11月9日、BMWは元CART王者で両脚を切断する事故後にハンドサイクル競技のパラリンピック金メダリストとなったアレックス・ザナルディが、フランス南部のミラマ・サーキットで行われたテストでBMW M8 GTEをドライブし、同テストを成功裏に終えたと明らかにした。
3日間の日程で行われたこのテストは、2019年1月26~27日に開催されるIMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップ開幕戦デイトナ24時間レースに、BMWチームRLLから参戦するザナルディのために設けられたもの。初めてBMW M8 GTEを走らせたレジェンドは期間中、生憎の天候に見舞われたものの、合計700kmを走破している。
ミラマに持ち込まれたM8 GTEには、今年8月にザナルディがDTMドイツツーリングカー選手権にゲスト参戦した際にBMW M4 DTMで用いられた専用システムが備えられ、テストでは同システムがGTEマシンでもうまく機能するかどうかが評価された。
義足を使わずにレーシングカーを走らせることを可能としたこのシステムは、ステアリングにアクセルとパドルシフトを設け、ブレーキはシート右側にハンドレバーによって操作するもの。レバーにはブレーキング時にギアを落とすシフトダウンボタンも設置されている。BMW Mモータースポーツでは今回のテストで得られたデータを基にシステムをGTEマシン用にさらに最適化していくという。
「今回のテストでは大きな進歩を遂げられたと思う」とザナルディ。
「ミラマは簡単なコースではない。そこに雨が降れば対応するのは難しくなる。とてもタフなコンディションだったよ」
「そのようななかで(新しい)クルマを知ることは困難だったが、ドライビング中に何をする必要があるのかをみつけることができたし、クルマに備わるさまざまな電子制御を知ることできた。とても生産的なテストになったと言えるだろう」
ザナルディは2018年にデビューした新型マシンについて「M8 GTEは本当に美しいクルマだ」と称賛すると、「そんなマシンをトラック上でこんなにもたくさんドライブできたのはまさに特権だよね」と語った。
■ザナルディ、ドライバー交代時は「3秒以内にクルマから飛び出すんだ」
BMW M6 GT3、BMW M4 DTMに続き初のGTEマシンで公式戦に挑むザナルディは、デイトナでは他のドライバーと交代しながら24時間レースを戦うことになる。
そこで今回のテストでは、BMWワークスドライバーのジェシー・クローンとともに実車を使ってドライバー交代の練習を行なったという。
「(僕が関わるドライバー交代では)通常のドライバーの入れ替わりと同時にステアリングホイールを交換する必要があることに注意しなければならないんだ」とザナルディ。
「僕たちはこれらの動作を一貫して20秒未満で達成でき、そのうちの何回かは15秒で作業を終えられたよ」
「ハーネスを外してからステアリングを外し、それを(車外で待機する)誰かに渡して、クルマから飛び出すんだ。ここまでを3秒以内に行う」
「それからジェシー(・クローン)がコクピットに入るまで待ち、彼が乗り込んだらクルマによじ登りながら脚をフレームに引っ掛けてジェシーの無線コードとハーネスの固定をサポートする。そして、別のステアリングを渡してから(ドライバーを保護するためのサイド)ネットを閉じてクルマから離れるんだ」
「この一連の動きは本当に印象的で、まるでダンスのようにも見えるかもね。僕たちは今後、ドライバーの交代を完璧にすることに取り組んでいくつもりだ」
なお、今回のテストにはFIA内に新たに設立された“FIA身体障害者・アクセシビリティ委員会”のナタリー・マクグローイン会長が訪れ、ザナルディとBMW Mモータースポーツとともに障害を持つドライバーのレース参戦機会についての会談が行われている。