2018年11月19日 21:42 弁護士ドットコム
新聞やテレビ、出版などの労働者でつくる「日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)」は11月19日、根本匠厚労大臣らに対し、セクハラやパワハラなど、ハラスメントを禁止する包括的な法整備を求め、要請書を提出した。
【関連記事:ど田舎ドライブ中、ホテル拒否の女性を「置き去り」 非道男への罰を考える 】
パワハラ対策をめぐって開かれている、労働政策審議会(労政審)の分科会に関連したもの。労政審の委員にも送付された。
国際労働機関(ILO)は、2019年に「ハラスメント禁止条約」の制定を目指している。MICは、日本でもあらゆるハラスメントに対応すべきと主張している。
今年4月に明るみに出た財務省の事務次官によるセクハラ問題では、テレビ局の女性記者が被害者になった。以来、さまざまな形で、特にメディアで働く女性がセクハラに悩まされてきたことが報道されている。
MICがメディアで働く組合員らに向けて、今年7~8月に実施したWEBアンケートでも、回答した女性233人中、7割以上が社内外からのセクハラ被害を経験していたという。
セクハラについては、男女雇用機会均等法で、経営側に防止措置が義務付けられている(措置義務)。しかし、未だに泣き寝入りする被害者は多く、背景として、個人からのセクハラを直接禁じる法律がないことなどが指摘されている。
また、取材先や顧客など、本来は企業に対策が求められる、社外の第三者からのセクハラにも十分な対応ができているとは言い難い。
労政審の分科会は、パワハラについてもセクハラと同じように、企業側に措置義務を設ける方針で、年内にも取りまとめが行われる。
一方、MICの要請書はさらに踏み込み、ハラスメントを包括的に禁止する法律を求めている。セクハラとパワハラが同時に起こるなど、複合的な事案も多く、縦割りではない、総合的な対応が必要だからだ。
法律でハラスメントが人権侵害であることを明記するとともに、禁止行為の明文化やフリーランスの保護、被害者の救済体制の強化などを求めている。
労政審では、労働者側の委員が、MICが主張するように包括的なハラスメント対策を求めている。
しかし、企業側の反対が強い。労政審の前段階に当たる検討会では、パワハラについて議論を取りまとめたところ、労政審になって、労働側が対象を広げたことへの戸惑いもあるようだ。
また、中小企業の委員からは、パワハラの措置義務化についてすら、配置転換が困難など、対応の難しさが強調されていた。
同日、開かれた労政審では、厚労省の方針が示され、パワハラ行為自体を禁じる法制化は見送られた。法律に落とし込む技術的な難しさもある。
MICの議長で、新聞労連の中央執行委員長を務める南彰氏は同日、厚労省記者クラブでの会見で、「労働力不足が叫ばれる中、人材を大切にする観点から経営側にも認識を改めてもらいたい」とコメント。労政審に限らず、包括的な法律を求めていく考えも明かした。
(弁護士ドットコムニュース)