11月11日、ツインリンクもてぎで行われたスーパーGT第8戦。2018年シーズン最終戦となった戦いでドライバーズチャンピオン、チームチャンピオンを獲得したTEAM KUNIMITSUの高橋国光総監督が、山本尚貴とジェンソン・バトンのふたりを称賛した。
「チームの総監督としては、レース結果を見ても、ふたりのドライバーは本当によく走ってくれた、つくづくそう思います」
チャンピオン会見に登壇した高橋総監督はそう切り出した。2018年シーズン、元F1チャンピオンであるバトンが山本のチームメイトとなってRAYBRIG NSX-GTのステアリングを握ることが決まり、開幕前のテストからTEAM KUNIMITSUには日本のみならず、世界から大きな注目が集まった。
この新コンビは第1戦岡山で2位表彰台を獲得する好スタートを切ると、第3戦鈴鹿では予選2番手を獲得し、ここでも2位に入った。そして9月に行われた第6戦SUGOではシーズン初ポールポジションを獲得すると、決勝でもそのまま逃げ切りコンビ結成から6戦目で勝利を手にした。
第7戦オートポリスではピックアップなどにも苦しんだものの5位フィニッシュ。ここまでの7戦中6戦でポイントを獲得する堅実な走りで迎えた最終戦もてぎは、ディフェンディングチャンピオンのKeePer TOM’S LC500と同ポイントのランキングトップ。ほぼ一騎打ちで迎えた最終戦だった。
決勝レースでもこの2台は激しいバトルを展開。前半スティントを担当した山本から、29周終わりにバトンへステアリングが託される。バトンは同時にピットインしたチャンピオン争いを展開するKeePerの平川亮と、最後までテール・トゥ・ノーズの争いを繰り広げた。それはチャンピオンを争うドライバー同士の火花散る真っ向勝負だった。
「ハードなレースだったと思います。今のスーパーGTに参戦している15台は、すごいクルマ、すごいドライバーが携わっている。これは世界一のレースなんじゃないかなと思うんです。それくらい内容の濃いレースでした」
レジェンドドライバーである高橋総監督がこう語るほど、スーパーGTの戦いは厳しさを増しており、ここでチャンピオンの称号を得ることはそれだけ重みのあるものだということだろう。さらに高橋総監督は、ふたりのドライバーが見せた今季の走りを振り返る。
山本は2010年にTEAM KUNIMITSUからスーパーGTデビューを果たし、在籍8年目。今季はGT500クラスのタイトルを手にしただけでなく、日本のトップフォーミュラ、全日本スーパーフォーミュラ選手権でもチャンピオンに輝いた。
国内トップの2カテゴリーでタイトルを手にするのは2004年のリチャード・ライアン以来14年ぶり、日本人ドライバーとしては2003年の本山哲以来、ふたりめという快挙だ。
高橋総監督は当初、山本に子供のような印象を持っていたという。しかし今は「日本一のドライバーで、世界に通用するドライバーではないかと思います」と評する。
「山本くんが初めてこのチームで走ったときは純真で、子供みたいな感じでした。僕もいろいろと教えていましたが、今はもう何も言うことがない。逆に僕が勉強になることがあるくらいです」
一方、今季からスーパーGTフル参戦を果たしたバトンについてもその実力には舌を巻いたという。最初はF1チャンピオンであるバトンが日本のスーパーGTにしっかりと携わってくれるのか懐疑的だったという高橋総監督。バトンのGT参戦を聞いて「『ホントかよ』と思っていました」と語る。
「日本のGTレースを子どものお遊びだと思うんじゃないか。簡単に言えば下に見るんじゃないかと思っていました。しかし、いざ最初にレースを戦った時に(先行していたイメージが)ひっくり返ったというか。こんなに真面目で慎重に走るドライバーなのかと、素晴らしいと思いました。バトンに対する信頼感も感じましたし、すごいドライバーだなと思いました」
「バトンは真面目にスーパーGTのハンドルを握ってくれた。その(集大成としてチャンピオンという)結果が8戦目に出たんだと思います。やはり、スーパースターだなと思いましたね」
「タイトルを手にするのは、ひさびさ。30年ぶりくらいになるんじゃないかな(チームとしては初。高橋国光個人としては1989年の全日本耐久選手権/全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権以来)。本当に感謝ですね。関係者、エンジニア、現場のスタッフ、スポンサー、すべての人々に感謝しています」
新しい陣営を敷いて1年目でタイトルを手にした高橋総監督。パルクフェルメではバトンと山本、ふたりのドライバーに肩を抱かれ、満面の笑みを浮かべて栄冠を手にしたよろこびをかみしめた。