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乃木坂46 秋元真夏×松村沙友理×井上小百合が語る、個々が持つグループ外の居場所と帰るべき場所

2018年11月10日 19:32  リアルサウンド

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 乃木坂46が11月14日に22ndシングル『帰り道は遠回りしたくなる』をリリースする。草創期からグループにとって大きな役割を果たしてきた西野七瀬と若月佑美が参加するラストシングルであり、同時に3期生の選抜入り、フロントメンバー入りも目立つ今作は、乃木坂46の歩んできた足跡と未来への継承との双方を強く感じさせるものになっている。


参考:


 結成から7年が経過し、22枚のシングルを積み重ねてきた乃木坂46とは何を築いてきたグループなのか、そしてどのようにこの先のグループ像、アイドル像を見せてゆくのだろうか。それぞれに得意分野を開拓しながら乃木坂46を支える1期生の秋元真夏、井上小百合、松村沙友理の3人に掘り下げてもらった。(香月孝史)


■「なーちゃんはアイドルが天職だった」(井上)


――表題曲「帰り道は遠回りしたくなる」を受け取ったときの印象を聞かせてください。


松村沙友理(以下、松村):人によってギャップがある曲だなと思いました。私はこの曲を初めて聴いたとき、めっちゃ共感できるって思ったんですよ。「そう、遠回りしたくなるよね」って。でも、そのとき一緒にいたいくちゃん(生田絵梨花)が、「え? 私、絶対遠回りしないんだけど」って(笑)。真夏も一緒にいたよね?


秋元真夏(以下、秋元):いたいた、言ってた。「私すぐ帰る」って(笑)。


松村:「全然共感できない」って(笑)。だから人によってギャップがあるというか、いろんな捉え方ができる曲なんだなって。それから、この曲を聴いてるとやっぱり、「なーちゃん(西野七瀬)がんばれ」っていう気持ちになるじゃないですか。でもなーちゃん本人は、「私はこれを楽しんでやってるんで」っていう感じがあって。私たちは寂しさを感じてやってるけれど、なーちゃんはすごく楽しさを感じてくれてる。そういう意味でも、ギャップがある曲だなと思います。


秋元:冬の曲でもあるので、もうちょっと落ち着いた、ゆったりしたバラードになるのかなと思ってたんですけど、結構明るめの曲調ですよね。でも歌詞は切なかったりするので、その差も面白いなと思います。卒業に限らず、別の道に行こうとしている人や迷っている人が元気をもらえるような、意志の強さが出ている歌詞ですし、外に出てみたらそこから先の道の方が輝いているかもしれないということが描かれてもいるので、元気がないときに聴きたい曲だなと思いました。


井上小百合(以下、井上):第一印象は、「エモいな」って思いました。いつしか今いるメンバーも全員、アイドルをやめる日が来る。だから、〈好きだった… この場所…〉という詞が乃木坂のことを歌っているように聴こえて。全員がここにいる時間ってもう二度とないから、毎回一瞬一瞬がすごく大事で。たぶん、10年後20年後にこの曲を聞いたら、「好きだったな」って自分も思うんだろうなと考えたら、今回の卒業メンバーの曲でもあるし、自分たちの曲でもあるなって思います。


――レコーディングで印象に残ったことは?


井上:曲の冒頭の〈好きだった… この場所…〉というフレーズだけ、一番最後に録ったんです。それ以外は曲の流れ通りにレコーディングしたんですけど、最初のこのフレーズだけ残しておいて、みんなで最後にそこだけ録って。だから、すごく気持ちがつまっているワンフレーズなんです。ただ卒業を見送るというのでなく、一人一人の思いがちゃんと込められた曲になるんじゃないかなと思ったりしています。あと今回の曲はハモリもあるんですけど、このハモりももう二度とないのかもとか考えてしまうので、それもあって「エモいな」と。


――「帰り道は遠回りしたくなる」では西野七瀬さんがセンターを務めます。これまでグループの顔として立ち振る舞うことの多かった西野さんの姿をどのように見ていましたか?


