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BTS(防弾少年団)、ユニゾン、マイヘア……作品のなかに込められたメッセージを紐解く

2018年11月06日 10:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 世界的スーパーグループへと成長したBTS(防弾少年団)、音楽性の高さ、ライブの凄みによってバンドシーンの中心的な存在となっているUNISON SQUARE GARDENなど、いまもっとも注目すべきアーティストの新作をピックアップ。それぞれの作品のなかに込められたメッセージ、活動に対するスタンスを紐解いてみたい。


(関連:BTS(防弾少年団)はアメリカでどう評価されている? K-POP全体にもたらす影響を考える


 2018年8月にリリースされたアルバム『LOVE YOURSELF 結 ‘Answer’』がアメリカのビルボード・アルバム・チャートで1位を獲得(2018年5月発売の『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』に続き2作連続での1位)。アメリカ、カナダ、ヨーロッパなど16都市を回るワールドツアーを成功させるなど、いまや完全に世界的なスターとなったBTS(防弾少年団)のニューシングル『FAKE LOVE/Airplane pt.2』が到着。「FAKE LOVE」「Airplane pt.2」の日本語バージョンを収めた本作は、トラップ以降のヒップホップ、オルタナR&B、エレクトロなどのトレンドを抑えたトラック、すべてのリリックに豊かなグルーヴを与えるボーカル/ラップなど、言語の壁を超えた活躍を続けるBTS(防弾少年団)のメソッドがたっぷりと込められている。特に哀切な恋愛感情と快楽的なフロウを共存させた「FAKE LOVE」は絶品。彼らが国境を超えられたのは、高度な技術に支えられたプロダクションによるところが大きいと改めて実感させられた。


 TVアニメ『風が強く吹いている』(日本テレビほか)OPテーマとしてオンエア中のUNISON SQUARE GARDENのニューシングル表題曲「Catch up, latency」は、叙情的なメロディを中心に置いた前作「春が来てぼくら」から一転、ギター、ドラム、ベースが生々しく絡み合うアンサンブル、エッジーかつポップな旋律をストレートに描き出したロックチューンに仕上がっている。メジャーデビュー曲「センチメンタルピリオド」(2008年)を思い出すリスナーもいるだろうが、この曲は単なる原点回帰ではなく、バンド以外の音を取り入れて構築したアルバム『MODE MOOD MODE』以降のUNISON SQUARE GARDENの最新モードにつながっているのだと思う。来年の15周年のキックオフとも言える、“これぞ俺たちのユニゾン!”な1曲だ。


 〈僕らの続きはいつだって今日だ〉と高らかに宣言するミディアムチューン「次回予告」(ヒップホップ的なフロウがめちゃ気持ちいいです)、青春という季節が過ぎ去っていく様、そのときに感じる後悔と憂いを描き出したギターロックナンバー「惜春」を含むMy Hair is Badの5曲入りEP『hadaka e.p.』。3rdアルバム『mothers』のヒット、日本武道館2daysの成功、夏フェスでも圧倒的な存在感を発揮するなど、ロックシーンのど真ん中に進み出たマイヘアは、現在のポジションに満足することなく、さらに先へ先へと性急に進み続けている。溢れ出す激情、ほとばしる衝動。それがなくなったらロックバンドはおしまいだと、マイヘアのメンバーは骨の髄までわかっている。


 11月16日に開催される初の日本武道館公演『朗読演奏実験空間 新言語秩序』のために書き下ろされた3曲を収録したamazarashiのニューシングル『リビングデッド』。3曲とも秋田ひろむが“言葉の力”をテーマに書き下ろしたストーリーとリンクした楽曲だが、現在の社会の成り立ち、そのなかで生じる圧力、分断などをどこまでもリアルに反映しながら、どこか寓話的な世界観へと結びつけるソングライティング/サウンドメイクは、amazarashiの創造性のさらなる進化を証明している。個人的にもっとも強いインパクトを感じたのは、3曲目の「独白(検閲済み)」。真の言論の自由、表現の自由を追求した末のギリギリの結実がここにある。あまりにも誠実なamazarashiのスタンス、それ自体に思い切り心を打たれてしまう。


 今年2月のアメリカデビュー、8月にはイギリスの老舗インディーレーベル<Heavenly Recordings>からデビューを果たし、10月には多国籍バンドSuperorganismのワールドツアー13公演に参加するなど、ワールドワイドに展開しているCHAIのキャリア初のシングル『GREAT JOB / ウィンタイム』は、彼女たちのもっともベーシックなテーマである“コンプレックスはアートだ”をさらに推し進めた「GREAT JOB」、ウィンターシーズンの華やかさを描き出すパーティチューン「ウィンタイム」による両A面。現在進行形のインディーロックとリンクしながら、あくまでも自分たちの興味と感性に忠実なバンドサウンドは自由奔放、痛快無比。既存のフォーマットを使わず、本当の意味で自由であることこそが大事なのだと、CHAIの音楽を聴くたびに痛感させられる。


■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。