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高橋一生の“秘密”が徐々に明らかに 視聴者に解釈を委ねる『僕らは奇跡でできている』の魅力

2018年11月21日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 母との不和で家を出てしまった虹一(川口和空)は、一輝(高橋一生)と森に行くことでのびのびと過ごし、心に整理をつけることができた。同じくして、母の涼子(松本若菜)も一輝の説得により、虹一との向き合い方を改める。一輝は自分の過去を話し、それを引き合いに出すことで虹一の生き方を尊重する姿勢を見せた。そのおかげで、虹一は勉強ができないのではなく、文字を読むと頭痛がする目の障害があることがわかり、虹一と母は和解することができた。 


【写真】第7話の一輝(高橋一生)と育実(榮倉奈々)


 火曜ドラマ『僕らは奇跡でできている』(カンテレ・フジテレビ系)の第7話では一輝の過去が明かされ意外な一面を覗かせる。それは、一輝がかつては”ウサギ”側の人間だったことがあるということだ。育実(榮倉奈々)はそんな一輝の過去を聞いて驚いたようにハッとする。


 ウサギだったのは育実だけではなかったのだ。一輝の話を聞いていると、ウサギとカメは案外誰もが両方の素質を心の中に併せ持つもののようにも感じた。過去の一輝にそんな一面があり、乗り越えて今があるように、それぞれが生きていく中で誰かのペースに飲まれたり、自分のペースに巻き込んでしまうものなのではないだろうか。そのペースというものは、自然と巻き込む側にも巻き込まれる側にもなり得る不安定なものなのだ。


 第7話では、虹一が母のペースと合わず、心にわだかまりを抱え、母も虹一の成長のペースに歩幅を合わせる余裕がなかったことが伺える。一輝のおかげで、虹一の良いところをよく見て、苦手なところはどうして苦手なのかに目を向けることができた。母は虹一に「勉強から逃げるな」と諭す。しかし実際は、母が虹一の抱える病気に気づかず、大切なことを見落としたまま、“ダメな子”だと決めつけることで問題が起きてしまった。こういった物事の本質を常に客観的に捉えることで問題を解決していく本作は、生きにくい人々に一筋の光を与える作品なのではないだろうか。


 一輝は、育実の特技を100個挙げられると発言する。すると、育実は、一輝の挙げている内容は「誰でもできること」だと言うのだ。しかし一輝は「誰でもできることができたらすごくないのか」と返し、育実の日々の積み重ねを褒める。現代のように何かに追われながら生きることの多い社会で、当たり前のことを誰かから認めてもらうことが、どれほど嬉しいものなのか。


 第7話を観た視聴者は、自分のことでなくても褒められている育実を見て、少し元気を取り戻した人も多かったのではないだろうか。このシーンを「ドラマだから」で終わらせないでほしい。視聴者の全員が、今自分の直面している全てのことに、努力している自分を褒めてあげてほしいと感じた。そうすることが、この作品が一番報われる形であり、一番魅力を発揮する瞬間だろう。実は一輝の言葉は、難しいテクニックのいらないアドバイスばかりだ。その日の夜から、自分1人の考え方を変えるだけで、昨日より生きることが楽しくなる。この作品はそんな気持ちにさせてくれるのだ。多くの視聴者が一輝の言葉に救われて笑顔になれたらいいと感じる。


 そんな、生きる楽しみを与えてくれる『僕らは奇跡でできている』。次回は一輝の出生の秘密が明らかになる。第7話の最後は、一輝は住み込みの家政婦である妙子(戸田恵子)の実子ではないかという衝撃の一言が飛び出す。次回の展開に注目したい。


(Nana Numoto)