2018年11月05日 10:22 弁護士ドットコム
デリバリーヘルスの客から計1000万円を脅し取ったとして、名古屋市内の風俗店経営者ら4人が10月中旬、恐喝の疑いで、愛知県警に再逮捕された。この日、別の従業員1人も逮捕された。
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報道によると、この5人は2017年11月、名古屋市内のホテルで、自営業の40代男性に「本番を強要したら1000万円以上請求すると誓約書に書いてあった」「家族にもばれ、お前の立場はなくなる」と因縁をつけて、計1000万円を脅し取った疑いが持たれている。
いわゆるデリヘルのような風俗では、(1)本番行為、(2)盗撮、(3)薬物使用、(4)暴力行為、(5)スカウト行為――などが禁止事項とされている。禁止事項を破ったことがバレたら、店から「罰金」の支払いをもとめられる場合がある。
今回のケースは、1000万円という法外な金額だが、一般的には、100万円程度となっているようだ。実際、禁止事項に反する客も少なくない。弁護士ドットコムにも「高額な示談金をもとめられた」という相談が寄せられている。
はたして、こうした風俗の禁止事項を破った場合、「罰金」を支払わないといけないのだろうか。支払うとしたら、どれくらいの金額が妥当なのだろうか。古川穣史弁護士に聞いた。
「デリヘルをはじめとした風俗店の『罰金』ルールは、違約金の規定であり、『損害賠償額の予定』と考えられます(民法420条3項)。この場合、債務不履行(今回の場合、禁止事項を破ること)をしたときの損害賠償額について証明しなくても、その金額を請求できる規定と考えられています。
客は、風俗店と契約して、サービスを申し込んでいると考えられます。その契約にもとづく違約金と捉えれば、店に支払うことになると思います。もちろん、禁止行為をした場合、接客した女性が被害を受けていれば、罰金とは別に慰謝料を支払う必要が出てくる可能性もあります」
どれくらいの金額が妥当なのだろうか。
「あまりに高額な罰金については、公序良俗に反する(民法90条)として減額されたり、店(事業者)に生じる『平均的な損害』の額を超えた部分の罰金については無効(消費者契約法9条1項)と判断されます。
『平均的な損害』をどのように考えるかというのは難しいですが、その女性が被害を受けて、仕事ができなくなったために発生した損失の金額などがありうるでしょう。そのため、1000万円というような高額な罰金について支払う必要はないと考えられます。
そもそも、禁止事項を破ることも問題だろう。
「禁止事項にあたる行為は、どれも犯罪行為となりえるものや、同意なくおこなった場合には、民事上も違法と考えられるものが多いですから、そもそもやるべきではありません。
最近では、逆に、禁止事項を女性側から持ちかけたうえで、その後、禁止事項を破ったとして、罰金を請求してくる店もあるようですから、風俗を利用する際は注意することをおすすめします」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
古川 穣史(ふるかわ・じょうじ)弁護士
夜11時に電話で相談してきた依頼者を助けるために歌舞伎町に赴いて以来、ぼったくりの案件を数多く手掛ける。東京都を中心にDV、ストーカーや刑事事件の被害者側などの案件を積極的に行う。会計事務所の法律顧問として一般民事事件、企業法務なども扱っている。
事務所名:八木良和法律事務所