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コーディネートはAIに任せる時代? チームラボ開発「メチャカリ」チャットボットの実力に迫る

2018年11月05日 08:42  リアルサウンド

リアルサウンド

 「earth music&ecology」「E hyphen world gallery」などの人気ブランドを抱えるアパレル企業、ストライプインターナショナルの新しいアプローチが話題だ。同社が運営するファッションサブスクリプションサービスである「メチャカリ」は、AIを活用した「パーソナライズスタイリングAIチャットボット」を導入した。


(関連:日本のブランドにも考えてほしい、Instagramとファッションビジネスの親和性


 開発にはチームラボが携わり、チャット形式で自分に似合うコーディネートを提案してくれるそうだ。実際に筆者もアプリを利用してみたところ、意外な盲点や嬉しい発見があった。


 まず、当たり前だが相手はAIなのでチャットを開始する前にそれなりにアプリ内を回遊し、自分の好みのログを残さなくてはならない。筆者はアプリをダウンロードしてすぐにしつこくAIに話しかけ、その度に”該当するコーディネートがありません”と言われてしまった。最初はなぜそうなるのかわからず、全チャットメニューを試してしまった。しかし、レンタル履歴もなく、アプリ内の観覧履歴もないとこのAIは対応してくれないのだ。


 次に、ストライプインターナショナルのブランドで好きなものから何点かアイテムを観覧した。筆者が”本当に欲しい服”に焦点を当ててアプリ内を回遊し、可愛いと思ったコーディネートは積極的に詳細を見るようにした。しばらくしてまたチャット機能を利用し、「好きなスタイルを選んでね」では「デート服」をチョイス。以前はどれをタップしてもおすすめコーディネートが表示されなかったが、今回は10点ほどのアイテムが表示された。


 そこではスカートを中心に、何点かのワンピースが表示されていた。その時に、筆者は無意識にスカートばかり選んでいたことに気がつく。確かに”気になる!”と思えるアイテムではあった。しかし、これなら従来のECサイトとそんなに変わらないのでは、と感じてしまう節もあった。


 しかし、これだけの量のコーディネートを、ブランドをまたいで一覧できるとなると楽しいので、しばらくアプリ内で可愛い服を見てはサイズや在庫を確認するようになる。数時間後、再度チャットを起動し、同じくデート服でおすすめを表示してもらうと、この時以降、アイテムではなくコーディネートで表示されるようになっていた。さらに精度も高まり、筆者の好きなピンク色のアイテムやフレアスカート、ベーシックではなくガーリーなアイテムが増える。さらにトップスも、クルーネックやブラウスからハイネックやニットに変化していた。AIが、筆者の好みに合わせて徐々に提案力を上げてきていることは顕著であった。


 また、チャットメニューから「よく見ているカテゴリからおすすめ」を選択すると「『スカート』をよく見ているナナさんに似合いそうなアイテムを探して見たよ」というテキストと共にスカートや、スカートに見えるシルエットのワイドパンツなどを提案してくれた。確かに筆者はスカートを中心に探していたので提案は的を得ていると感じる。


 今回このAIを使ってみたことで、販売員の必要性についても考えさせられた。筆者はアパレル店員の経験があるが、販売員とコミュニケーションをとって買い物をすることを嫌がるお客様も中にはいる。そういった客層に向けて、チャットでAIが提案してくれるというのは心置きなくショッピングを楽しめるし、コーディネートに不安を抱えることもなくなる。どの客層に向けても快適な環境で服を楽しんでもらうという視点では非常に革新的な開発ではないだろうか。また、メチャカリはレンタルサービスである。服を”返却”することで、自身でクローゼットを整理する手間も省けるのだ。最新のトレンドの服をオンタイムで着ることができ、トレンドから外れたアイテムは自動的に排除されていくようなシステムは効率的にファッションを楽しめるだろうと感じた。


 しかし、販売員の視点から見ると現状のAIの結果では販売員が持つスキルと同等の提案力はないとも感じてしまった。AIにはまだ、”系統”というファッションの概念が掴めていないように見受けられる。あくまで、シルエットや柄、データに基づいた確固たる情報を頼りに提案しているのだ。しかし実際に人が服を着る時には、同じようにフレアロングスカートでもストリートスタイルで着るかガーリーに着るかなど振り幅が広く存在する。そういった少し高度なファッションを提案するには今一歩というところだろう。今のAIが得ているデータが”顧客の好み”であるのならば、今後はその顧客に対して”実際に販売員が勧めたコーディネート”のデータも含めたら精度は高まるのではないだろうか。


(Nana Numoto)