F1シーズンを転戦していると、いろいろな人との出会いがある。そんな人たちに、「あなたは何しに?」と尋ねる連載企画。今回はフェルナンド・アロンソだ。アロンソといってもマクラーレンのアロンソではなく、FIA定例会見に質問者として現れた人物。その正体とは…?
————————
メキシコGP初日に行われたFIA定例会見。壇上に並ぶトロロッソ・ホンダのフランツ・トスト、ハースのオットマー・サフナウアーら錚々たる面々が、一瞬どよめいてお互い顔を見合わした。質問に立ったジャーナリストが、「フェルナンド・アロンソですが」と自己紹介したからである。
そしてこのフェルナンド・アロンソ氏、翌々日の決勝レース後に行われた、ルイス・ハミルトンのタイトル五冠獲得会見にも登場した。
同じように「フェルナンド・アロンソですが」と名乗ると、「え、マジ?」とハミルトンにはバカ受け。しばらくは笑いが止まらず、「で、きみもレースで走ったりするの?」と逆質問したりして大いに盛り上がったのだった。
これは話を聴かねばなるまいと、メディアセンターで本人を探し出したところ、快く取材に応じてくれた。メキシコ人のF1ジャーナリストで24歳。メキシコシティから車で4時間ほどのサン・ルイス・ポトシという町の出身だという。
取材パスを拝見すると、おお~名前が長い。フェルナンド・アルフォンソ・アロンソ・サリーナス。スペイン系の名前は、ファーストネームとミドルネームに加えて、名字も二つあるのが普通だ。それはメキシコ人の場合も同じ。
彼の場合、アロンソが父方で、サリーナスは母方の名字とのことだった。で、普段は、フェルナンド・アロンソと名乗っているという。
アロンソとは姻戚関係はないと思うが、一応訊いてみる。「残念ながら血のつながりはないと思うよ」と答えつつ、「実は父方の祖先がどんな経緯で、いつ頃スペインからメキシコに渡ってきたのか全然聞いてなくて、スペインのどこ出身かすら知らないんだ」とのことだった。
ちなみにフェルナンドはメキシコでもありふれた名前だが、アロンソは非常に珍しい名字で、今まで親戚以外で同じ名字の人に出会ったことはないそうな。
実はアロンソくん、自動車自体は小さい時から大好きだったが、モータースポーツ自体に特に興味はなかったという。なので同姓同名の偉大な世界チャンピオンの存在も、ずいぶん大きくなってから友人に教えてもらって初めて知ったのだという。
しかしそこからは俄然この世界にのめり込むことになり、2年前のメキシコGPの際には市内のホテルで行われたホンダのイベントの際に、ついに初対面を果たすこともできた。(ドライバーの)フェルナンド・アロンソはニヤッと笑いつつ、ごく普通に接してくれたそうだ。
今回のメキシコGPでは、MOTORLAT.COMという南米を代表するモータースポーツサイトの特派員として取材にやって来た。しかしまだF1だけでは食って行けず、普段は会社員。ジャーナリストはあくまで副業だそうな。
フェルナンド・アロンソという名前を持ったばかりに、F1ジャーナリストの道を歩み始めたアロンソくん。メディア界は日本に限らず高齢化が進んでいるだけに、今後の活躍を期待してますよ。