F1第20戦ブラジルGPのインテルラゴスはコースの全長が4.309kmしかなく、カレンダーの中ではモナコに次いで2番目に短い。その一方でコーナーが15もあるため、予選でクリアラップが取るのが難しいサーキットだ。
そんな中、予選前になって雨雲が近づいて来た。ここでチームは、予選の戦略を変更した。
「1セットのタイヤで1アタックするはずだったけど、コンディションの変化に対応しようと2アタックにしたんだ」(ブレンドン・ハートレー)
トロロッソ・ホンダのほかにも、1セットのタイヤで2アタックしたチームがなかったわけではないが、その多くは予選Q1を確実に突破するだけの速さがあるトップチーム。2アタックにすればチャンスが増えるが、燃料を多く搭載するため、重くなるというハンディを背負う。
ピエール・ガスリーは最後の2セット目のタイヤでの1回目のアタックで18番手から12番手までポジションを上げたが、ハートレーは15位のエステバン・オコンに0.016秒届かず、Q1敗退となった。
「ターン8でフロントを大きくロックアップさせてしまった。それで0.15秒ぐらい失った。でも、クルマは金曜日よりもバランスが良くなっているから、日曜日のレースが楽しみだ」(ハートレー)
予選Q2に入ると、トロロッソ・ホンダは再び1セット1アタックに戦略を変更した。トップ10を狙うためには、余計な燃料を搭載する余裕はないからだ。
さらに多くのドライバーが雲行きが怪しくなっていたため、早めにコースインしようと、Q2が開始する前からピットレーン出口に並んでいたが、その様子を見たトロロッソ・ホンダはガスリーがガレージから出る瞬間に急きょ止め、Q2が開始してピットレーン出口に並んでいたマシンがいなくなってからガスリーをコースインさせるという臨機応変な戦いを演じた。
田辺豊治F1テクニカルディレクターによれば、「ピットレーン出口で待っている間にタイヤが冷えるのを避けるため」だった。その作戦が功を奏し、ガスリーは1回目のアタックで1分8秒616をマークして、予選Q3進出を決めた。11番手のケビン・マグヌッセン(ハース)とのタイム差は0.043秒差だった。
■ピエール・ガスリーの2回目のアタックはタイムが伸びず
Q3では1回目のアタックは中古のタイヤを履き、2回目の新品タイヤにすべてを賭けた。しかし、ガスリーがマークした1分9秒029は、Q3の1回目のタイムだけでなく、Q2の自己ベストに届かない1分9秒387で10位に終わった。
「セクター1を通過した時点ですでにコンマ1秒、ユーズドでマークした1回目のタイムより遅かったので、『もう、ダメだ』と思いました」(田辺TD)
ガスリーにその理由を尋ねると「最後のアタックに向けて、フロントウイングを立てすぎて、オーバーステアになってしまった」と言う。
ただ、2回目のアタックでタイムを更新できたのは、ルイス・ハミルトン(メルセデス)とマーカス・エリクソン(ザウバー)のふたりだけという事実を考慮すると、トロロッソ・ホンダが施したフロントウイングのフラップ調整はミスだったとは言い切れない。
いずれにしても、2戦ぶりのスペック3での予選で、3戦ぶりにQ3進出を決めたトロロッソ・ホンダ。地元の天気予報では午後に雨が降る可能性がある。田辺TDはレースに向けてこう意気込みを語った。
「レースでは何が起きるかわかりません。雨が降ってきたときに、足をすくわれないようにしっかりと準備して戦いたいと思います」