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綾野ましろが明かす、「GLAMOROUS SKY」への特別な愛「一生大事に歌っていきたい」

2018年11月15日 17:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 11月3日にマイナビBLITZ赤坂にて行われたワンマンライブ『YOUR WORLD』で配信限定リリースしたカバー「GLAMOROUS SKY」を初披露した綾野ましろ。(参考:「綾野ましろ、ボーカリストとして1段上へ 特別な想い語った『YOUR WORLD』を振り返る」)MCで「誰かに理解してほしい、誰かのことをもっと理解したいんだよ。ってもがいていた時期に出会った曲だった」と涙ながらに語り始め、「本当に思いが強すぎてうまくまとまってないかもしれないけど、伝わってくれたら嬉しいです」と訴えていた楽曲への思いを聞くべく、ワンマンライブを終えたばかりの彼女を直撃した。(永堀アツオ)


(関連:綾野ましろ、ボーカリストとして1段上へ 特別な想い語った『YOUR WORLD』を振り返る


■「もう一歩、違うステージに行きたい」
ーー2年連続となるマイナビBLITZ赤坂でのライブを終えた心境から聞かせてください。


綾野ましろ(以下、綾野):終えたばかりですが、もっといけるって思いました。あはははは。


ーー(笑)。「もっといける」が最初の感想ですか!? この4年間を振り返って、「ベストパフォーマンスだった」という声も目立ちましたが。


綾野:ライブ中はいつも、今できること、今持っている自分の力を最大限に出すっていう思いがあるので、一切手は抜いていないんですけど、終わったときに感じたのは……さっきまでライブをやってたなっていう心地よい疲労感と、もう一歩、違うステージに行きたいなっていう気持ちだったんですよね。


ーーボーカリストとしては「1ランク上がったな」という印象を受けたライブでしたよ。


綾野:確かに、夏のライブサーキットからマイナビBLITZ赤坂までの間で、ライブの空間や時間の使い方がゆったりになったというか、自分で把握できるようになった気はしているんですね。その会場の空気を自分のものにするっていう意味では、できた部分もあり、飲まれたなっていう部分もあって。会場にというよりかは、ライブ独特の緊張感なのかな。ワンマンライブでは時間と空間を全部自分で支配していいはずなのに、何かに駆り立てられてしまったり、どのタイミングで次の曲に行こうかなっていうのをちょっとでも考えちゃう時間があったり。ほんとに呼吸ひとつの違いなのかもしれないんですけど、自分の中では8割出来たか、出来ないかくらいだったんですよね。ちょっと悔しいなと思う部分もありました。


ーー新たな試みとして、ライブの中盤で観客にサイリウムを切ってもらうお願いもしてました。


綾野:照明の方が「「幻燈」という曲では、照明で幻想的な世界を作りたいんですけど、アニメソングというジャンルではサイリウムが消えることはまずないじゃないですか」っておっしゃっていって。私もそこで、「確かにそうですね」って気づいたので、「じゃあ、その前のMCでみんなに消してくださいって呼びかけができたらいいですね」というお話をしていました。みなさん、消してくださったので、実現しましたし、暗いからこそ映える画もあって。あの画も照明の方が作ってくださったんですね。私たちの自己満足にはなりますが、そういう景色をみんなと見れたことが良かったなって思います。実は、サイリウムを切るのはあの曲だけで良かったんですけど……。


ーー続く「shinkiro」と「Lotus Pain」もサイリウムはなしでした。


綾野:ライブの波を作りたくて、バラードゾーンにしてたんですけど、結果的に3曲、みなさん聴き入ってくださったので、あれが正解だったと思います。


ーーMCでは、ワンマンライブのタイトル『YOUR WORLD』lについても説明してました。同音異義語だったので、改めて文章にしておきたいと思うんですが。


綾野:そうですね。普段はSNSでの発信が主なので、言葉ではなかなかコミュニケーションが取れてるようで取れてないというか。その中で、やっぱり私はライブという場所で、みんなが思ってる今日のテンションや温度を感じたいし、みんなにも私の熱意を感じてもらいたい。ライブサーキットも含めて、お互いに思い合うことから居場所ができていくんだなって感じたので、『YOUR WORLD』というタイトルには、私たちそれぞれの“想像”を行動に表すことによって、新しい世界を“創造”していくっていう意味を込めていたんですね。バンドメンバーにも、リハーサルの時から「想像すれば創造できるんだから!」って言いながらやってて。その思いは伝わったんじゃないかなと思いますね。お客さん、みんなの表情がすごくカッコよかったし、やってやるぞっていう感じがすごく出てたから。


