F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回はF1第20戦ブラジルGP編だ。
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☆ ストフェル・バンドーン(マクラーレン)
いまここで“旧名門チーム“同士がテールエンド・バトル。マクラーレンとウイリアムズが中団『Bリーグ』のはるか後ろで『Cリーグ』争い。彼ら4人のなかで最上位フィニッシュ、3戦連続ミスなく走り切った。
☆ ケビン・マグヌッセン(ハース)
ブラジルGP決勝でマグヌッセンまでが同ラップ9位。チームはふたりのタイヤ戦略を分け、ソフトタイヤ41周(最長)→スーパーソフトタイヤ30周。それに応える2018年シーズン4度目のダブル入賞。散々だったメキシコGPの雪辱戦となった――。
☆☆ マーカス・エリクソン(ザウバー)
最後となるザウバー4年目のシーズンは今がベストの状態。ブラジルGP予選7位は自己最高だ。シャルル・ルクレールの走行データやセッティングなどをポジティブにとらえ、走りの糧にしている(2019年はインディ・シリーズに参戦、でもオーバルは要注意ですぞ)。
■予選で勝負強さを発揮したピエール・ガスリー
☆☆ ピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)
ブラジルGPの予選で勝負強い一面を見せた。セッティング方向がずれ気味になってもタイムを出しきる。予選Q2アタックがそうだった。ショートコースは100分の1秒レベルのせめぎあい、そこでミスするかしないかだ(レッドブル陣営が彼を評価するのもよく分かる)。
決勝はスーパーソフトでスタート、ミディアムでつなぐロング・スティントは厳しく最後は燃料もセーブ。今年後半で最もシビアなゲームだった。
☆☆ セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
フォーメーション・ラップ発進時に不可思議な出遅れ、「なにか問題か?」と思われた。パワーユニットのセンサーに不具合が出てしまい、スタート後もペースが上がらないままキミ・ライコネンと順位を入れ替え下がった。一矢報いようと奮闘した予選2位も空しく、レースでは戦えないマシン状況となり心が折れたか……。
☆☆☆ ロマン・グロージャン(ハース)
同じフェラーリPUなのにルクレールの直線の伸びは圧倒的、一度そのスリップストリームに入ったときにグロージャンはそう感じたはずだ。そこで予選ではセクター2でがんばり9番手。レースでもルクレールを追いかけて8位へ。追加点は得たもののルノーとのコンストラクターズポイントは24点差、最終戦でキャッチアップするのは困難に。ハースとしては5度目のダブル入賞がターゲットか。
☆☆☆ キミ・ライコネン(フェラーリ)
ブラジルGPの金曜からブリスター症状が露わになったフェラーリ、それをジェントルなアクセリングで工夫したキミ。タイムは伸びなくても“自己最速主義”で追及し、それがレースでも見てとれた。12回目表彰台でほぼランク3位が確定、2012年ロータス以来になる戦績だ。
■不運を耐えしのぎようやく報われたダニエル・リカルド
☆☆☆ マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
怒りのMAX度は100%、でもぎりぎり抑えたフェルスタッペン。ちょっと前なら“場外乱闘”になっていたのは間違いない。44周目に周回遅れのエステバン・オコン(フォース・インディア)と接触プレー、若いふたりの自信と過信がはじけた(ここはカート場ではない、グランプリなのだ)。個人的には、1歳年下のフェルスタッペンの方が大人の対応をすべきだったはと思う。
☆☆☆☆ ダニエル・リカルド(レッドブル)
前戦メキシコGPでまたリタイア、その際に第三者のマーシャルによる善意の消化作業で、パワーユニットのターボが破損。その結果、ターボを交換することになりブラジルGPでも5グリッド降格のペナルティ。リカルドは今回も不運の連鎖に耐えねばならなかった。この2戦ずっと耐えがたきを耐え、ブラジルGPで4位チェッカーを見られたが、鋭いスオーバーテイク技は何も変わってはいなかった。
☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン(メルセデス)
5冠王が成し遂げた“危機管理レース”、ブラジルGPの10勝目はそれに尽きる。鈍いペースだったがタイヤ問題ばかりかパワーユニットのオーバーヒート症状に煩わされ、それをピット側とのコミュニケーションでしのいだレースは秀逸。前にも言ったように速さで2冠、強さで4冠、巧さで5冠、さすがです。
☆☆☆☆☆ シャルル・ルクレール(ザウバー)
国内では深夜未明の予選生中継、雨が舞う予選Q2セッションで彼のラップに目が点になった。カメラには雨は映らなくてもかなり濡れている状況だった。ピットからは「もう辞めろ(無駄だ)」という指示、それを拒絶したのは彼の勇気と自信だ。
するとドライ路面を行くように踏み込み、絶えずスライドするザウバーのマシンをコントロール、グリップ限界に合わせてプッシュ。すばらしいリミット感覚だった。
この時点ではハミルトンやバルテリ・ボッタスよりもセクター3が速い(!)。記録的にはQ2の8番手タイムもこれはウエット状態での“スーパータイム”に値する。
ザウバーに対してフェラーリは本家と同じパワーユニットの設定モードを与えているのかもしれな。しかし、ベッテルと同じそれを使いこなしたのは彼の実力、レースの7位入賞よりもはるかに強いインパクトを感じた予選Q2“未来へのラップ”。あの衝撃を感じたのは2019年に一緒になるベッテルと、5冠王のハミルトンだっただろう。