2018年11月09日 20:32 弁護士ドットコム
外国人技能実習生だった中国人女性が、茨城県の実習先農家を相手取り、未払い賃金の支払いなどを求めた訴訟で、水戸地裁は11月9日、女性の主張を一部認めて、農家に対して計約200万円の支払いを命じる判決を言い渡した。原告側は、セクハラも受けたと主張していたが、こちらについて認められなかった。控訴する方針を示している。
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判決などによると、女性は2013年10月、茨城県の大葉生産農家と雇用契約を結んで、技能実習生として働きはじめた。労働条件は、時給が713円(茨城県の最低賃金・当時)で、平日の労働時間が8時~17時というものだった。
ところが、実際には、大葉を摘み取る作業が終わった17時ごろから、大葉を10枚ごとゴムで束ねる作業をすることになった。この作業について、農家側は「労働ではなく、内職だ」として、1束当たり2円の報酬しか支払っていなかった。
水戸地裁の岡田伸太裁判長は、大葉巻きの作業を「内職」(請負)ではなく、雇用契約にもとづくものだとして、1時間あたり200束(時給換算400円)として、労働時間を算定。未払い賃金など計約200万円を支払うよう命じた。
農家経営者の父親からセクハラを受けていたとして、慰謝料も求めていたが、岡田裁判長は「女性の供述に疑問を差し挟む事情が少なからずある」と判断して、請求を退けた。現在帰国している女性はこの日の判決後、代理人を通じて「残業代の支払いは当然だと思います」「セクハラについてはがっかりです」とコメントした。
今回の訴訟では、この女性から相談を受けて、支援していた監理団体の元職員男性も、不当に解雇されたとして、監理団体を訴えていたが、岡田裁判長は男性の主張をすべて棄却した。男性は代理人を通じて、「納得できません。解雇有効の判決は不当です」とコメントした。
代理人をつとめた指宿昭一弁護士は、判決後の記者会見で、「権利を主張することができない状況におかれているのは、日本中の技能実習生に共通する問題だ」「新しい外国人労働者の受入れ制度については、そういう前提で、議論がすすんでいない。技能実習生制度は廃止して、同じことを繰り返さないようにすべきだ」と話した。
(弁護士ドットコムニュース)