秋元:常にセンターやフロントという大事なポジションを務めてきてくれて、その中で自分がこのグループを背負っているという意識や、内に秘めた強さみたいなものがすごくある人だなと思います。そんなにガツガツした感じではなくて控えめだけれど、心の中には芯の強さがあって、じっくり話してみると、「実はこうしたい」「センターとしてこういう風になったらいいなって思っている」という意識を持っていたりする。周りから見たときに言われるような、儚いイメージや守りたくなるイメージというのも持っているんですけど、その内側には強さがある子だなって思います。


井上:世間的には儚いイメージが強かったと思うんですけど、本人的には「自分はそんな儚くない」というようなことを言っていて、けっこう強い人だなと思いながらいつも見ていました。たぶんみんなが思ってるような人ではないんだけれど、でもやっぱりすごく“アイドル”だったなとも思うし。ダンスを間違えてるところもあまり見たことがないし、振りを覚えるのもすごく早いし。アイドルが天職だったのかなって、私は思ってました。


■「「告白の順番」MVは泣かずには見れない」(秋元)


――今回のシングルではユニット曲にも印象的なものが多いですが、松村さんは生田絵梨花さん、白石麻衣さんと3人で「ショパンの嘘つき」という楽曲に参加されています。この曲について聞かせてください。


松村:「この3人で歌うんだったらどんなのがいい?」と意見を聞いてもらえた中で、「まいやん(白石)もいるしまっすぐ王道な感じの曲もかっこいいよね」とかいいながらも、やっぱりどうしてもひねりがほしくなってしまう3人なので。私はちょっと性格がひねくれてるからなのか、面白さがほしいなって言ってて。でも、まいやんといくちゃんがこの曲をこういうふうにやったらかっこいいなとかいろいろ考えましたね。ダンスはこんな感じがいいですみたいなこともちょっと伝えたりはしていて、初披露が楽しみです。


――秋元さんが参加されている「告白の順番」は、桜井玲香さん、中田花奈さん、そして若月佑美さんとの“女子校カルテット”による楽曲です。


秋元:“女子校カルテット”としては3曲目になるんですけど、これまでの楽曲を通じて、仲のいい女の子たちの間柄や大人になったときの話を描いたものが多いんです。今回は恋愛ものなんですけど、“女子校カルテット”の仲だったらいつかこういう会話をするんだろうな、みたいなことが描かれています。実際に4人でよくご飯を食べたりもするんですけど、10年後20年後にもしかしたら子どもを連れてそんな話をしたり、乃木坂にいた頃の話をするだろうなって間柄なので、そんな関係性も出ている曲だと思います。MVでは若月がみんなとの映像を振り返るように見ているシーンがあるんですけど、今回は若月の卒業ということもあるので、泣かずには見れないような、うるっとくるものになっています。


――その若月さんは乃木坂46の中でも早いうちから、舞台演劇などで外部の作品に出演されて、道を開拓してきたメンバーですね。


井上:乃木坂のメンバーが外に出て仕事をするときって、個人としてだけではなくいつも乃木坂の看板を背負って立っているんです。若月も外に出るときは必ず、乃木坂が認められるために、「乃木坂ってこんなすごい役者さんがいたんだ」って思われるように振る舞っていて、その姿をみていてすごいなあと思っていました。一緒に舞台に立ったときにも一番に他の役者さんとコミュニケーションとったりしていました。演劇とアイドルってこれまでそんな結びついてこなかったと思うんですけど、若月は第一線でそこを結びつける役割をやってくれた人だったのかなと思ってます。


■「乃木坂46はちょっとだけアイドルの概念を覆した」(井上)


――アイドルはそうやっていろんなジャンルの仕事に可能性を見いだせる立場でもありますよね。乃木坂46は現在、その性質を有効に活用しながら大きくなっていると思います。このアイドルという立場をどのように考えていますか?


秋元:私は性格的にちょっと飽き性なところがあって、芸能界なら毎日違うことができるのかなと想像して入ったというのがあるんですけど、アイドルだと特にいろんなことができるんだなと、乃木坂に入ってから感じました。バラエティ番組に出たり、お芝居する子がいたり、モデルさんをやっている子がいたり、いろんなことをやらせてもらって毎日新鮮な気持ちで取り組めています。でも、だからこそ全部に対して中途半端になりがちなのがアイドルの弱みでもあるのかなとは思っていて。ただ、乃木坂は部門に分かれているというか、お芝居ならお芝居をすごい頑張ってる子がいたり、モデルさんを長期間一生懸命やってる子がいたり。それぞれに得意分野があって、でもアイドルとして集まったときはアイドル活動をみんなでやる。個々人にもう一個、乃木坂の他に別の場所があるみたいな状況が私は楽しいし、新しいなと思いますね。


――その「アイドルの弱み」という点ですが、以前リアルサウンドで乃木坂46運営委員会委員長の今野義雄さんにインタビューした際、今野さんはいろんな場所で「しょせんアイドルでしょ?」と舐めて見られるけれど、そこを見返してきてほしいと言われていました。


