

永井宏明選手
「マシンバランスを決勝前に少しリアに振りすぎてアンダーステアが強くなってしまったが、ヨコハマタイヤのフィーリングも良くペースも保てた。だが、GT3勢のパワーには完敗で立ち上がりの加速、最高速で簡単に抜かれてしまう辛さがありました」

「このPRIUSとレースは最後になりましたが、たくさんの事を学ぶことができましたし、経験も積めました。来年からは、我々の意見がいっぱい詰まったまったく新しいマシンでの参戦となります。自分もオフシーズンでさらにドライビングを強化し、2019年開幕から全力で挑みますので、応援くださるみなさまと喜びをともにしたいと思います。今シーズン、ありがとうございました」

織戸学選手
「決勝前に、欲を出してセットを少し変更したのがアンダーステア傾向になってしまったが、こんなにチョットした変更にも確実にマシンは反応するようになりました。でもマシンバランスは良くてもコース上でGT3とバトルでは最高速不足から本当に抜けなくて辛かったです」

「どんどんPRIUSの事が分かり、やっとシンクロし始めたのですが、これがラストランとは残念でなりません。最後に、シーズン途中から、チームに迎え入れていただき、カローラ三重の皆さま、チーム関係者のみなさま、ヨコハマタイヤの皆さまに心から感謝しております」

「次の機会があれば、必ずもっと速くて乗りやすくて戦いに強いマシンを仕上げて、自分を必要と判断下さったみなさまに恩返しをしたいと思います」

金曽裕人監督
「クルマは本当に速くなりましたし、レース中のペースも悪くありませんでした。ただ、最高速ではまわりを囲んだFIA-GT3勢にかなり引けを取ってしまうので、スタートからしばらくしてGT3勢の数台に飲み込まれたのは仕方がない。織戸選手はタイヤ無交換で、しかもロングスティントでありながら、最後まで速いいペースで走ってくれたのはさすがです」

「それだけにペナルティが申し訳ない。あれはピット側のサインミス。織戸選手とのコミュニケーションが悪く、まだ給油中だったのに『出ていいよ』と判断される対応があったので、動いてしまったんです。そういうミスはあったんですが、流れが良くなっているのは事実です」

「トラブルもなくなりましたし。あと永井選手のレース精度も高くなってきました。来年は最初からしっかりと体制など、いろんなことをリセットして、新車に乞うご期待といったところです。今シーズン、不甲斐ない結果しか出せず申し訳ございませんでした。必ず、ご期待に応えられる成長過程のパッケージですので、多くの関係者の皆さま、応援くださるファンのみなさま、来年もお付き合いくださいませ。必ずを具現化しますので」