2018年シーズン最終戦、タイトル決定戦となるスーパーGT第8戦が11月11日に栃木県のツインリンクもてぎで行われ、GT500クラスはポールポジションからスタートしたARTA NSX-GTがトップチェカーを受けて今季2勝目をマーク。3位に入ったRAYBRIG NSX-GTの山本尚貴/ジェンソン・バトン組が見事にチャンピオンに輝いた。
現地は金曜こそまとまった降雨があったものの日曜は快晴。午前のサーキット周辺には例年以上に多くのファンが車列を成すこととなった。ツインリンクもてぎによると今回の決勝日の入場者数は3万7000人、2016年に2戦を開催した際の3万9000人に迫る入場者数とのことで、1戦の開催としてはこの10年のスーパーGTもてぎ戦でもっとも観客数の多いレースとなった。
GT500のタイトル候補は数字上は4台、なかでもホンダNSX-GT勢はシーズン中盤から続く予選での驚速ぶりをこのもてぎでも発揮し、ポールポジションを獲得し逆転王座を期すランキング4位のARTA NSX-GTを筆頭に、2番手RAYBRIG NSX-GT、3番手のEpson Modulo NSX-GTとワン・ツー・スリーで上位グリッドを独占。5番グリッドのKEIHIN NSX-GTは6番グリッドのKeePer TOM'S LC500の前を奪い、決勝に向け万全の体制を整えた。
栃木県警の先導によるパレードラップ、フォーメーションラップを終えてスタートした隊列からまずはARTA伊沢拓也が飛び出し、後方では6番グリッドのKeePerがKEIHINをかわして5番手に浮上。38号車ZENT CERUMO LC500の背後につけレクサス艦隊を形成する。
すると、1号車にかわされていた17号車KEIHINのボンネットが浮き上がった状態でそのままピットレーンへ。処置を施し、すぐにコースへと復帰するもタイトル争いが繰り広げられる先頭集団からは大きく離れた最後尾へと回ることに。
5周目、GT300の周回遅れに遭遇し始めたトップのNSX-GT勢に対し、36号車au TOM'S LC500は11番手にまでポジションアップ。続く7周目にはMOTUL AUTECH GT-Rをかわしトップ10圏内までカムバックするなど、トラフィックの中で中嶋一貴が懸命の挽回を試みる。
序盤は1分40秒台で推移したラップタイムが1分42秒、1分43秒台へと落ち始めたところ、20周を目前にしてトップをいくARTAが真っ先に動き、19周目を終えピットへと飛び込むとモニター上で35秒フラットの制止時間で野尻智紀にチェンジ。同じ周回でMOTUL GT-R、DENSO KOBELCO SARD LC500、カルソニック IMPUL GT-Rもピットレーンへと続いていく。
さらに21周目終わりで64号車のEpson、38号車ZENTが同時にピットへと向かい、山本尚貴、ニック・キャシディはまだ粘りを見せ6秒6のギャップで引っ張り続けると、山本は1分41秒台までラップタイムを戻すなど最後のプッシュを見せる。
20周時点で路面温度は30度とスタート時点から横ばいで変わらない状況下、22周目にたすきを受けた36号車auの関口は、10番手ながら1分40秒フラットの自己ベストタイムを刻んで追走。最後まで諦めない姿勢を貫く。
■最終ラップまで続いたRAYBRIGとKeePerの直接タイトル争い
そしてコース上で粘りを見せていたトップ2台が29周目に同時ピットを敢行し、100号車が制止時間37秒5でジェンソン・バトンへ、1号車が制止時間36秒7で平川亮へとチェンジする中、コース上では2番手を争っていたEpsonをS字で仕留めたZENT石浦宏明の38号車が松浦孝亮の前へ。
すると100号車が石浦の背後、1号車の平川はWedsSport ADVAN LC500の背後8番手から前方のレクサス勢隊列をオーバーテイクしていき、前を追う展開に。ここから元F1チャンピオンのバトンがZENT石浦をすぐさまロックオンすると、33周目からテール・トゥ・ノーズのバトルを展開。右へ左へとマシンを降り、石浦を揺さぶりにかかる。
一方、36周目までにそのレクサス勢の先頭に立ち5番手まで浮上してきた平川は、前を行く松浦のEpsonにピタリとつけると、37周目の5コーナーでマシンを接触させながらインを差し、そのまま1分40~41秒台のタイムを連発し猛然と100号車追撃体制へ。ホンダ陣営としては、100号車バトンの後ろで防御態勢を守りたかったが、平川がその包囲網をすぐに突破。40周突入時点でKeePer平川は前のRAYBRIGバトンに4秒8、42周目には2秒8にまでギャップを縮める。
一方、40周を過ぎた頃からZENT石浦追走の際に見せた勢いに陰りが出始めたRAYBRIGバトンは1分42秒台後半のラップタイムでややペースダウン。。残り10周、44周目突入時点で2台の差は1秒6にまで詰まり、46周目にはついに背後へ。
KeePer平川vsRAYBRIGバトンの直接対決となった王座争いはその後、ギャップ1秒前後の小康状態が続き、50周目にはトラフィックも絡みその差は0.277秒まで接近。さらに首位を行く野尻のARTAに石浦のZENTが0.683に迫り、優勝争いとタイトル争いの行方が混沌とした状況と化す。
残るは3周。優勝争い、チャンピオン争いの構図となったNSX-GT対レクサスLC500の両バトルはARTA、RAYBRIGのNSX-GTが徳俵で踏ん張り、8号車ARTA NSX-GTがポール・トゥ・ウインで優勝。KeePer平川とRAYBRIGバトンの直接対決も、最後の最後はKeePer平川のタイヤが力尽きたか、コーナーでクリップに付けないシーンが目立ち、バトンがそれを見てかラストスパート。バトンのスティント中盤のペースダウンは、このラストスパートに向けたタイヤ温存だったようで、ファイナルラップではRAYBRIGバトンがKeePer平川をどんどん引き離して行った。
そしてRAYBRIGバトンはKeePer平川の前でチェッカー。山本尚貴/ジェンソン・バトン組のRAYBRIG NSX-GTが見事に3位表彰台を確保し、元F1王者はフルシーズンのデビューイヤーでスーパーGTのタイトル獲得の偉業を成し遂げ、ホンダ陣営としても2010年以来の8年ぶりの戴冠。山本尚貴は2004年リチャード・ライアン以来、スーパーフォーミュラと合わせて同一年のダブルタイトル獲得と、記録ずくめのフィニッシュとなった。