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『ポケモンGO』は“優秀なヘルスケアアプリ”と“面白いゲーム”を両立できるか? 新機能「いつでも冒険モード」から考える

2018年11月11日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

 Nianticは、「リアル・ワールド・プラットフォーム」の新機能として「いつでも冒険モード」をリリース。スマートフォン向けアプリ『Pokémon GO』で初めて実装することを発表した。


(関連:『Pokémon GO』は何を実現しようとするのか? ナイアンティック日本法人代表・村井説人が語る、リアルワールドゲームの本質


 「いつでも冒険モード」は、スマートフォンをポケットにいれたままで、歩数などをゲーム内に記録できる機能。現在はトレーナーレベル35以上のプレイヤーのみが使用可能だ。Nianticによると、『Pokémon GO』のトレーナー(プレイヤー)は2017年に比べて、2018年に入ってから53%も長い距離を歩いており、全世界2000人を対象にした調査によると、70%が『Pokémon GO』が普段から歩くモチベーションとなっていると感じており、64%がゲームがより多く外に出るきっかけになったと回答。47%がゲームを通して身体的な活動レベルが上昇したと感じており、同じくらいの割合で「『Pokémon GO』が他の人々とつながるきっかけになった」と回答していることから、今回のような機能に投資し、人々を外に連れ出し、よりアクティブな生活を送れるきっかけを作ろうということらしい。


 「いつでも冒険モード」は実際にどんなものかというと、「アプリを起動していなくても、朝の通勤、散歩、ランチ時の外出、夜のジョギングなどで移動した距離を『Pokémon GO』に反映させることができ、その距離に応じて相棒のポケモンから「アメ」を受け取ったり、「タマゴ」をかえすこともできるようになるほか、週ごとに歩いた距離で報酬が受け取れるようになるという。さらに、iOS向けHealthKit、およびAndroid向けGoogle Fitとバックグラウンドで同期しており、スマートフォンの機種が対応していれれば、週ごとの歩いた距離や消費したカロリー、歩数を『Pokémon GO』内でも確認が可能になる。


 この発表通りに受け取ると、『ポケモンGO』をプレイすることは健康面でプラスになる、つまりヘルスケアアプリとして優秀であるということだが、実際のところはどうなのだろうか。アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)のPMCにアーカイブされている論文で、2017年に発表された『Influence of Pokémon Go on physical activity levels of university players: a cross-sectional study』では、ゲームを始めて1週間目のプレーヤーでは、1日あたりの平均歩数は955歩増加し、5週目までは平均値よりも長い距離を歩いているが、6週目になると元に戻ってしまった、という結果が報告されている。しかし、別の研究(『Influence of Pokémon Go on Physical Activity: Study and Implications』)では「30日以上は、歩行量が25%以上改善されている傾向がみられる」としている。どちらが正解かはっきりと断言することはできないが、少なくとも2016~2017年段階では賛否両論が巻き起こっていたことは間違いないようだ。


 そこにNianticの出した「2018年に入ってから53%も長い距離を歩いている」というデータを加えると、ユーザー数自体は急増とまではいえないアプリになったものの、残っているユーザーが積極的に長い距離を歩くようになったこと、もしくはアクティブなユーザーが増えたことが仮説として挙げられる。実際のユーザー数の増減は不明なため、ゲームのアップデート履歴からその変遷をみていくと、2月のEXレイド仕様変更で多くのユーザーが参加可能になったこと、2018年前半でレックウザ・カイオウガ・ラティアス・ラティオスが、後半でレジアイス・レジスチル・レジロックといった伝説レイドが実装されたこと、2017年から追加されていたホウエンのポケモンが出揃ったこと、リサーチの実装でミュウをゲットできるようになったこと、謎のポケモン、メルタンが登場し話題になったこと、シンオウ地方ポケモンが実装となったことなど、様々な要素が歩行距離やアクティブユーザーの増加に繋がっていたのかもしれない。


 ここ日本ではどちらかといえば10代未満~10代前半と40代より上のユーザーが多いという印象がある『ポケモンGO』。筆者もプレイしていて感じたことではあるが、リリース初期はなかなかポケモンが追加されず、イベントもそこまで定期的に行われていなかったため、スマートフォンゲームの早いスピード感に慣れている若いユーザー・アーリーアダプターが離脱してしまったのかもしれない。


 しかし、ここ最近はサービス側からユーザーをアクティブにさせ続けるイベントやアップデートが定期的に行われるなど、運営の工夫も随所にみられる。あとは離脱したユーザーを戻すことができれば、より爆発的な人気を誇るアプリへと進化することができるだろう。そういった意味でも、『ポケモンGO』をある種の“放置ゲー”へと変える「いつでも冒険モード」の実装は、かつてのトレーナーたちが気軽に戻ってくるための一助になりそうだ。


(中村拓海)