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ドリカム、BUMP、あいみょん、絢香、SHE’S……映画/ドラマ主題歌から生まれた新たな表現

2018年11月13日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 DREAMS COME TRUEの「あなたとトゥラッタッタ♪」(NHK連続テレビ小説『まんぷく』主題歌)、BUMP OF CHICKENの「話がしたいよ」(映画『億男』主題歌)など、話題のタイアップ曲を含む5作品を紹介! ドラマ、映画の世界観、ストーリー性と重なることで生まれる、各アーティストの新たな表現を堪能してほしい。


(関連:ドリカムが毎朝届ける“ワクワク感” NHK連続テレビ小説『まんぷく』と主題歌の関係性


 52thシングル『AGAIN』以来、約4年8カ月ぶりとなるDREAMS COME TRUEのCDシングル『あなたとトゥラッタッタ♪/THE WAY I DREAM』は、魅力的なタイアップソング2曲による両A面。NHK連続テレビ小説『まんぷく』の主題歌「あなたとトゥラッタッタ♪」は、飛び跳ねるようなマーチのリズム、ミュージカルのような華やかな構成、ナチュラルに気分を上げてくれるメロディがひとつになったミディアムチューン。“何があってもすべて受け止め、あなたと進んでいきたい”という思いが込められた歌からも前向きなエナジーが伝わる。そして「THE WAY I DREAM」(MTG×DREAMS COME TRUE コラボレーションソング)は、“心を強く持って、夢に向かって生きていく”という決意を高らかに響かせるナンバー。中村正人の手によるトラック、吉田美和が紡ぎ出したメロディが力強く融合したパワーソングだ。2019年のデビュー30周年のキックオフにふさわしい、前向きな姿勢と心地よいワクワクを同時に感じられるシングルだと思う。


 4年ぶりの出演となった『ミュージックステーション』(10月19日放送回)で披露されたBUMP OF CHICKEN「話がしたいよ」は佐藤健と高橋一生が初共演している映画『億男』の主題歌。アコギ、ピアノ、ストリングスを軸にした有機的なサウンドとともに“あなたと話がしたい”という人間の根源的な感情を込めたボーカルがまっすぐに突き刺さる。「シリウス」「Spica」はTVアニメ『重神機パンドーラ』(TOKYO MXほか)の主題歌として制作された楽曲。オープニング主題歌の「シリウス」は、80年代~00年代のギターロックのエッセンスを織り交ぜたアッパーチューン。そしてエンディング主題歌の「Spica」は、打ち込みのトラックと生々しいバンドサウンドを融合させたミディアムナンバー。BUMP OF CHICKENのさらなる音楽的な広がりと、映画、アニメとの親和性の高さを両立させた大充実のトリプルA面シングルだ。


 「君はロックを聴かない」「マリーゴールド」などのヒットにより、テン年代後半のシーンを象徴する存在となったあいみょんのニューシングル表題曲「今夜このまま」は、新垣結衣、松田龍平のW主演で話題を集めているドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ系)主題歌。〈乱されたい 会いたい/いつかの誰かに〉という切実なフレーズを含んだこの曲は、“自分を抑え、他者の目を気にして生活していた2人が、本音をぶつけ合いながら関係を築いていく”というドラマのストーリーとリンクしながら、現代を生きるすべての人の心を揺さぶる楽曲として成立している。個人的な思いから出発し、普遍的な力を持った楽曲につなげるソングラインティングはまさに彼女の真骨頂だ。独り言のような、しかし、リスナーに向かって語りかけてくるような雰囲気を持ったボーカルも魅力的。


 約3年半ぶりのオリジナルアルバム『30 y/o』は、30代になった絢香が“時間”“変化”をコンセプトに制作した作品。三浦大知とのセッションによる「ハートアップ」、KREVAとのコラボ曲「Glory」などを収めた本作は、彼女自身の外に向かおうとする意志とそのなかで得た新たな刺激が、サウンド、リリックの両面に強く反映されたアルバムに仕上がっている。なかでも印象的なのは、東野圭吾原作・堤幸彦監督・篠原涼子主演による映画『人魚の眠る家』の主題歌「あいことば」。壮大なスケール感を放つメロディライン、“何があってもあなたを愛し続ける”という強い愛情を響かせる歌詞を軸にしたこのバラードは、絢香の新たな代表曲として浸透しそうだ。塩谷哲によるクラシカルな雰囲気のアレンジも、楽曲の世界観を引き立てている。


 SHE’Sの2018年2作目となるシングル表題曲「The Everglow」は、ドラマ『ルームロンダリング』(TBS系)オープニングテーマ。前作『歓びの陽』に続き、YUKI、Aimerなどの楽曲を手がけてきた百田留衣(agehasprings)のプロデュースによるこの曲は、エレクトロサウンドを押し出した前作から一転、感情豊かなピアノ、クラシカルなストリングス、ドラマチックなメロディを軸にしたSHE’Sの真骨頂と呼ぶべき楽曲に仕上がっている。「The Everglow」(=永遠の輝き)をテーマにした、ノスタルジーと未来への希望がひとつになった歌詞もきわめて魅力的。ピアノエモ、UKギターロックをルーツに持つ彼らの良さがバランスよく詰まった勝負曲だと思う。


■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。