実質的にRAYBRIG NSX-GTとKeePer TOM'S LC500の“一騎打ち”で迎えたスーパーGT第8戦ツインリンクもてぎの予選。タイトルを争う2台はRAYBRIGが2番手、KeePerは6番手からレースに臨むことになったが、それぞれ今回の予選をどのように捉えているのか。Q2を担当したドライバーのふたり、山本尚貴、平川亮に聞いた。
11月10日(土)の午前に行われた公式練習の走り出しはウエットコンディションで、どのチームもドライタイヤで多くの周回数を走れずに予選を迎えることになったが、公式練習ではRAYBRIGが2番手、KeePerが5番手と、持ち込みのセットアップはお互い、それなりの手応えを感じる結果となった。
実際、RAYBRIGは持ち込みのセットアップを大きく変えることなく午後の公式予選を迎え、Q1を担当したジェンソン・バトンがトップタイムをマークして“満点回答”をみせる。一方のKeePerはニック・キャシディが7番手と、8番手までがQ2に進出できるQ1ではやや危なげな通過となった。
そしてRAYBRIGは山本尚貴にステアリングを託し、KeePerは平川亮がQ2を担当。結果的に山本は2番手、平川は6番手となった。
「小さなミスが少しあって完璧ではないのですが、それでも納得のいくアタックだったと思います」と予選を振り返る平川。それでも、トップからワン・ツー・スリーを独占したホンダNSX-GT勢の速さには素直に舌を巻いた。
「たとえアタックの小さなミスがなかったとしても、トップのタイムは見えなかったですね。ある程度予想はしていましたけど、NSXがもてぎでここまで速いとは思いませんでした。事前テストの時はストレートがあまり速くなくて、『なにかウエイトを積んで走っているのかな』と思っていましたけど、その通りでしたね。本番の予選になったらすごく速い」と、テストからの伏線があったことを振り返る平川。
特に平川が驚かされたのが、Q1からQ2にかけてのNSX-GT勢のタイムアップの幅だ。KeePerはQ1のキャシディからQ2の平川へとコンマ6秒のタイムアップを果たしているが、RAYBRIGのQ1バトンからQ2山本ではコンマ6秒、ポールポジションを獲得したARTA NSX-GTは伊沢拓也から野尻智紀に代わり、コンマ9秒ものタイムアップを果たしている。
もちろん、Q1とQ2で異なるタイヤを装着していたり、Q1からQ2にかけてセットアップを詰めたり、路面コンディションが良くなったりなどさまざまな要因があるが、いずれにしてもレクサス陣営よりもホンダ陣営の方が伸び率が高いのは事実だ。
「NSXのQ2はQ1からまたポンと速くなりましたし、僕らもタイムを上げたんですけど、NSXはそれ以上にタイムを上げてきました。そこは僕たちにとっては厳しい予選になりましたね」と平川は語った。
■予選2番手ながらも笑顔がないRAYBRIG山本尚貴
一方のRAYBRIG山本は、「JB(ジェンソン・バトン)のQ1のタイム(1分36秒344)を見たら、Q2は1分35秒台の戦いになることはみえていた」と、ある程度予想どおりの展開になったことを示唆した。それでも予選2番手、そしてライバルであるKeePerよりも前のグリッドを奪いながらも、山本の表情に笑顔はない。
「やっぱり悔しいです。アタック自体がどうこうよりも、2番手では嬉しくないですよね。今回のアタックで何か大きな失敗をしたわけではないですし、マシンのフィーリングも『もっとこうなってくれたら』というのはあるんですけど、これが結果。Q2までの持っていき方に対して、やっぱり8号車(ARTA)には何かが足りていなかったのだと思います。そこは純粋に負けを認めざるを得ないと思いますし、ドライバーとしては“悔しさしかない”ですね」と山本。
それでも、ライバルのKeePerは6番手。タイトル獲得の可能性は大きくなったはずだ。山本は2018年シーズンの最終戦を、いったいどのような気持ちで迎えるのか。
「明日は勝つことだけ考えています。ドライバーとして今日は悔しさしかないですし、ホンダNSX-GTとブリヂストンタイヤの組み合わせで、同じ道具を使っている相手に負けたということは事実。受け入れないといけないですけど……悔しいです」と山本。
「もちろん、今回はチャンピオンを獲るためのレースをしないといけない。ただ、あまりそこに比重を置きすぎてそこばかり見てしまうと、本来見なければいけないところを見失ってしまう。ドライバーとして本当に志を高くもって、勝つことだけを考えていきたい。その中でチャンピオンのことを考えて、頭は冷静な戦い方をしなければいけないことを踏まえてレースをしたいなと思います」
山本は表情をいっさい緩めることなく予選を振り返ったが、一方のライバルであるKeePerの平川もまた、表情を変えずに明日のレースに向けての抱負を語った。
「レースペースは実際走ってみないと分からないですね。朝は雨上がりだったのでロングランができていません。僕らがどういうタイヤの“落ち方”になるのか、彼ら(RAYBRIG)のタイヤがどうなるのか分からないです。僕は後半担当なので様子を見ながら考えることになりますが、ニック(キャシディ)はスタートからどんどん前に出ないといけないと思います」と平川。
「タイヤの選択に関しても、オートポリスほどの差はNSXとはないと思いますが、レースでは今回の予選Q2ほどの差はないだろうと思っています。もうタイトルだけを追っても何もできないので、あまり意識せず、今できること、最善のことをやっていきたい。今日としては僕たちのなかではいいリズムで進められて、合格点には達していると思うので、明日もいつもどおり戦って、結果が付いてくればいいなと思います」
予選上位にホンダNSX-GTが固まり、その後にレクサスLC500が続き、第7戦オートポリスと同じようなシチュエーションで迎えるスーパーGT第8戦もてぎの決勝レース。チャンピオンの栄冠を勝ち取るには、タイヤのピックアップ、メーカー内&チーム内のサポート、タイヤ戦略、ピットストップ時間などなど、レースではまだまだ大きく展開が変わりそうな要素が潜んでいる。