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賀来賢人、役者黄金世代の中で図抜けた存在に  『今日から俺は!!』で見せつけたその実力

2018年11月04日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 伝説のヤンキーギャグ漫画を実写化した『今日から俺は!!』(日本テレビ系)で主人公・三橋貴志を演じる賀来賢人。金髪パーマで画面いっぱいに暴れ回るその様は、クドくもあり、清々しくもあり、なにより魅力的だ。


【写真】賀来賢人


 昨年放送されたドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』(日本テレビ系)で演じた左江内(堤真一)の部下・池杉(通称“ウィケ杉”)や、先日地上波初放送となった映画『斉木楠雄のΨ難』で扮した元ヤン優等生・窪谷須亜蓮など、日本コメディ界のキング・福田雄一作品の常連となった賀来。最近では、個性的なキャラクターを演じている印象が強いが、いわずもがなルックスは正統派イケメンである。


 2007年に俳優デビューを果たすと、2009年には『ごくせん卒業スペシャル’09~ヤンクミ最後の卒業式』(日本テレビ系)で3年D組と敵対する2年D組の主要メンバーに抜擢(同年公開の『ごくせん THE MOVIE』では3年D組へ進級)。2010年にはドラマ『タンブリング』(TBS系)、映画『ソフトボーイ』と立て続けに青春スポ根ものに出演するなど、若手俳優としての王道をたどってきた。むろん、今年公開の映画『ちはやふる -結び-』で魅せたカルタ名人としてのクールかつ深みのある演技も、高く評価されている。


 とはいえ、近年の賀来の軸と言えるのは、やはりコメディ作品になるだろう。転機となったのは、2011年に出演した初舞台『スマートモテリーマン講座』。これについては本人も数々のインタビューで語っており、同作の脚本・演出を手掛けた人こそが福田雄一である。その後、賀来は個性豊かな俳優陣の演技を肌で感じながら、舞台を中心に“自分なりの表現”に磨きをかけていく。笑いに貪欲な監督、共演者がそろえば、自身にも情熱が芽生えるのは必然のこと。そして賀来は、見事にその才能を開花させる。


 賀来の演技で印象的なのは、観る者を惹きつける間と眼力。彼がセリフを発する時、あくまで自然な流れの中で、グッと目を奪われるような独特の間が存在することが多い。そのためか、サブリミナル効果のごとく鑑賞後は脳裏に存在が強く焼き付く。さらに、キメるときには美しい顔と眼力をフル活用し、振り切るときには顔面崩壊レベルで変顔に全力を注ぐ。これは美顔を持つ人にしかなせない秘技で、そのギャップこそが最大の武器にもなる。


 福田は、インタビューで「20代でコメディーといったら、賀来賢人がナンバーワンだというのを見せつけてやったらいいよ」と彼に伝えたことを明かしている(参考:https://mantan-web.jp/article/20181026dog00m200054000c.html)。この会話がなされたのは2年ほど前だというが、少なくとも筆者から見ると、その言葉は現実のものとなっているように思える。


 1989年生まれといえば役者黄金世代で、佐藤健、千葉雄大、岡田将生、溝端淳平とイケメンが大渋滞。さらに一つ下には柳楽優弥、三浦春馬、町田啓太、池松壮亮、林遣都ら、一つ上は(30代ではあるが)、松坂桃李、東出昌大、瀬戸康史、窪田正孝、三浦翔平……と、この3学年は美男子団子状態。そんな中、賀来がコメディ俳優として図抜けた存在であることは間違いない。


 主演ドラマ『今日から俺は!!』で見せる入魂の演技に感じるのは、福田への感謝と覚悟。そして、とことん全力で挑んだ作品に付いてきた高視聴率と高評価。誤解を恐れずに言えば “知る人ぞ知る名俳優”だった賀来が、今作でその実力が全国に解き放たれた。準備万端、エンジン全開。ツッパリの道をひた走る三橋のごとく、賀来はますますスピードを上げ、独自の役者道を突っ走っていくことだろう。


(nakamura omame)