ーーそして、「GLAMOROUS SKY」の初披露もありました。


綾野:それこそ、私にとっては、「想像すれば創造できる」を体現したような曲になってて。自分の理想や夢が全部詰まった、憧れの曲だったんですね。最初に『NANA―ナナ―』という漫画に出会って、アニメも見ていて。私は北海道出身ですけど、ナナも雪が降る港町から上京して、バンド活動をしていく。ミュージシャンへの道を辿っていくストーリーに惹かれたし、そこには私が憧れた世界があって。いつか、この漫画の中の世界のような人になれたらいいなっていう思いも抱いてました。そして、映画化が決まって、中島美嘉さんがナナを演じ、この曲を歌われて、ベストマッチングだなって感じました。当時、もしも自分が歌うとしたらっていうことをずっと想像していたんです。


ーー想像してたことが現実の世界になったんですね。


綾野:ありがたいことに。言い続けていたら叶うこともあるんだなって。歌い終わったあと、MC中、泣かないようにこらえながら、思いを伝えました。でも、多分、泣いてましたね。


ーー涙が出てましたね。当時のどんな想いが蘇りましたか? 「心がザクザクしてた」と言ってましたが。


綾野:その言葉しか出てこなかったんですよね。シンガーとしてデビューできている未来を想像するだけだった時の自分は、何かのせいにして、いつも怒っていて。そういう、反骨精神の塊みたいな時期に、この作品を手にしました。部屋で読みながら、人生はこういう風に紆余曲折あるだろうけど、ブレずに好きなことを好きって貫いていたら、きっと仲間になってくれる人はいるだろうし、自分の思いも伝わっていくような道筋が描けるんじゃないかなっていうことを漠然と思ってました。感情の波が激しかった多感な時期に出会った楽曲だったんですよね。「GLAMOROUS SKY」を聴きながら泣いている日もあれば、何かに怒ってる日もあったり、すごく楽しくなっちゃって、スキップしてる日もありました。不思議なパワーを秘めた楽曲だなって思います。


■「今までと違うアプローチの歌い方ができた」
ーーまだ札幌に出る前ですよね。


綾野:そうですね。地元に住んでた時に、テレビの音楽番組で中島美嘉さんが歌われているのを見て。漫画の中のキャラクターがそのまま出てきたことに、ファンとしては、「それです、待ってました!」という気持ちがあったし、その隣で作曲者のHYDE(L’Arc~en~Ciel)さんがギターを弾かれていて、作詞は大好きな原作者の矢沢あいさん。私にとっては、好きなものがいっぱい詰まりすぎて、「なにこれ! どうしたらいいかわからない!?」みたいな状況でした。


ーー(笑)。そんな思い入れの強い曲をカバーすることになった経緯は?


綾野:自分が次にどんな曲をカバーしたいかなと考えた時に、まずカバーするなら絶対に好きな曲がいいっていう思いがあって。その上で、アニメが好きなファンの人も絶対に聴いたことがあって、なおかつ、たくさんの人が知ってる曲に挑戦したいっていう気持ちがありました。いろいろ条件を挙げていったら、もう、これしかなかった。だから、すごく大変だと思うけど、やってみようって話になって、決まった時はすごく喜びました。「やったー! 嬉しい。いつも聴いて、口ずさんでいた曲だし、こんな大好きな曲をカバーできるなんて」って思ったんですけど、時間が経つにつれて、プレッシャーというか、不安に思う時もありましたね。すごく完成度が高い楽曲なので、どうやってオリジナリティを出していけばいいかなって考えた時に、私のルーツを辿ったり、デビューしてから今までの私の歌声を改めて聴き直したりとかして。周りの支えてくださっている方々とも相談しながら、どうすれば私らしくなるかっていうことを考えていきました。


ーーデビューシングルの表題曲「ideal white」の作曲と編曲を手がけたCarlos K.さんがアレンジしてますよね。


綾野:Carlos K.さんはHYDEさんの楽曲制作にも関わりがあって、交友関係もあるという話を聞いていました。私にとっては、スタートの曲を編曲と作曲してくださった方なので、そこも勝手に運命的なことを感じてましたね。快く引き受けてくださったし、アレンジのやり取りも今までにはないくらい綿密にやらせていただけたので、すごく楽しかったです。


ーーどんなリクエストをしました?


