本田技研工業とモビリティランドは11月7日、東京・青山のホンダ青山ビルで記者会見を行い、今後の四輪モータースポーツにおける若手ドライバー育成方針、また鈴鹿サーキットで行われている鈴鹿サーキットレーシングスクール(SRS)の新体制を発表した。
鈴鹿サーキットレーシングスクールは、1992年に世界のトップクラスとして通用するライダー・ドライバーの育成を目的として開校したスクール。93年からはカートのSRS-K(カート)が、95年からは四輪のSRS-F(フォーミュラ)が開講し、佐藤琢磨(3期生)をはじめ、現在国内トップカテゴリーで活躍するドライバーたち、そしてライダーたちを輩出してきた。現在もヨーロッパでF1を目指しF2で戦う牧野任祐や福住仁嶺などもSRS出身だ。
これまで開講以降、SRSは日本人初のフルタイムF1ドライバーである中嶋悟校長が25年間校長職を務めてきたが、今回SRS-K、SRS-Fの新体制、さらにSRS-Kの新クラス設立にあわせ、新たな体制が構築された。中嶋校長が勇退し、チームプリンシパルとして琢磨が、そしてヴァイス・プリンシパルとして中野信治という、世界を知るふたりがスクールを率いることになったのだ。
新たに“プリンシパル”という役割に就任した琢磨は、1987年F1日本グランプリで受けた刺激、そして自身がSRSに入校する際のエピソードを語りつつ、何かしらSRSに貢献したいという思いが今まであったというが、「まさか自分がプリンシパルになるとは」と笑顔で語った。
「SRSは僕自身がレーシングドライバーとして第一歩を踏み出した記念すべき“学び舎”であり、特別な思い入れがあります。このたびの大役を仰せつかるにあたり、僕が在籍した当時の中嶋校長より引き継ぐことにも特別な感覚を覚えます」と琢磨。
「現役トップドライバーをはじめ、世界を経験した講師陣が直接指導にあたることで、最新のテクニックやレース事情に即した、世界でも最先端の実戦的なレーシングスクールにできればと考えています」
■「生徒とともに夢に向かいたい」と琢磨
また琢磨がインディカーのシーズンを戦っている間、その“ドライバーとして成長していくため”の思いを伝えるための役割として、「自分が尊敬する存在(琢磨)」であり、琢磨と同じく世界を知る現役ドライバーの中野が、これまでもSRSの講師を努めてきた経験を活かし、ヴァイス・プリンシパルとして携わることになった。
「私自身SRSとの関わりは深く、思い返せば今に至るまで22年ほどになるでしょうか。私が米国やヨーロッパを転戦しているときも、できる限り機会を見つけて講師として鈴鹿に足を運びました。自身がレース活動を行う一方で、SRSの後進に関わることは私のライフワークでもあります」と中野。
「今回この栄誉ある職を拝命致しましたが、実力、人間力を兼ね備えた世界に通用するドライバー育成の一翼を担えれば嬉しい限りです」
今回の体制変更では、2020年からSRS-Kに集中強化する『アドバンスクラス』が設けられ、『ベーシッククラス』での優秀者が進級可能になるという。ハイレベルなレースへの実戦参戦をはじめとした、集中強化プログラムが設けられるという。
これはホンダの山本雅史モータースポーツ部長、そしてモビリティランドの山下晋社長が、海外メーカーの若手育成のスカラシップが強化されるなか、「何かをしなければ」という相談のなかで生まれたものとのこと。
「ドライバーは“人間力”でなければならないと思います。でもそこにいくまで、経験しなければいけないことが多い。僕と信治さん、そしてみんなで協力して、世界で戦える自覚をもったドライバーをサポートいていきたい。僕も生徒と一緒に夢に向かっていくことで、生徒も感じてくれることがあるのでは。ここから何ができるか、僕も楽しみです」と琢磨はこれからの若手育成に、強い意気込みをみせた。