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新しい地図「新しい詩」と共にシェアされる世界 5分半のミュージカル体験楽しめる楽曲の魅力

2018年11月19日 09:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾が“クソ野郎★ALL STARS”として歌った「新しい詩」が、定額制音楽配信サービス『Amazon Music Unlimited』にて、この1年で最もシェアされた曲の1位に輝いた。3人が出演したオムニバス映画『クソ野郎と美しき世界 THE BASTARD AND THE BEAUTIFUL WORLD』で披露され、サウンドトラックに収録されたこの曲。ドラマチックなピアノの伴奏から、徐々にベースやドラム、人々の手拍子が重なっていく様は、まるでNAKAMAの輪が広がっていく様子そのもの。映画の公開当時に置かれた彼らのリアルな状況と重なって、初めて聞いたときの胸の高鳴りが忘れられない。


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 〈どうしようもないとこから/僕らは始まったんだ/どうしようもないとこから/抜け出そうと/もがいた〉。そんな歌い出しで始まる少々過激な歌詞は、彼らの言葉にできない何かを歌に乗せているようにも見えた。きっと、その何かとは“ゼロになる覚悟”だったに違いない。映画に出てくる登場人物たちも、みんな何かを失い、もがき、そして新たな道を模索していた。その苦悩も、その先に見える希望も、この歌が昇華していくのだ。人生はそれでも続く、歩き続けるのだ、と。


 ジャジーなサウンドと香取の伸びやかな歌声。ズンズンと香取が歩き進める姿が想像できる心地よいリズム。実際に、この曲を聞きながら街を歩いたときには、いつもよりつい歩幅が大きくなるのがわかる。三日月を見上げる歌詞につられて、空を見上げる。上を向くといよいよ「やるしかない!」そんな気持ちになってくる。前に、前にと、気持ちを推し進めてくれるのも、きっと歌う香取自身がそんな意気込みだったからだろう。


 そしてサビの〈世界のどこかにきっと仲間がいるから〉では、多くの人の声が重なってくる。手を差し伸べるように、背中を押すように。たとえゼロになったとしても、きっと味方となってくれる人と繋がることができるはず。それを夢見て進むんだ、という希望に続くのだ。それはまるで約5分半のミュージカル体験。自分の人生という物語の主人公であることを、思い出させてくれるような歌だ。


 実際に、3人はSNSという新たなツールを使って、世界中にいるファンと繋がることができた。以前より変わらず支えてくれた、たくさんのスタッフの存在も彼らを勇気づけたという。そんな多くのNAKAMAによる彼らを応援する気持ち、そして彼ら自身が持つ“歌の力”が、今回の “この1年で最もシェアされた曲”アワード1位に輝いた理由だろう。


 受賞コメントとして、Amazon Musicの公式ツイッターにメッセージ動画を寄せた3人。稲垣が「僕たちがSNSを始めてちょうど1年ぐらいになるんですけれども僕たちの楽曲が、みなさんの手によって友達やご家族にどんどん広がっていくのが、とても素敵でありがたいことだと思います」と語り、草なぎが「これからも僕たちの新しいチャレンジをたくさんのNAKAMAのみなさんに応援してもらえると嬉しいです」と続ける。


 こうしてネットで彼らの姿を見かけることも、すっかり違和感がなくなった。それほど、彼らが“今”を楽しんでいる証だろう。「ゼロなんかじゃなかった」。この1年を振り返り、3人がそう語ったのも印象的だ。もちろん、何かを手放す寂しさや悲しみは決してなかったことにはならない。けれど、その先にある新しい何かを手に入れる喜びを一つひとつ大切にしながら、笑っていこう。そんな前向きな姿勢も、「新しい詩」と共にシェアされる世界。3人とNAKAMAの手で描く新しい地図が、そうして広がりを見せていくことを、これからも期待している。(文=佐藤結衣)