ドライバーズランキングで両者67ポイントと同点。実質、1号車KeePer TOM’S LC500と100号車RAYBRIG NSX-GTの一騎打ちとなる、スーパーGT第8戦ツインリンクもてぎでのGT500チャンピオン争い。1号車KeePerの平川亮、ニック・キャシディにとっては昨年に続く2年連続のチャンピオンがかかった戦いとなるが、金曜日の搬入日、平川亮はどんな面持ちで週末を迎えようとしているのか。
昨年はスーパーGTで初めてタイトル争いの主役となった平川。2年目の今回も、昨年に引き続いて主役のひとりとなるが、プレッシャーはどのように感じているのだろうか。
「去年のタイトル争いとは違うシチュエーションですね。去年はランキングトップで2位以下とポイント差があって臨んで、争っている相手が結構多かったイメージがあるんですけど、今年はほぼ100号車との争いになる。前に出た方がチャンピオンというシンプルな状況なんですが、2連覇が掛かっていることを考えると、去年よりプレッシャーを感じています」と平川。
1年目よりも2年目の今年の方にプレッシャーを感じているというのは意外だが、平川らしく淡々と今の気持ちを素直に表現する姿は、むしろ昨年以上に冷静に、自分を取り巻く環境や周りの状況が見えているからでもありそうだ。
これまでのシーズンを振り返ると、予選ではホンダNSX-GTが速さを見せて上位グリッドを独占し、レースではレクサス陣営が安定した速さを見せて結果としてホンダと互角、時にそれ以上のレースパフォーマンスを見せるという展開で進んできた。前回のオートポリスでは予選でホンダがトップ3を占めながら、レースではレクサス陣営がトップ4を奪い返し、予選と決勝でホンダとレクサスの勢力図が激変したように、レクサスとしてはやはり、レースの強さが武器になっている。
「今週末はやはりレースがポイントになると思っています。明日の予選はオートポリスもそうでしたけど、予選でNSXが前にいっても、レースでどうなるか。それに今回はタイヤの無交換の可能性があったり、作戦の選択肢がいろいろあると思います。250kmと短いレースなのであまり多くのことはできないと思いますけど、やはりレースできちんと速く走るのがポイントかなと思っています」と平川もレースペースの速さをターゲットに週末の組み立てる方針だ。
では平川自身、2年連続チャンピオン獲得への自信はどの程度もっているのか。
「やってみないと分からないですね。自分たちの実力を全部しっかりと発揮するしかないなと思います。まあ、それでダメなら仕方ない」と話す平川。相変わらずとも言えるマイペースな発言は、むしろ平川の強さのひとつでもある。
その達観したような見方は、KeePerの関谷正徳監督も同様だ。
「今週末は何事もなく順調にいきたいなと思います。(100号車に)勝てるというよりも、100号車の前にいればいいので。彼らが我々よりも速く走るのであれば、それはそれで仕方ない。どうにもできない。いつもとやることは変わりません」と関谷監督。ただ、恐れもある。
「プレッシャーはないけど、“ビビり”はある。クルマが壊れたら終わりだからね。トラブルやアクシデントにはチームのみんながビビッているよ」
トムスとしては、前回のオートポリスでトップau TOM’S LC500と2位KeePerがレース途中で順位が替わり、KeePerが優勝を果たしてRAYBRIGと同ポイントに並んだ。周囲は同じチームでのトップ争いのなかで、チームオーダーが発令されたことを疑うが、チームとしてはauにパワステのトラブルがあったことを主張している。チームオーダーはレギュレーション違反ではないが、ペナルティの対象となる可能性があるが、改めて関谷監督に聞いた。
「人が何を言っても、目的はチャンピオンを獲ること。チームオーダーではないですよ」と、関谷監督は明確にオーダーの噂を否定した。
チームオーダー、そしてメーカーオーダーとGTではさまざまな憶測が入り乱れているが、たくさんの要素を含んでいるのはスーパーGTの魅力のひとつ。そしてレクサス陣営は他メーカーに比べて、メーカー内の団結力が高いことでも知られている。賛否両論があるが、今週末の最終決戦ではオートポリス後のもやもやを吹き飛ばすようなすっきりとしたRAYBRIGとのバトルを見たいのと同様に、メーカー同士の団体戦があっても、それもまたスーパーGTらしい戦いと言えるのではないか。