トップへ

「キツイ部活」で忍耐力や根性が身につくのか 尾木ママ「何のための学校、何のために教師になったのか考え直すべき」

2018年11月18日 10:11  キャリコネニュース

キャリコネニュース

写真

全国の88%の中学生が入っているという「部活」ですが、教師の長時間労働や子どもの疲労など、多くの問題を抱えています。11月10日放送「ウワサの保護者会」(NHK Eテレ)は、「部活」がテーマ。教育評論家の尾木直樹さんを囲んでの座談会では、保護者からこんな本音が出ていました。(文:篠原みつき)

「苦労すればいい。突き詰めて頑張った時間が大人になってからの彼のこやしになるなら、今のうちにやってしまったほうがいい」
「私自身がそうだったんですけど、忍耐力や根性、大人になって持っていてよかったと思う力がついた。それを身につけるには、週3とかゆるい部活では力がつかないのでは」

教師の本音「半数はやりたくない」「顧問をやっている人が良い教師という幻想」

今どき根性論かと耳を疑いたくなりますが、一理あると思えるのもやっかいなところです。今年3月にスポーツ庁から公表されたガイドラインには、「週2回は休む」等が示され、部活に熱心な保護者にとっては練習時間が減るという懸念があるでしょう。

一方、現場の教師たちは悲鳴を上げています。顧問の教諭たちが覆面会議で語った本音は、「どちらかというとやりたくない。半分ぐらいはやりたくないだろう」とのこと。さらに、

「部活は持ちたくないと会議で言う人も出てきたが、管理職が止める。しかし一番は、他の先生との兼ね合い」
「文化部はベテランから決まっていく」
「結局若手がキツイ運動部を受け持つことになる」

など、辛い状況を訴えます。もちろんやりたい先生もいますが、他の先生がやっているという同調圧力は強いようです。

教師たちは、部活が過熱する原因として、「授業ではなかなか評価してもらえず、顧問をやっている人が良い教師という幻想がある。部の成績が学校のウリになる。子どもの笑顔を見ると、頼まれると断れない」などを挙げています。「子どもより保護者の要望。長いほどいいという子守りをさせられているような気持ちになる」と明かす先生もいました。

保護者からは「外部の人を呼んでくるのは難しいですか?」との質問も出ましたが、部活の実態に詳しい名古屋大学の内田良准教授は、「これまで先生のタダ働きでもっていたので、ようするに予算がないわけですよ。すごく課題が大きいんです」と答えました。人格形成まで求められる部活が、教師のボランティア頼みというわけです。

「部活動の範囲だけじゃなく、世の中にはいっぱい学びの場がある」

しかも、尾木ママが現役教師だった頃は、部活中にテストの採点などができましたが、いまはずっと見ていなければいけないそうです。ボランティアの範疇を越えた負担に、本当に適切な指導や対処ができるものか不安になります。

今年8月、いじめを苦に自殺した八王子市の中学2年生の女子生徒は、部活の先輩とのトラブルが発端となって不登校になりました。彼女は遺書の中で、顧問が部活を辞めさせてくれなかった辛さを訴え、「学校が始まるのがこわい」と綴り電車に飛び込みました。

「中高生は部活をやるのが当たり前、辛くても我慢するのが普通」という狭い考え方が彼女を追い詰めたとしたら、こんなに悲しいことはありません。

番組では、国とは別にガイドラインを作った静岡市の大里中学校を紹介していました。部活時間を減らす一方で、部活の無い日に公民館で様々なサークル活動を行なっているとのこと。校長先生は、

「決められた部活動の範囲だけじゃなく、世の中にはいっぱい学びの場があって、素晴らしい人がたくさんいて、そこで自分が何をすべきか決定し、自分で選んで行動するまでが、いま求められている教育の一番なんじゃないかと思います」

と説いており、納得しました。

筆者は部活大好き中学生だったので、決して部活を悪く言う気はありません。しかし、キツイ部活だけが人が育つ場ではない、ということは意識すべきだと思います。尾木ママは、「学校の本来の役割は何なのか、なんのために教師になったのか、問い直して」と、諭してくれていました。