2018年11月07日 10:22 弁護士ドットコム
狂乱の渋谷ハロウィンから約1週間。渋谷区による事前の注意喚起も虚しく、複数の逮捕者が出るなど一部が暴徒化した。そんな中、区に対して「禁止しろ」「中止しろ」「廃止を宣言して」などの苦情が300件以上寄せられているという。
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区が税金をかけて大々的に仮装を呼びかけているわけでもなく、渋谷区広報コミュニケーション課の杉山課長は「センター街やスクランブル交差点であれば、騒いでも許される場所だと思われてしまっている」と頭を抱える。杉山課長に、来年以降のハロウィン対策について話を聞いた。
ーー区に最も多く寄せられた苦情の内容が、ハロウィンの「禁止」「廃止」「中止」を求める声だったそうですね
「苦情は全部でメールが300件ほど、電話が数十件寄せられました。ですが渋谷区はそもそも何も開催しておらず、勝手に渋谷に人が集まってくるという状態にあります。そのため、そもそも中止や禁止するというのは難しいです。
我々は交通規制をすることも逮捕することもできません。警察と連携はしていますが、事前に呼びかけることしかできないのが悩みどころです」
ーー他にはどのような苦情があったのでしょう
「川崎市のように、『渋谷区が管理したイベントやパレードを企画しろ』というものが多くありました。
川崎市は毎年、駅前の大通りを規制し、参加費千円を支払った仮装者が踊り歩くパレードを主催しています。確かにイベントを有料化するというのは、一つの方向性として考えられるところではあります。
ただ、渋谷の場合、センター街に限らず、道玄坂など様々なエリアに人が集まります。非常に広範囲なので、例えば『センター街のここからここまでは有料』と決めたとしても騒ぎが収まるかと言えば難しいでしょう。
有料化をしたところで解決するのかも疑問です。私も31日の夜から街で様子を見ていましたが、数年前に比べて仮装している人の比率が減っていると感じました。むしろ、騒ぎを見に来ている人や、酒を飲んでただ暴れたい人が一定数います」
ーー渋谷区としてはどのようなハロウィン対策をしているのですか
「ハロウィンごみゼロ大作戦と題し、エコステーションを置いたり、109下渋谷駅構内や宮下公園駐輪場内などに着替え場所や仮設トイレを設置したりしています。実行委員会の主催で企業から協賛をいただき、区は共催という形で運営しています。
こうした取り組みは2015年からしていますが、きっかけは鉄道会社と商業施設から『トイレに血のりがべっとり付いている』『便器に缶スプレーが入れられて詰まった』『多目的トイレが着替えで封鎖される』といった困った声が区に寄せられたことでした。
事業者側も場所ができたことで、『ここはダメです』と言うだけではなく『あちらに行ってください』と案内ができるようになったので、とても喜ばれました」
ーー区が主導する形でイベントをするのは難しいのでしょうか
「2年前のハロウィンでは、観光協会主催で代々木公園でイベントを行いました。ただ、公園は閉園時間が決まっており、午後8時にイベントが終わり9時には撤収しました。
イベントは制御できる時間帯と場所があってできるものです。今年のハロウィンは水曜日でしたが、前の週の金曜夜から騒ぎが続きました。夕方に人が集まり出し、終電の時間を超えても早朝まで人が残ります。普段よりも、大宮や熊谷など県外ナンバーの車も多く見かけました。車からは降りず、電飾をつけた車で街をぐるぐる回るんです。車高が異様に低く、ドリフトをする車もいてとても危なかったです。
時期は違いますが、渋谷区では2年前からカウントダウンイベントを行なっています。スクランブル交差点などを交通規制した大がかりなもので、今年は約10万人が集まりました。過去には逮捕者も出ていたカウントダウンですが、イベント化することで企業からの協賛も得て、うまくいっている事例です。ですが、ハロウィンとカウントダウンには大きな違いがあります」
ーーどのような点でしょう
「カウントダウンの場合、人が長時間滞留することがないんです。だいたい22時くらいから人が集まり出しますが、寒いですし、カウントダウンが終わると電車も夜通し動いているので、程なくして人がはけていきます。
一方、ハロウィンは先ほども申し上げたように、人が集まる期間が数日間にわたり、夜通し行われ、さらにエリアが広い。そこで区が管理するイベントを行い続けるというのは非常に難しいと考えています」
ーー条例の制定は検討していますか
「2014年に改正された神奈川県逗子市の条例が、参考になると考えています。逗子市は海水浴場での騒音や酔っ払いに悩まされていましたが、砂浜での飲酒やバーベキュー、拡声装置を使用して音楽を流すことを禁止したところ、平和なビーチが戻ってきているそうです。
『仮装禁止にしろ』という声もありましたが、どこから仮装にするのか線引きも難しいですし、現実的には難しいでしょう。飲酒にしても、条例でどこまで禁止行為を定められるのかはまだ不透明ですが、将来的なアイデアとして対応は加速させていきます。
新しい条例を作らなくても、ごみ捨てを罰則の対象としている『きれいなまち渋谷をみんなでつくる条例』(きれまち条例)が適用できるのではないかという考えもあります。千代田区は2002年、全国で初めて歩きたばこに罰則を設ける条例を制定し、毎年数千件の過料処分を行なっています。では渋谷区ではどうするのか。人件費をかけて委託し、パトロールを強化するのか。実効性をどう高めていくのかも考える必要があります」
(弁護士ドットコムニュース)