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とうとう殺人描写が描かれた『ドロ刑』 一線を画す中村倫也が、重要な役割を果たす?

2018年11月11日 19:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 13係に所属する刑事の因縁の相手との対峙か、新米刑事の斑目(中島健人)が犯罪に手を染める者と交流を持つか。日本テレビ系列土曜ドラマ『ドロ刑 -警視庁捜査三課-』の物語のパターンはこの2つに分類でき、これまでのエピソードは第1話の煙鴉(遠藤憲一)との出会いを含めれば、ちょうど交互に展開してきたということになる。しかし11月10日に放送された第5話は、その両方のパターンを併せ持った形となっただけでなく、各キャラクターの方向性も安定しており、これまでのエピソードでもっとも理想的な形になったのではないだろうか。


 殺人などの凶悪事件を追う刑事部の花形である一課から、窃盗犯専門の三課に飛ばされてきた皇子山(中村倫也)が、一向に13係に馴染もうとしないことに困りあぐねた鯨岡(稲森いずみ)は、斑目をまんまとおだてて皇子山の調査をさせることに。そんな中、煙鴉の身辺調査に躍起になっていた皇子山は、煙鴉を尾行している途中で老人が殺されているのを発見してしまうのだ。


 今回のエピソードのクライマックスで、酔い潰れた斑目に皇子山が明かす煙鴉との因縁。間の抜けた13係の面々と一線を画す皇子山の存在は、このドラマのサスペンス的な要素、つまりいまだにミステリアスな雰囲気に包まれた煙鴉という存在を解き明かす重要な役割を果たすというわけだ。これまで刑事ドラマでありながらも殺人描写が一切なかった本作で、とうとう描かれた殺人描写とともに、はやくも第5話にしてドラマ全体のストーリーが大きな動きを見せたと考えてもいいだろう。


 一方で、斑目が所轄刑事から受けた接待によって空き巣の常習犯“白昼の蝙蝠”こと東村洋介(三遊亭好楽)をターゲットに定めた13係だったが、東村の足が悪いことが発覚し、ガセネタをつかまされたことに気が付く。東村のヤサを張り込んでいた部屋の撤収をさせられることになった斑目は、そこで東村のある行動に疑問を抱く。そして、ひょんなことから東村と仲良くなり、家に入り浸るようになる。


 部屋に仏壇がないのに何かに手を合わせていることに疑問を抱いたり、前に刑務所に入った時の月のままめくられていないカレンダーに気が付いたりと、斑目の刑事としての勘が着実に養われているのが見受けられる中で、「何かにおうんですよね」と語る斑目に煙鴉が言う「だったらそれを信じろ」の言葉。その言葉にしたがって東村を追い続けた斑目は、東村が殺人事件現場に空き巣に入っていることにたどり着く。


 盗みを働く東村と対峙した時の斑目の切ない表情に、取調室でのやり取りと、お手製のカレンダーをプレゼントする年齢を超えた友情の描写。ふと、第3話で勝手田(丸山智己)から刑事の基礎を叩き込まれた斑目が、バーで煙鴉にぼやいているシーンでの会話が思い出される。相手を察することが取り調べで黙秘する犯人の心を開くと言われ、斑目は罪人を何故察してやらないといけないのかと疑問を投げかける。


 煙鴉にしろ第3話での金庫破りの青年にしろ、今回の東村にしろ、刑事らしからぬ見た目の斑目はそんな疑問を持ちながらも、犯罪者の心を開きその中に踏み込んでいくことができる能力の持ち主であることは言うまでもない。その才能を活かし、そしてプロの犯罪者との対峙を通して着実に培われている刑事の勘を確固たるものにしていくことこそが、斑目が本物の“ドロ刑”になるということなのだろう。(久保田和馬)