井上:私は最初、役者をやりたかったんですけどオーディションに受からなくて、その後乃木坂46に入ったんです。今は乃木坂にいるからお芝居の仕事が来てるって思ってるんですけど、たしかにアイドルだからこそ舐められることも多かったりして。「アイドルでしょ、お芝居どうせ下手なんでしょ」みたいなスタンスで最初は見られるんですよ。それがすごい悔しくて。そのときに、「アイドルがどう思われてるかは知らないけど、乃木坂46を馬鹿にしないでほしい」とすごく思っちゃって。だから、乃木坂の評判を上げたいと思いながら、毎回いろいろな現場に行ってるんです。そのうちに、関わった方々が「乃木坂はすごいグループだ、本物だね」って言ってくれるようになって、共演者の間の口コミで乃木坂が広まってきているので、それが嬉しいですね。それぞれがいろいろな現場で関わる人たちと一緒に、ちゃんと本物を作り上げてくるからこそ、グループにもまたいろんなものを持ち帰ってこられるし、関わった人たちも、「乃木坂とまた何かやりたいね」って言ってくれる。それをどんどんつなげていけるようにしたいなとずっと思っています。まだまだ乃木坂がどんなグループなのか知らない人たちもいるので、開拓していきたいです。


――モデルの分野でいえば、乃木坂46はアイドルがファッション雑誌に載ることのイメージを更新したグループなのかなとも思いますが、雑誌に出始めた頃と現在とで感覚に違いはありますか?


松村:全然変わらないです。『CanCam』の専属になって毎号出られるようになったかもしれないけれど、ページ数をたくさんもらえるわけではない。専属モデルだから当たり前に出られるわけではないんだなっていうのは変わらないので。でも今の話でいうと、みんな自分が乃木坂にいるから仕事が来てるんだって思っちゃうけど、私はそれだけではない気がするんですよね。


――というと?


松村:たとえば私は演技が上手いわけじゃないから乃木坂にいるからといって舞台の話がたくさんくるわけじゃないけど、さゆにゃん(井上)にはめっちゃくる。それは乃木坂だからじゃなくて、その中にいる子たちがすごいから仕事がきてる。今はアイドルがいろんな仕事をするのが普通で、舞台にも出るしモデルもやるし、なんでも屋さんってイメージがあるけど、たぶん以前はそうじゃなかったと思うんですよ。やっぱりライブがメインで、ファンの人と触れ合って笑顔を配って、というのがアイドルだったと思うんです。今みたいにアイドル=なんでも屋さんというイメージをもっていただけてるのは、私は悪いことだとは思っていなくて。私は乃木坂が大好きなので、グループに対する過大評価がすぎるのかもしれないけど、アイドル=なんでも屋さんって思われるようになったのは乃木坂のおかげなのかなって思ったりするんですよね。うーん、上手く言えないんですけど……、乃木坂のメンバーはすごいんだよ! っていう話です(笑)。


井上:初期の頃に、今野さんが「乃木坂からモデルを10人は出したい」って言ってたんですよ。私はそれを聞いて正直、「いや、無理だろ」って思ってたんです(笑)。でも今それが実現してるんで、なんか本当にまんまとはめられたんだなって思っちゃうくらいに(笑)、ちょっとアイドルの概念を覆したというか、それぞれの部門に強い人たちが集められた、その集団が乃木坂46という気がします。


――その乃木坂46がこの先どのように継承されていくのかも楽しみです。3期生も活躍の場が増えてきましたが、グループ全体はどんな状況にありますか?


秋元:グループを離れたところから客観的に見てみたときに、層が厚くなったというか、誰に何を任せても大丈夫な力がついてきてるんじゃないかなって思います。3期生にもすでにモデルとして活動している子や舞台に出演している子もいて、グループの中でもフロントに立つ子もいます。いろいろ経験して責任感を持って活動している姿が増えてきたので、心配をすることが少なくなってきたなと、長年グループにいる者としては感じます(笑)。先輩たちのいろんな活動も見てきているし、自分たちが活動していく中で、私はこれが好きだな、向いてるなっていうものがだんだん見えてくると思うので、それを強化していったら、3期生、2期生、1期生みんながどこかに自分の強みを見つけて、グループとしてはもちろんですけど、乃木坂46っていう場所以外にも居場所を見つけられるようになる気がしています。(香月孝史)