綾野:たくさん鳴ってるシンセではなく、バンドサウンドっていうところにこだわって、生音で再現しやすいアレンジにできたらいいなと。テンポも原曲より少しだけ上げていて、キーも半音上げたので、爽やかさや疾走感が出たと思います。ハモリも自分でやっていて、番最後のサビのあとには、主メロとは違うハモリを入れています。そこは中島美嘉さんの「GLAMOROUS SKY」とは違うアプローチになってますね。


ーー歌い方もこれまでにないラフさが出てました。


綾野:今までアニメのオープニングの曲が多かったので、全編力強さが必要でした。でも、今回はAメロもガッと入りすぎないようにしています。気だるさというか、髪をかき上げながら歌ってるようなイメージでクリエイトしていて。あと、私ならではの高音ですね。特に、〈眠れないよ!〉って叫ぶところなどは、高音を綺麗に出しつつ、荒々しさをミックスして作っています。度々出てくるファルセットは力強く出せるように気をつけました。最初のデモテープと完成品を聞くと、全然違うんです。なんども歌いながら構築していったと言いますか。ここのフレーズはこういう風に歌いたいなというのを作っていくのが苦しくもありましたが、できた時には幸せを感じました。そこはひとつ、ステップアップできたかなと思いますね。今までと違うアプローチの歌い方ができたことも、すごくありがたいことです。


ーー中島美嘉さんは黒のライダースや真っ赤なジャケットを着て歌ってましたが、ましろさんは真っ白でしたね。


綾野:今回、「GLAMOROUS SKY」を歌わせていただくにあたって、気分を一新したいなと思いまして。10月22日に4周年を迎えて……。4ってあんまりいい意味で捉えられないことが少なくないんですけど、私は4が大好きなんですよね。4月が誕生日ですし、オリンピックも4年に1回っていうサイクルです。私は4に意味合いを感じていて、4年経ってから初めてのライブということで、衣装も真っ白にしたいなと思いました。なるべくカラフルなものは排除して、靴も真っ白にして。1周回って初心に返ってる感じですね。0に戻ったというよりかは、いろいろ経験した上での0になったんじゃないかなと思います。


ーーなるほど。ライブはましろさんとファンの合言葉「どばじゅーが」で締めていました。


綾野:めっちゃいい言葉だなと思って。元々は、地元のラジオ局で好きな四字熟語を聞かれた時に、グーグルで「前向きになれる言葉 四字熟語」って調べて。当時、「頑張れ」って言葉が好きじゃなかったんですよね。ささくれてたので(笑)。頑張ってる人に頑張れっていうのも嫌だし。よくわからないのに頑張れって言われるのも好きじゃなかった。だから、頑張れに変わる、もっと寄り添った言葉はないのかって探した時に、“駑馬十駕”って出てきて。馬がいっぱい入ってるし、字面が可愛いなと思って意味を調べたら、「努力は報われるんだよ」っていう意味があったので、これにしましょうって。私はいつも、その場のインスピレーションでやってしまうことが多いので、コツコツできる人が羨ましいなっていう意味もあって、その言葉が教訓というか、合言葉になってますね。みんなで「どばじゅーが」っていってライブを終える。なんだろ、この人たちっていう集団になってますけど。


ーー(笑)。5年目に入りましたが、今後はどう考えてますか?


綾野:いろんな人と仲良くしたいです。


ーーあはははは。どういうことですか。


綾野:私、歌しか必要ないって思ってたんですよ。歌っていればいい、歌が上手であればいいって思ってたんけど、もっとライブを楽しくやりたいし、みんなにも楽しんでもらいたい。そう考えると、ライブを制作してきたこの2年で、自分だけじゃ何もできないことがわかったし、ライブ制作や演出のことを教えてくれる方がすごく増えた1年だったんですね。照明とか音響とか演出とか美術とか。そういう意味での仲間を増やしたいなと思って。その上で、コンセプト立てたライブをたくさんやりたいとか、演出に凝ったライブができるように準備していきたいと思っています。それに、「GLAMOROUS SKY」という、国民的でありつつ、世界でも通用する楽曲を公式でカバーさせていただいているので、この曲を日本はもちろん、世界にも届けていきたいし、一生大事に歌っていきたいなと思ってますね。あと個人としては、楽しく、人付き合いをしたいと思ってます。私、好きの幅が狭いらしくて。好きになったらとことんいくんですけど、いきすぎて周りが見えなくなるというか、他に興味が持てなくなっちゃったりするので。前だけじゃなく、後ろ見て、右見て、左見て、もう1回、右見てっていう、コミュニケーションをとりながら渡っていきたいですね、横断歩道を(笑)。


(取材・文=永堀アツオ)