全日本ロードレース選手権最終戦、鈴鹿大会の予選で2分5秒台の壁を破ったのは、YAMAHA FACTORY RACINGの中須賀克行とTeam HRCの高橋巧、このふたりだけだった。高橋巧が2分4秒945をマークした直後に、中須賀が2分4秒571を叩き出す。ファクトリーマシンを走らせるふたりのプライドがぶつかり合った。高橋は「もっとイケると思った」と語った。
中須賀にコンマ3秒届かなかった高橋は「もうちょっとイケるかなと思った」と予選序盤のアタックラップを振り返る。「ちょっとミスがあって、転びそうになっていたんです」。中盤に差しかかり、2度目のアタックに臨んだ際は、日立オートモティブシステムズシケインで他車に引っかかりタイムロス。さらにアタックを続けたが、タイムアップはできなかった。
「最初のアタックと同じスペックの新品タイヤだったんですが、個体差なのか、フィーリングに違和感があったんです。それでも2分5秒0だったので、『もっとイケそうだ』とさらに攻めたんですが、アタックをやめてペースを落としているライダーが多くてどうにもならなかった」
決勝はレース1、レース2とも中須賀の後ろ、2番手からスタートする高橋。気持ちはあくまでも前向きだ。「最終戦になって、ようやくマシンがまとまってきたという手応えを得ています。予選でも『もうちょっとイケる』と思えているのは、余力があるからこそ。決勝ではその余力の分だけペースを上げていきたい」
もちろん最終戦でも、最強のライバルである中須賀を高橋巧は強く意識している。ポールポジション会見で中須賀は「高橋選手は序盤から一気にタイムを上げられるライダー」とコメントしたが、高橋巧は「早く前に出て失敗したことも多かった。後ろにつけた中須賀選手に様子を見られてしまって……。そのあたりの作戦もきっちり考えないといけないと思っています」と冷静だ。
「絶対に勝ちたい」といった大きなことは決して言わない。「レース1が重要。まずはそこでいい流れを作りたいですね」と、あくまでもマイペース。しかし、静かにたぎるものがある。
「ここへきて大きく前進しているのは確か。今年1番の勝負を仕掛けられると思う」と自信を覗かせた。