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「セクハラ禁止規定をつくって」 ハラスメント法整備にらみ弁護士ら訴え

2018年11月09日 13:12  弁護士ドットコム

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厚生労働省の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会で、ハラスメント防止対策について議論される中、セクハラ法整備を考える院内集会(主催・メディアで働く女性ネットワーク)が11月6日、東京・永田町の衆議院第1議員会館内で開かれた。


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女性記者や弁護士、大学教授らがどのような形の法整備が望ましいか議論し、集まった170人に「セクハラの禁止規定を求める声を高めることが大事」と呼びかけた。



●紛争解決援助制度の問題点

現在、セクハラ被害者を救済するシステムは主に、民事裁判など司法によるものか、行政による紛争解決援助制度の二種類だ。院内集会では、独立行政法人労働政策研究・研修機構の副主任研究員・内藤忍さんが、この紛争解決援助制度の課題を指摘した。



内藤さんによると、2017年度に都道府県労働局に寄せられたセクハラに関する相談は6808件にのぼった。しかし、同年度の「紛争解決の援助」と「調停」申し立て受理件数はわずか計135件だった。



裁判を起こすには心理的にも経済的にもハードルが高い。それに代わる手段としてあるはずの制度なのに、なぜ利用率が低いのかーー。内藤さんが調査を行ったところ、利用者からは「自分は何も悪いことをしていないのに、どうして譲歩しなければならないのか」「謝罪や反省が欲しかった」といった声が上がったという。



内藤さんはこうした声について、主に行政による救済が「相互の譲り合い」を前提とするもので、男女雇用機会均等法にはセクハラ行為そのものに対する禁止規定がないために「事業主がセクハラ防止措置義務を守っているかどうか」しか判断できないためだと指摘。「禁止規定と迅速に救済が得られるシステムを作ることが必要」と訴えた。



●セクハラ禁止規定「法律に明記して」

ハラスメント問題に詳しい圷由美子弁護士は、育児・介護休業法で「育児をしている状態を理由とする嫌がらせ」がマタハラ防止措置の対象になっていないことを問題視した。



圷弁護士の元には、フルタイム勤務の女性が労働局にマタハラの相談をしたところ「育児休業や時短制度を利用していないため、育介法の対象ではないと言われた」といった相談があったという。



圷弁護士は「担当したマタハラ裁判で『会社の不誠実な対応はいずれも幼年の子を養育していることを原因とするもの』と認められた判決もある。育児そのものを理由とするハラスメントを禁止することが必要」と話した。



国連の国際労働機関(ILO)は今年6月、職場のセクハラを防止するための条約を制定する方針を決めたと報じられている。メディアで働く女性ネットワーク・代表世話人で、元朝日新聞記者の林美子さんは、「セクハラをしてはならないという禁止規定を法律に明記しないと、目の前にあるセクハラは止められない。こうした規定を求める声を高めていくことが大事」と呼びかけた。



(弁護士ドットコムニュース)