2018年11月11日 10:12 弁護士ドットコム
厚生労働省が10月30日に発表した「過労死等防止対策白書」。過労死が多く発生していると指摘された教職員は、特別に調査する重点業種となっており、公務災害の分析やアンケート結果などがまとめられている。
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公務上の災害と認定された中高教員30人のうち、9割にあたる27人が「部活動顧問」が負荷業務と答えており、負担の軽減が不可欠であることが数字にも表れた。
白書によると、分析が行われたのは2010~15年に公務上の災害と認定した教職員の63件(脳・心臓疾患35件、精神疾患28件)。ここから教員に職種を限定して、負荷業務の一覧が集計された。
公務災害の認定理由とされた主な負荷業務(重複回答あり)の内訳を見ると、脳・心臓疾患事案の中高教員計19人のうち18人が「部活動顧問」をあげ、「担任等」が16人と続いた。
また、精神疾患事案の中高教員計11人のうち9人が「部活動顧問」と「係・担当等」をあげた。
この結果について、部活動問題に詳しい学習院大文学部教育学科の長沼豊教授は「部活顧問が中高で一番負担要因になっているのは明らかで、予想通りの結果だ」と話す。
一方で、教員や生徒の負担を減らすため、国も動き始めている。スポーツ庁は3月、週2日以上の休養日を設け、活動時間は平日2時間、休日は3時間程度とする運動部に関するガイドライン(指針)を公表。文化庁も11月1日、文化部について運動部とほぼ同じ内容でのガイドライン案をまとめ、年内にも正式決定する予定だ。
ただ、ガイドラインには法的拘束力がない。現状について長沼教授は「都道府県の教育委員会によってはまだ方針を策定しておらず、各市町村教委に示していないところもある。文化部のガイドラインもまだ揃っていないため、本格的に実行されるのは来年度以降ではないか」とみる。
また、運動部のガイドラインでは、学校のホームページに部活動の活動方針や活動計画を掲載することが盛り込まれている。長沼教授は「誰でも見られる以上、学校側にはプレッシャーがある。市民の目もあり、徐々に規制も進んでいくのではないか」と期待する。
(弁護士ドットコムニュース)